まえまえから吉村昭さんの『黒船』は、読んでみたいと思っていが、やっとその気になって入手した。
長崎のオランダ通詞だった堀達之助という男の波乱に満ちた一生を描いた作品である。
達之助が二度目の江戸勤務を命じられ異国船渡来に備え浦賀詰めとなっていた嘉永六年(1853年)六月三日浦賀沖に四隻の異国船(アメリカ軍艦)が来航した。
世に言うペリーの黒船の到来である。
達之助は、このとき主席通詞を務めたのである。
達之助の通詞としての人生を通じて幕末の一下級官吏の眼から見た幕末という歴史の細部を知ることが出来て興味深い小説になっている。
吉村昭さんは、本書のあとがきで、達之助の末裔からの手紙からこの小説を書くことになったと記していた。
その末裔が名古屋学院大学教授の堀孝彦氏であり、紹介された北方史料研究者の谷澤尚一氏と会って話を聞き、この小説を書くことにした顛末を記していた。
谷澤尚一氏と堀孝彦氏とが協力して堀達之助の辿った道のりを調べたことを「堀達之助研究ノート」という小冊子として活字化し、その冊子が巻末の参考文献第一として記してある。
吉村さんは、小説のネタは独自の取材などで書き上げることは知られているから、この小説は異例な作品であろう。
が、あとがきの最期に、一人で札幌市、青森市、弘前市におもむいて資料収集と現地踏査をおこなった、とも書いているから、やはり吉村流を貫くことに徹していると思ってしまったのです。
幕末の歴史の書を多少とも読んできた評者も、本書『黒船』で、堀辰之助の歩んできた人生から、また別の視点で幕府崩壊から明治に至る歴史の断片を知ることができた。
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黒船 ハードカバー – 1991/9/1
吉村 昭
(著)
- 本の長さ379ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1991/9/1
- ISBN-104120020428
- ISBN-13978-4120020421
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1991/9/1)
- 発売日 : 1991/9/1
- 言語 : 日本語
- ハードカバー : 379ページ
- ISBN-10 : 4120020428
- ISBN-13 : 978-4120020421
- Amazon 売れ筋ランキング: - 389,123位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2023年7月29日に日本でレビュー済み
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2021年6月26日に日本でレビュー済み
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商品は注文して一週間以内に届きました。読み終えるタイミングだったので良かった‼️吉村昭の作品は本当にその時代、その現場に居る錯覚か?没入してしまいます‼️
2017年9月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
混沌とした幕末の流れを、司馬遼太郎の小説を読んで理解しようとしていたのですが、あれこれ読んでもいまいちよくわからなかった。最近になって、吉村昭氏のもっとドキュメンタリー的な「海の祭礼」「黒船」「生麦事件」を続けて読んで、ようやく時系列がわかってきました。
思うに歴史にフィクションを加えた少し無理な筋立てだと、流れのロジックが乱れて、読むほうではよくわからなくなるのではないだろうか。
今回のこの三冊ほど面白かった本は近年になかった。夜中にも目を覚まして一気に読んでしまった。事実ほど面白いものはないということを痛感しました。(100%ではないと思うが、わかっている事実があるのに、話をおもしろくするためちょっと歴史的事実を変えるというようなことは、吉村氏はしておられないようなので)
ありえない無理なフィクションより、私小説が好まれるのもよく理解できる気がしました。
思うに歴史にフィクションを加えた少し無理な筋立てだと、流れのロジックが乱れて、読むほうではよくわからなくなるのではないだろうか。
今回のこの三冊ほど面白かった本は近年になかった。夜中にも目を覚まして一気に読んでしまった。事実ほど面白いものはないということを痛感しました。(100%ではないと思うが、わかっている事実があるのに、話をおもしろくするためちょっと歴史的事実を変えるというようなことは、吉村氏はしておられないようなので)
ありえない無理なフィクションより、私小説が好まれるのもよく理解できる気がしました。
2015年9月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ペリー来航のおり主席通訳を勤めた堀達之助の数奇な生涯を辿ったおよそ400頁に及ぶ長編小説。この『黒船』に限らず吉村の小説はドキュメンタリー性が強く、全て実話ではないかと思ってしまう。これまでも『漂流』『破船』『三陸海岸大津波』などの吉村作品を読み感銘を受けてきた。従来は資料収集から現地調査など全て自ら行うところ、この作品に限っては堀の末裔から小説執筆を勧められ、資料の提供も受けたという。
元々長崎でオランダ語の通訳をしていた堀が、黒船の来航によって江戸詰めとなる。そして最初のペリーとの交渉を通訳した。しかし英語の出来る下役にその立場を奪われたり、ドイツ商人とのやり取りであらぬ疑いをかけられ投獄される。しかし上役は庇ってくれない。やっと放免され、今度は英和辞書の編纂に尽力し完成をみる。その後函館へ転勤を命じられる。そして函館戦争に巻き込まれる。函館へ来る途中田名部で見初めた美也を娶るが数年で病死、堀は職を辞し故郷の長崎へ帰る。その後老いた堀は大阪に居住する四男のもとへ行き生涯を終える。
現在放送中の大河ドラマ「花燃ゆ」では、幕末から明治にかけての様子を吉田松陰の妹文(ふみ)の目線で描いており、この小説『黒船』と重なる部分が多く、大変興味深く読むことができた。
また堀が函館へ赴任するとき海路で向かうが、その時ここ八戸の鮫浦を経由していることに嬉しい気持ちになった。
そうは言いながらも、妻美也を亡くす場面では、達之助と同様に涙を堪えることができなかった。感動的な物語であった。
元々長崎でオランダ語の通訳をしていた堀が、黒船の来航によって江戸詰めとなる。そして最初のペリーとの交渉を通訳した。しかし英語の出来る下役にその立場を奪われたり、ドイツ商人とのやり取りであらぬ疑いをかけられ投獄される。しかし上役は庇ってくれない。やっと放免され、今度は英和辞書の編纂に尽力し完成をみる。その後函館へ転勤を命じられる。そして函館戦争に巻き込まれる。函館へ来る途中田名部で見初めた美也を娶るが数年で病死、堀は職を辞し故郷の長崎へ帰る。その後老いた堀は大阪に居住する四男のもとへ行き生涯を終える。
現在放送中の大河ドラマ「花燃ゆ」では、幕末から明治にかけての様子を吉田松陰の妹文(ふみ)の目線で描いており、この小説『黒船』と重なる部分が多く、大変興味深く読むことができた。
また堀が函館へ赴任するとき海路で向かうが、その時ここ八戸の鮫浦を経由していることに嬉しい気持ちになった。
そうは言いながらも、妻美也を亡くす場面では、達之助と同様に涙を堪えることができなかった。感動的な物語であった。
2016年1月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
幕末に通詞として活躍した堀達之助の生涯を描いた作品。
吉村昭ファンの小生にとり、このような開国の裏舞台で地味な役割を演じた
有能な人物を紹介してくれたことはありがたい。
吉村の作品には、他に「海の祭礼」で、同時代に同じく通詞として活躍した
森山栄之助を紹介している。
吉村昭ファンの小生にとり、このような開国の裏舞台で地味な役割を演じた
有能な人物を紹介してくれたことはありがたい。
吉村の作品には、他に「海の祭礼」で、同時代に同じく通詞として活躍した
森山栄之助を紹介している。
2019年9月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
他の作品と同様、良かったです。
2019年10月5日に日本でレビュー済み
吉村昭の幕末小説は、時折、詳細な年表か解説書のようになる時があるので、本書も題名から、
そうなるかなと思っていたが、主人公堀達之助の人生の禍福、悲哀が前面に出ていた。
「海の祭礼」では通詞森山は好人物として描かれていたが、本作では、同じ作者でありながら、若干イメージが
違い、見る角度から人の評価は変わることが興味深かった。
開国、日本近代化への大きな扉となったペリー艦隊来航の際、最初に立ち会った通訳と役人が、箱館では、新政府側と
旧幕府側に分かれていたところが印象深い。中島にも上手な身の処し方もあったろうに、最後まで新政府に抵抗し、
その頑固な生き方に男の生き様を感じた。
学校では殆んど習わないが、歴史を未来に役立てるには、幕末から明治の歴史知識がすごく大事だと思う。
吉村昭、もっともっと読まれるべき作家だと思います。本書もオススメです。
そうなるかなと思っていたが、主人公堀達之助の人生の禍福、悲哀が前面に出ていた。
「海の祭礼」では通詞森山は好人物として描かれていたが、本作では、同じ作者でありながら、若干イメージが
違い、見る角度から人の評価は変わることが興味深かった。
開国、日本近代化への大きな扉となったペリー艦隊来航の際、最初に立ち会った通訳と役人が、箱館では、新政府側と
旧幕府側に分かれていたところが印象深い。中島にも上手な身の処し方もあったろうに、最後まで新政府に抵抗し、
その頑固な生き方に男の生き様を感じた。
学校では殆んど習わないが、歴史を未来に役立てるには、幕末から明治の歴史知識がすごく大事だと思う。
吉村昭、もっともっと読まれるべき作家だと思います。本書もオススメです。
2022年9月24日に日本でレビュー済み
何故電子版にしないのか、絶対電子版にするべき