戸梶さんの作品はいつもかなり面白いのだが、今回の作品も同様で息つく暇もなくザァーっとよんじゃいました。
生と死の価値観、その観念がかなり自殺自由法というものによって人々の意識の中で表面化していく、確かに現実はある意味で誰も自殺を禁止なんてことはいっていない、そもそもそういった類のものでもないから、しかし逆に法的に認めてしまうとどうなるか。
これがまた面白い。
この場合生と死は等価値というよりも、奇異だった現実が実際的なものとなったときの、死への大衆の傾倒が見事に描かれている。
僕はこの現象を大衆化と呼んでいいと思う。現在の日本における大部分の出来事、物、価値観さえもがこの大衆化のなかにある。いわば、いい例えではないが流行。
リーズナブルな生命。そして、それを支える(民主主義的)秩序。
リアリティとはまさにこのこと、現実を無視しても表現は残るから。ならば受け入れることが向きあうこと。そんな風に感じました。
なんにせよ、良い作品でした。
ちなみに映画化したらおもしろいだろうなぁ〜なんて思います。
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自殺自由法 単行本 – 2004/8/1
戸梶 圭太
(著)
ある日突然、日本に「自殺自由法」施行された。しかし、日本国民は相変わらずの無関心。次々と公共自殺幇助施設「自逝センター」に向かう人の群れ。人間心理の闇をえぐる衝撃の問題作。
- 本の長さ373ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2004/8/1
- ISBN-104120035581
- ISBN-13978-4120035586
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2004/8/1)
- 発売日 : 2004/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 373ページ
- ISBN-10 : 4120035581
- ISBN-13 : 978-4120035586
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,224,509位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 28,333位日本文学
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年10月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
国が自殺(作中では自逝)を認め、コンビニ感覚で死にに行ける世の中。自己中で浅はかな人として価値の低い激安人間が次々に登場し、自逝を選択または強要される。(一部は自逝出来ずに殺されたり事故死する)
この作品の隠れた恐怖は、囚人や前科持ちや老人等の社会に不要と判断した人をあの手この手で自逝させる政府や自治体にある。自逝の方法すら公開せず完全無痛をうたいながら、そこに追い込むまでの手段はゴミを捨てるように無情だ。
自殺自由法ならぬ社会不要人物廃棄法と私は呼びたい。読めば徹底したお役所仕事に背筋が凍るだろう。
久々に強い印象に残った作品だが、残酷描写がキツかったので星4つです。
この作品の隠れた恐怖は、囚人や前科持ちや老人等の社会に不要と判断した人をあの手この手で自逝させる政府や自治体にある。自逝の方法すら公開せず完全無痛をうたいながら、そこに追い込むまでの手段はゴミを捨てるように無情だ。
自殺自由法ならぬ社会不要人物廃棄法と私は呼びたい。読めば徹底したお役所仕事に背筋が凍るだろう。
久々に強い印象に残った作品だが、残酷描写がキツかったので星4つです。
2015年2月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「嘔吐」とか「グロテスク」といったタイトルの小説があるから
こういうタイトルもありなんだろうな――と、ふと手に取って
軽い気持ちで読み始めた私の眼の中から頭の中へと入り込んで、
ある時は上司が部下の胸ぐらを掴むその怒鳴り声のように、
またある時は銃声の様に、かと思えば音もなく放たれた吹き矢に塗りつけられた毒の様に、
素早く駆け巡り、かつ鈍く鳴り響き続ける文章が詰め込まれている作品でした。
言葉で表現しきれる限りの最上級に乱暴な、過激な表現をふんだんに用いて、です。
こんな小説があっていいのか。
初めて読んだ時は恐怖と戦慄で一杯でした。
締めに「本作脱稿直後筆者は鬱に陥りました」とある通り
私も暫くはこの世の全てが他者からの威圧に満ちているようなモヤモヤした気分から
抜け出せませんでした。
が、それでも最後まで読んでしまいました。
なぜなら私が最も評価したい本作の文章のテンポの良さは、
次を読みたい次を読みたいという気持ちを掻き立たせてくれるものだったからです。
この作品の面白味は
一話完結のエピソードが続くそのテンポの良さで綴られる、普通の小説では絶対に出来ない
悲惨かつ残酷な展開の痛快さを味わう事にあるのだと思います。
それを痛快だと思えれば、という前提ですが。
作中における死者の死因の大半は、自殺ではなく事故や他殺によるものが殆どです。
さらに自殺する人間の動機のうち半分以上は「他者からの強要によるもの」です。
特に後半はそれが顕著です。もはや自殺でもなければ自由でもありません。
ゆえに見る人にとってはある意味肩透かしな内容に感じるかと思います。
主題であるべき自殺自由法という法律の裏にある真実だとか、
それに纏わって出てくるべきであろう社会の暗部や人の命の意味といった核心に触れる描写というものは少ないです。
しかしそんな事は読む側にとっても書いた側にとっても、
ハナから問題には成り得ない事だろうな、と感じました。
余談ですが、私は文庫版と単行本版を両方購入し、
単行本版の方が読みやすい、という感想を抱きました。
この作品、「フォントを大きくして文字を強調させる」という普通の小説ではまず見ない手法を取っているので
ページが大きい方がその迫力が伝わってくると思います。
こういうタイトルもありなんだろうな――と、ふと手に取って
軽い気持ちで読み始めた私の眼の中から頭の中へと入り込んで、
ある時は上司が部下の胸ぐらを掴むその怒鳴り声のように、
またある時は銃声の様に、かと思えば音もなく放たれた吹き矢に塗りつけられた毒の様に、
素早く駆け巡り、かつ鈍く鳴り響き続ける文章が詰め込まれている作品でした。
言葉で表現しきれる限りの最上級に乱暴な、過激な表現をふんだんに用いて、です。
こんな小説があっていいのか。
初めて読んだ時は恐怖と戦慄で一杯でした。
締めに「本作脱稿直後筆者は鬱に陥りました」とある通り
私も暫くはこの世の全てが他者からの威圧に満ちているようなモヤモヤした気分から
抜け出せませんでした。
が、それでも最後まで読んでしまいました。
なぜなら私が最も評価したい本作の文章のテンポの良さは、
次を読みたい次を読みたいという気持ちを掻き立たせてくれるものだったからです。
この作品の面白味は
一話完結のエピソードが続くそのテンポの良さで綴られる、普通の小説では絶対に出来ない
悲惨かつ残酷な展開の痛快さを味わう事にあるのだと思います。
それを痛快だと思えれば、という前提ですが。
作中における死者の死因の大半は、自殺ではなく事故や他殺によるものが殆どです。
さらに自殺する人間の動機のうち半分以上は「他者からの強要によるもの」です。
特に後半はそれが顕著です。もはや自殺でもなければ自由でもありません。
ゆえに見る人にとってはある意味肩透かしな内容に感じるかと思います。
主題であるべき自殺自由法という法律の裏にある真実だとか、
それに纏わって出てくるべきであろう社会の暗部や人の命の意味といった核心に触れる描写というものは少ないです。
しかしそんな事は読む側にとっても書いた側にとっても、
ハナから問題には成り得ない事だろうな、と感じました。
余談ですが、私は文庫版と単行本版を両方購入し、
単行本版の方が読みやすい、という感想を抱きました。
この作品、「フォントを大きくして文字を強調させる」という普通の小説ではまず見ない手法を取っているので
ページが大きい方がその迫力が伝わってくると思います。
2012年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルに惹かれて購入したものの、あまりにも現実離れした内容で残念に思う。
「自殺自由法」などもはや関係なく、ただただ胸糞悪い人間模様の羅列であり、それでいてそのオムニバス的な羅列には何の捻りもなく伏線も大したものがない。
インターネット上に転がる”胸糞の悪いコピペ”と類されるショートストーリーの方がまだ読んでいて面白いといえる。
「自殺自由法」などもはや関係なく、ただただ胸糞悪い人間模様の羅列であり、それでいてそのオムニバス的な羅列には何の捻りもなく伏線も大したものがない。
インターネット上に転がる”胸糞の悪いコピペ”と類されるショートストーリーの方がまだ読んでいて面白いといえる。
2013年11月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
個々人の人間がDQNというかチンピラとかガキとか安い人種しか出てこない。
もっと、社会現象とか哲学的な視点とか、生き方の転換とか、そんな展開を期待していたが、そんなものはなかった。
作者の力量がテーマに追い付いていない。残念な作品。
ここにあるのは、セックス、借金、暴力といった安い話。
テーマは重いのに、中身は軽い。がっかりな作品。
力量のある他の作家に同じ題名でかいてもらったら名作になるんじゃないかな。
もっと、社会現象とか哲学的な視点とか、生き方の転換とか、そんな展開を期待していたが、そんなものはなかった。
作者の力量がテーマに追い付いていない。残念な作品。
ここにあるのは、セックス、借金、暴力といった安い話。
テーマは重いのに、中身は軽い。がっかりな作品。
力量のある他の作家に同じ題名でかいてもらったら名作になるんじゃないかな。
2007年7月8日に日本でレビュー済み
小説はあまり読まないけど、これは面白かった。
もし自由に自殺ができれば…
自殺すると決めると人はどうなるのか。
このシステムをどう「利用」するのか。
いくつかの人々のストーリーがオムニバスのように折り重なっていく前半がやはり読みごたえがあるかな。あまりにもドロドロとした人間の「本性」が結構リアルに書き綴られている。自分のバーチャルが見つかったり、自分の範疇にない人がみつかったり。。。
後半から最後は、、、、ただひたすら切ない。所詮人間なんて…という気分。
もし自由に自殺ができれば…
自殺すると決めると人はどうなるのか。
このシステムをどう「利用」するのか。
いくつかの人々のストーリーがオムニバスのように折り重なっていく前半がやはり読みごたえがあるかな。あまりにもドロドロとした人間の「本性」が結構リアルに書き綴られている。自分のバーチャルが見つかったり、自分の範疇にない人がみつかったり。。。
後半から最後は、、、、ただひたすら切ない。所詮人間なんて…という気分。
2006年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2005年2月「自殺用の拳銃を入手しようとして交番へ侵入したニートが御用」という事件があった。彼がつけていたのブログ(宿命を超えて、自己を超えて)の最後には「警官の銃を奪って頭を撃ち抜く」「気が向いたらそのまま決行してしまおう」とあった。
彼の残されたブログを読んでいたら、この自殺自由法を「これはよい」と絶賛していたので、気になったので買ってしまった。実際に自殺を企てたひとがオススメしている自殺関連本なら間違いない、と思ったのである。2時間かけての読了後、交番に侵入した彼はこの本の登場人物になれるな 、と感じ彼が絶賛していたことを妙に納得してしまった。
自殺をめぐる様々な人たちのショートストーリ調な展開で進み、一人につき20Pぐらいで交代していく。次々に登場人物かわるので、テンポがよく飽きない。内容に気分が滅入らなければ一気に読めてしまう。登場人物、動機の多さから、大抵のひとは自分に重ね合わせられる話が2、3はあるんではなかろうかとおもった。テーマのわりにはコミカルに書かれており読みやすい。だからウツの中毒性も薄く気軽に手を出してよい自殺本だとおもう。
彼の残されたブログを読んでいたら、この自殺自由法を「これはよい」と絶賛していたので、気になったので買ってしまった。実際に自殺を企てたひとがオススメしている自殺関連本なら間違いない、と思ったのである。2時間かけての読了後、交番に侵入した彼はこの本の登場人物になれるな 、と感じ彼が絶賛していたことを妙に納得してしまった。
自殺をめぐる様々な人たちのショートストーリ調な展開で進み、一人につき20Pぐらいで交代していく。次々に登場人物かわるので、テンポがよく飽きない。内容に気分が滅入らなければ一気に読めてしまう。登場人物、動機の多さから、大抵のひとは自分に重ね合わせられる話が2、3はあるんではなかろうかとおもった。テーマのわりにはコミカルに書かれており読みやすい。だからウツの中毒性も薄く気軽に手を出してよい自殺本だとおもう。
2005年11月6日に日本でレビュー済み
確かに矛盾したところや非現実的なところもあるが、自逝センターはなかなか良く考えられたアイデアで、安楽死などが認められた先にはあってもおかしくない施設である。この作者の他の作品はちょっとぶっ飛びすぎでついていけないところがあるが、この作品は適度に抑制が利いていて、最後にはいろいろ考えさせられる。著作を全部読んだわけではないがおそらく最高傑作ではないかと思う。是非一読あれ。