保坂さんの小説は特別なストーリーがあるわけではなくただ淡々と日々の出来事が連ねられていくものが多いのですが、本作もそういうスタイルです、というかそれがさらに進んで、むしろエッセイのようです。ひたすら子供時代のことを思い起こされた順に、特に起承転結をもたずに語られていきます。そう、まさに語られるように、まるで本人の朗読を聞いているように、読んでいる私には感じられました。
前作もそうでしたがこの小説では作者独特の「私は」という言葉のちょっと変わった使い方が出てきます。最初は読んでいてぴんとこなかったのですが、これは「私にとっての現象」であることを強調するための使い方なのかなとあとから思いました。あとがきで作者が述べているように、この小説の主人公は語り手の「僕」ではなく、僕が経てきた時間と光景で、さらに読み手である私たちの時間と光景なのです。僕の光景と読み手の光景がふと共振するとき、間主観性のようなものが立ち上がって、別々の時間を生きた大人がふと繋がる、そんな小説を作者は目指したようにも思われます。

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朝露通信 単行本 – 2014/10/24
保坂 和志
(著)
たびたびあなたに話してきたことだが僕は鎌倉が好きだ。
この小説の主役は語り手の〝僕〟でなく、
僕が経てきた時間と光景だ、それ以上に、
読みながら読者の心に去来するその人その人の時間と光景だ。人は孤立していない、
一人一人は閉じられた存在ではない。人は別々の時間を生きて大人になるが、別々の
時間を生きたがゆえに繋がっている。
朝露の一滴が世界を映す。
この小説の主役は語り手の〝僕〟でなく、
僕が経てきた時間と光景だ、それ以上に、
読みながら読者の心に去来するその人その人の時間と光景だ。人は孤立していない、
一人一人は閉じられた存在ではない。人は別々の時間を生きて大人になるが、別々の
時間を生きたがゆえに繋がっている。
朝露の一滴が世界を映す。
- 本の長さ376ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2014/10/24
- ISBN-104120046710
- ISBN-13978-4120046711
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2014/10/24)
- 発売日 : 2014/10/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 376ページ
- ISBN-10 : 4120046710
- ISBN-13 : 978-4120046711
- Amazon 売れ筋ランキング: - 453,649位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1956年、山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞。その他の著書に『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。
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