他の方も書いているが記載の内容は多くの場合妥当であり、
かつ中立的な見方をしていると思う。これが半世紀以上前に書かれた
ものとは思えない今なお読ませる(枯れてない)書物と言える。
ただ惜しむらくは新書という容量だけにワイマール共和国の20年間の概史に
とどまっており、詳細については他の書の補助を借りる必要があるだろう。
例えばフライコーアに関する記述は多少あるがポーランドによるシレジア蜂起と
そのフライコーアによる鎮圧などについても特に記載がなかった。
エアフルト旅団などの記述もまぁ少ない。
バルト海諸国でのフライコーアのご乱行だけでも1冊の本ができるだろう。
フライコーアの構成員を見るとナチ党・親衛隊・突撃隊のそうそうたる面々が
目につく。彼らを揺籃したのがまさにフライコーアだろう。(フライコーア所属時は
20代前半、WW2時は40代~50代の脂の乗り切った時期、まさにWW1後の混乱期
とともに人生があるような連中ばかり)
概史なので、こういった細かい組織や事件や人物については記載が少ないのも
やむを得ないだろうが、本書からドイツ近代史に興味を持ち、他の大書を閲読する
端緒となれば良いのではないだろうか。
ワイマールの20年間を見ていると、なんとまぁ左右の振れ幅の大きいことか。
一時はドイツも赤化避けられぬかと思うほどの隆盛を誇っていたが
(これはポーランドソビエト戦争ですぐ隣がもうすぐ共産化するかもという時期が
ピークだろう。)これも潰えて、次は右翼勢力の伸長となって次に1920年代中ごろの
シュトレーゼマン時代のごく短い安定期を経てついにヒトラーナチスが躍進して
ドイツを乗っ取りWW2に突入、という時代の流れとなる。
ドイツの民主主義の歴史という点で見れば、まったく短いというとそうでもないだろう。
社会主義者や共産主義者の著名な人物はドイツ人(19世紀ならプロイセン人か?)も多い。
それではいったい何がヒトラーを現出させたのか。
権威主義・軍人崇拝・地域分権・強すぎる大統領権限・敗戦によるショックと度重なる
混乱、さらに安定した中間層の不足・戦勝国による過剰な賠償要求などだろうか。
ともかくありとあらゆる悪条件が重なっているのがワイマール共和国の20年と感じる。
あと、このワイマールの20年の混乱を日本の今の状況と重ねようとする人もいるが、
敗戦し帝政が瓦解し、大量の人間が餓死し、愚連隊・テロリスト・軍閥などの
有象無象の集団が割拠し失脚または勃興を繰り返す大混乱のドイツの状況とまるで違う。
物的にも質的にも混同するのは良くないだろう。
ワイマール共和国内の中でもバイエルン州は混乱の渦中だが、翻ってプロイセン州については
左派のブラウン首相の指導のもと、比較的早期に安定していたのは注目に値する。
地域による温度差や市民の構成などにも差があり、ドイツ一枚として語れないのも面白い。
こういった点でも比較的画一的で地方ごとに首相や地域政府が無い現代日本と
比較するのは困難だろう。
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ワイマル共和国: ヒトラ-を出現させたもの (中公新書 27) 新書 – 1963/1/1
林 健太郎
(著)
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- 本の長さ220ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1963/1/1
- ISBN-104121000277
- ISBN-13978-4121000279
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- 出版社 : 中央公論新社 (1963/1/1)
- 発売日 : 1963/1/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 220ページ
- ISBN-10 : 4121000277
- ISBN-13 : 978-4121000279
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2020年12月15日に日本でレビュー済み
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ヒトラーはなぜ誕生したのか?全てではないにしてもその原因がこの新書には書かれていると感じました。
2021年5月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ヒットラーを誕生させたドイツの人々が、歴史から何を学んだか。それを書いた本を読みたいと思いました。
今の日本人が、学ぶべきことがたくさんあるに違いないと思います。
今の日本人が、学ぶべきことがたくさんあるに違いないと思います。
2018年9月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ヒトラーという偏狂思想の持主が仮初めにしろ合法的に絶対的な指導者として選出された背後関係が知りたくて購入しました。
ドイツ内の混迷も原因ですが、多くはフランスの執拗な復讐心による過酷な賠償金強要にあると思う。
オーストリア人のチビにドイツ系民族が幻想を託したのも不自然な事と思う。
わが闘争を読むための準備でした。
ドイツ内の混迷も原因ですが、多くはフランスの執拗な復讐心による過酷な賠償金強要にあると思う。
オーストリア人のチビにドイツ系民族が幻想を託したのも不自然な事と思う。
わが闘争を読むための準備でした。
2015年4月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
出版後50年以上が経過しても、その内容には全く揺るぎの
無い、まさに名著です。
読んでいて想起されたのは、トロツキーの「ロシア革命史」
でした。
比較すると、こちらは舞台をドイツに移し、視点の党派的偏向
性を抑え、コンパクトに凝縮されたことで、時代の疾走感が出
ていて臨場感がある、ということになります。
第一次世界大戦後の歴史の流れの中で、如何に多くの人物が苦闘
し、それがナチスの強大化に繋がってしまったのかが、よく判り
ます。
恥ずかしながら、ヒトラーが政権を取った時に、過半数割れして
いたことを初めて知りました。
無い、まさに名著です。
読んでいて想起されたのは、トロツキーの「ロシア革命史」
でした。
比較すると、こちらは舞台をドイツに移し、視点の党派的偏向
性を抑え、コンパクトに凝縮されたことで、時代の疾走感が出
ていて臨場感がある、ということになります。
第一次世界大戦後の歴史の流れの中で、如何に多くの人物が苦闘
し、それがナチスの強大化に繋がってしまったのかが、よく判り
ます。
恥ずかしながら、ヒトラーが政権を取った時に、過半数割れして
いたことを初めて知りました。
2016年7月24日に日本でレビュー済み
ヒトラーを出現させたもの、という副題とアマゾンの高評価に惹かれて、読みました。50年以上前に書かれた本ですので、国内政治の変遷が9割、国際関係や経済が残り1割といった、歴史と言ってもかなり政治史中心の記述になっています。政治史を詳細に知りたい人には、ぴったりな本でしょうが、私自身は、各政党の支持基盤や、政党が形成された経緯などの前提知識が乏しいこと、より多面的にヒトラー出現の要因を捉えたかったことから、やや期待外れでした。
政治の表舞台に登場する人物、一人一人のことがよく書いてあり(名前を聞いたことのない政治家ばかりでしたが)、特に世界恐慌後の3年間は、老衰大統領のヒンデンブルク、陰謀家のシュライヒャー、権力欲ばかりで無能なパーペンなど、不幸な偶然の組み合わせが重なって、ヒトラーの首相就任をもたらしてしまったことが分かり、ぞっとします。ナチスの独裁が歴史の必然であったと言いきれないものを感じます。
1919年から1933年までの14年間で、20もの内閣が誕生したということが、この時代の政治的な不安定さをよく物語っています。社会民主党、共産党、国家人民党、中央党など、主に9つの政党があったそうで、右翼系と左翼系、資本家利益と労働者利益、階級主義と個人主義、保守主義と急進主義、これらの対立軸が、綱引きをしながら、いずれも圧倒的優位を確保できなかった混乱模様が分かります。その背景には、当然、多額の賠償金を課せられてのドイツ国民の経済的窮乏や、そこから来る人々の不安、戦勝国への怒りといった感情のせめぎあいがあっただろう、と想像できました。
この本が書かれた当時は、歴史と言えば、こういうスタイルの記述だったのでしょう。一般人、現代人としては、ここまで詳細に政治史を書かなくてよいから、経済的な状況やそれがもたらした社会への影響、人々の心理状態などを織り交ぜて記述してくれたら、政治的な状況の方もより重層的に理解できたのにという気がします。
政治の表舞台に登場する人物、一人一人のことがよく書いてあり(名前を聞いたことのない政治家ばかりでしたが)、特に世界恐慌後の3年間は、老衰大統領のヒンデンブルク、陰謀家のシュライヒャー、権力欲ばかりで無能なパーペンなど、不幸な偶然の組み合わせが重なって、ヒトラーの首相就任をもたらしてしまったことが分かり、ぞっとします。ナチスの独裁が歴史の必然であったと言いきれないものを感じます。
1919年から1933年までの14年間で、20もの内閣が誕生したということが、この時代の政治的な不安定さをよく物語っています。社会民主党、共産党、国家人民党、中央党など、主に9つの政党があったそうで、右翼系と左翼系、資本家利益と労働者利益、階級主義と個人主義、保守主義と急進主義、これらの対立軸が、綱引きをしながら、いずれも圧倒的優位を確保できなかった混乱模様が分かります。その背景には、当然、多額の賠償金を課せられてのドイツ国民の経済的窮乏や、そこから来る人々の不安、戦勝国への怒りといった感情のせめぎあいがあっただろう、と想像できました。
この本が書かれた当時は、歴史と言えば、こういうスタイルの記述だったのでしょう。一般人、現代人としては、ここまで詳細に政治史を書かなくてよいから、経済的な状況やそれがもたらした社会への影響、人々の心理状態などを織り交ぜて記述してくれたら、政治的な状況の方もより重層的に理解できたのにという気がします。
2023年9月9日に日本でレビュー済み
ワイマール共和国に関連した書籍検索中この本を知った。だがAmazonが上げている、林健太郎という人物はこの著作者とは別人である。全く時代も違うし経歴も違う。
真の著者は同姓同名だが、東大の歴史学者の林健太郎氏である。
訂正しこの広告を閲覧している多くの人たちに対しても謝罪されてはどうか。また現在掲載されている林氏に対しても失礼な話であり丁寧に事実を伝えて謝罪されてはどうか。
二度と同じ間違いはしないで欲しい。Amazonの信用がなくなる。
早急に対処して欲しい。
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二度と同じ間違いはしないで欲しい。Amazonの信用がなくなる。
早急に対処して欲しい。
2013年11月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私が高校生の時、何故世界で最も民主的な憲法を持ったはずの
ワイマール共和国においてヒットラーを生み出したかという疑問を動機として
買い求めた。
当時私はまだ民主主義というものを無邪気に信用していた時期です。
あれから40年余当時買った新書は日焼けし色あせ読み難いので再度購入したが
内容は少しも古くなっていないし突っ込みどころもない
この本はもう完成された基本書なんだという感慨を持ちました。
コンパクトながら内容は示唆に富んでいる、政党の成熟と覚悟なくして
議会制民主主義は機能しない、政党が堕落したとき大衆の怨嗟を糧として怪物の出現する。
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当時私はまだ民主主義というものを無邪気に信用していた時期です。
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