本書は、1990年2月に中央公論社から刊行されたものを
2013年5月に講談社学術文庫で文庫化したものです。
内容は、日本の鉄砲の歴史を鉄砲普及の視点から考えたもので、体系的に論じています。
1、鉄砲伝来の実像では、倭寇によって西国の各地に鉄砲が持ち込まれたと説きます。
2、西南戦国大名の新兵器受容では、国内への鉄砲の伝播と、大友氏、島津氏、毛利氏の鉄砲の扱いを、
3、東国の戦国大名と鉄砲では、東国への鉄砲波及と、武田氏と北条氏の鉄砲の扱いを語ります。
4、統一政権の成立と鉄砲の定着では、信長の鉄砲戦術と、文禄・慶長の役での鉄砲事情を解説。
5、海を渡った火縄銃では、朝鮮半島での銃事情と、降倭が果たした役割を紹介。
6、徳川政権の誕生と火砲では、大阪の陣での国友鍛冶の貢献を紹介。
7、砲術武芸の成立では、火薬製造と、稲富一夢などの砲術師を紹介。
8、日本鉄砲研究小史では、中世から近世初めの鉄砲に関する研究を概観。
あとがきでは、ノエル・ペリン著「鉄砲をすてた日本人」を紹介し、
有意義だと評価しつつ歴史の誤認を指摘し、鉄砲に関する日本の研究がいまだに体系的ではないと嘆いて終わります。
本書で最も印象的だったのは、長篠の戦いでの信長の鉄砲戦術が革新的なものではなく、
すでに砲術師があみ出していたとの指摘でした。
本書を読む前に、宇田川氏著「真説 鉄砲伝来」(平凡新書)を読みましたが、
鉄砲の歴史に興味のある方には、併せて読むことをお勧めします。
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鉄炮伝来: 兵器が語る近世の誕生 (中公新書 962) 新書 – 1990/2/1
宇田川 武久
(著)
- 本の長さ182ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1990/2/1
- ISBN-104121009622
- ISBN-13978-4121009623
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1990/2/1)
- 発売日 : 1990/2/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 182ページ
- ISBN-10 : 4121009622
- ISBN-13 : 978-4121009623
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,269,937位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2017年4月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年6月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私が思いこんでいた伝来の道が単純ではなく、多岐に渡っていることが良く解った事。
国内での伝ばの仕方がもっと詳しく知りたいと思います。
それと、火薬の材料の輸入ルートの詳細も分かりやすく書いていれば、より面白いとおもいます。
国内での伝ばの仕方がもっと詳しく知りたいと思います。
それと、火薬の材料の輸入ルートの詳細も分かりやすく書いていれば、より面白いとおもいます。
2016年1月9日に日本でレビュー済み
日本の火縄銃の仕様は、所荘吉「図解古銃事典」p68によると、スペイン型と呼ばれる頰付けストックと当時発明されたばかりの加圧式火挟をもつマラッカ型の特殊なものだった、とのこと。ヨーロッパ人が日本に火縄銃を持ち込んだのなら、火挟が倒れる方向が逆で肩付けストックの仕様のはずでは?というのが、ポルトガル人が伝えたという説に対する著者の論拠(著者は倭寇が伝えた説)です。何故、東南アジアでマラッカ式の火縄銃が普及していたのか、誰が東南アジアに火縄銃を持ち込んだのか、などの疑問が湧きますが、その答えはこのコンパクトな本には書かれていません。日本と朝鮮半島における火縄銃の普及について、文献をもとにした堅実な研究がメインテーマです。第八章を見ると日本の銃砲史は未開拓な所が多いようですので、今後に期待ですね。この文庫は2013年、原著1990年中央公論社の全体を基本を残して訂正加筆しているようです。
2020年6月9日に日本でレビュー済み
著者があとがきでも語っているが、本書の主題は「倭寇による鉄炮伝来の実像(1章)」「鉄炮研究小史(8章)」である。特に1章はグローバルヒストリー的な観点から鉄炮の伝来を捉え直す面白い視点であり、「先進キリスト教国のポルトガル人が中国船に乗って鉄炮を伝えた」というよりも、「倭寇を構成したポルトガル人を含んだグループが種子島で鉄炮を披露した」という言説は臨場感を持ち、説得力がある。ただし1章という紙幅はあまりにも少なく、倭寇と域内貿易という観点から更に研究する必要があるのではないだろうか。
また8章は主に鉄砲伝来に関する主な論点を簡単に説明しているが、私のような門外漢には8章に目を通してから1章を読むことでより本書の理解が深まるとも思われる。
これら2章以外ではもっぱら資料を使って鉄炮が軍制や戦に与えた影響が語られており、将に課せられた軍役が年を追って鉄炮重視にシフトしていくさまや大坂の陣以降の鉄炮や砲術の急速な廃れが記されており、16世紀から17世紀初頭の鉄炮周辺事情は一通りわかるようになっている。
その中でも特に興味深かったのが、朝鮮出兵における鉄炮の存在である。朝鮮出兵の際に李氏朝鮮に投降した降倭の技術力に目をつけ、彼らを鉄炮と火薬の製造にあたらせ、以後李氏朝鮮にとって有効な武器となった点は、日本軍が朝鮮人陶工を連行し、日本各地で陶磁器の製造にあたらせた点と比較して、非常に興味深い。
鉄炮は火薬や弾がなければ、ただの鉄の棒であり、武器として一通り製造するためには技術だけでなく、貿易・産業が必要であることを考えると、倭寇を含めた域内相互の関連を通じて当時の最新兵器である鉄炮にアプローチすること、そして改めて鉄炮史を構築することは、当時の世界を理解する上で非常に有用であると思う。
また8章は主に鉄砲伝来に関する主な論点を簡単に説明しているが、私のような門外漢には8章に目を通してから1章を読むことでより本書の理解が深まるとも思われる。
これら2章以外ではもっぱら資料を使って鉄炮が軍制や戦に与えた影響が語られており、将に課せられた軍役が年を追って鉄炮重視にシフトしていくさまや大坂の陣以降の鉄炮や砲術の急速な廃れが記されており、16世紀から17世紀初頭の鉄炮周辺事情は一通りわかるようになっている。
その中でも特に興味深かったのが、朝鮮出兵における鉄炮の存在である。朝鮮出兵の際に李氏朝鮮に投降した降倭の技術力に目をつけ、彼らを鉄炮と火薬の製造にあたらせ、以後李氏朝鮮にとって有効な武器となった点は、日本軍が朝鮮人陶工を連行し、日本各地で陶磁器の製造にあたらせた点と比較して、非常に興味深い。
鉄炮は火薬や弾がなければ、ただの鉄の棒であり、武器として一通り製造するためには技術だけでなく、貿易・産業が必要であることを考えると、倭寇を含めた域内相互の関連を通じて当時の最新兵器である鉄炮にアプローチすること、そして改めて鉄炮史を構築することは、当時の世界を理解する上で非常に有用であると思う。