中国の東清鉄道(後に南満州鉄道となる)などの建設をめぐる日英側とロシアの抗争を記した書籍。タイトルが必ずしも内容を表していない例の一冊で、副題の方が内容に相応しいと思うのは私だけではないだろう。
19世紀から20世紀にかけての鉄道は国の経済を支える重要なインフラストラクチャーであり、その成り立ちには英国や米国のように民間資本により建設された
国とドイツ、フランス、ロシア、日本のように国家資本が建設の中心となった国がある。民間の資本蓄積、建設技術が未発達の開発途上国は当然ながら国家主導型にならざるを得ず、中国、朝鮮もそのグループであり、領土、権益拡張を目指す諸外国の争いのばとなった。本書はその争いを鉄道を通じた歴史を著したものである。
19世紀初め中央アジアからインド洋へ南下を図るロシアとこれを阻止しようとする英国と利害が一致していた日本は英国と共に対抗することになるが、日露戦争以後はこの地域における役割は日本が行うこととなる。本書は日中戦争勃発前までのこの鉄道及び朝鮮半島の鉄道建設の経緯を期してものである。調査は日英の外交資料も含めており詳細である。が、ここまで調べていると、ロシア側の資料はどうだったのだろうかという欲望もわくが、帝政ロシア、革命直後のソ連の外交文書が残っているようには思えない。
気になったのは冒頭の個所にいわゆる標準軌のいきさつに明らかに日本人の書籍からの引用が記されているが、この引用元はかなり誤解を招く(他のレビューで記載あり)もので、折角ならこの点も受け売りではなく、英国の資料を調べて欲しかった。
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鉄道ゲージが変えた現代史: 列車は国家権力を乗せて走る (中公新書 992) 新書 – 1990/11/1
井上 勇一
(著)
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1990/11/1
- ISBN-104121009924
- ISBN-13978-4121009920
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1990/11/1)
- 発売日 : 1990/11/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 4121009924
- ISBN-13 : 978-4121009920
- Amazon 売れ筋ランキング: - 798,541位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2021年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2008年8月3日に日本でレビュー済み
著者は外務省外交史料館の職員。
本書は館に所蔵の資料から、満鉄の形成過程をたどっていったもの。タイトルは大仰なものが付いているが、内容は非常に細かい。一般的な話を望む読者は手を出さない方がいいだろう。
日本の鉄道は、国際的には「狭軌」と呼ばれるサイズでつくられている。文字どおり、レール間の幅(ゲージ)が狭いので、安価にひけるが大量輸送には向かない。つまり、軍事動員や兵站には向かないということである。
大正〜昭和初期には、国内でも狭軌から広軌への付け替えが議論されていた。それを受ける形で、満鉄も広軌化していく。それは同時に、日本の中国への侵出とも重ね合わされるのである。
そのあたりの経緯が、実に詳しく書かれている。政界での議論、実際の付け替えの経緯、諸外国とのつばぜり合い。
満鉄への関心のある人には面白いのかも知れない。しかし、調べたことを並べただけという感じの本で、読み進めるのに困難を覚えた。
どちらかというと、データ集として利用すべきなのかも。
本書は館に所蔵の資料から、満鉄の形成過程をたどっていったもの。タイトルは大仰なものが付いているが、内容は非常に細かい。一般的な話を望む読者は手を出さない方がいいだろう。
日本の鉄道は、国際的には「狭軌」と呼ばれるサイズでつくられている。文字どおり、レール間の幅(ゲージ)が狭いので、安価にひけるが大量輸送には向かない。つまり、軍事動員や兵站には向かないということである。
大正〜昭和初期には、国内でも狭軌から広軌への付け替えが議論されていた。それを受ける形で、満鉄も広軌化していく。それは同時に、日本の中国への侵出とも重ね合わされるのである。
そのあたりの経緯が、実に詳しく書かれている。政界での議論、実際の付け替えの経緯、諸外国とのつばぜり合い。
満鉄への関心のある人には面白いのかも知れない。しかし、調べたことを並べただけという感じの本で、読み進めるのに困難を覚えた。
どちらかというと、データ集として利用すべきなのかも。
2006年2月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日清戦争前後から第2次世界大戦に至る、中国東北部(満州)における列強諸国の鉄道敷設を巡る攻防が描かれた本です。「鉄道ゲージが変えた現代史」と言いますがそれはちょっと言い過ぎで、実際には双方の勢力圏が決まった結果それぞれの地域にそれぞれのゲージの鉄道が敷かれたという面が強いでしょう。しかし歴史に興味がある人なら面白く読める本だと思います。
2007年9月29日に日本でレビュー済み
19世紀末からの中国北東部における鉄道の開発に関する歴史である。
この本を読むと、鉄道というものが当時のハイテク技術であり、軍事とも密接に関係した戦略的な技術であったことがわかる。
特に広軌と狭軌の違いがここまで影響が大きいことは驚きであった。
鉄道ゲージについては、蒸気機関車を考案したスティーブンソンが採用したゲージが、4フィート8インチ半であり、この幅は歴史をたどると古代ローマの2頭立て戦車の軌道と同じというような蘊蓄もある。
日本では新幹線のゲージが広軌といわれているが、世界的には標準軌であるというようなことも鉄道マニアではない一般人には新鮮であった。
この本を読むと、鉄道というものが当時のハイテク技術であり、軍事とも密接に関係した戦略的な技術であったことがわかる。
特に広軌と狭軌の違いがここまで影響が大きいことは驚きであった。
鉄道ゲージについては、蒸気機関車を考案したスティーブンソンが採用したゲージが、4フィート8インチ半であり、この幅は歴史をたどると古代ローマの2頭立て戦車の軌道と同じというような蘊蓄もある。
日本では新幹線のゲージが広軌といわれているが、世界的には標準軌であるというようなことも鉄道マニアではない一般人には新鮮であった。