13作の名画を素材に、戦前の昭和から戦後の復興期までの東京の情景を、「華やかな水の都」と「陋巷な下町」をキーワードに個性ある町々として語る秀作である。筆力もさることながら、変わりゆく東京と名画への深い愛惜の思いが印象的である。本書に登場する13作品のすべてを一巻のデジタル媒体にまとめ、商品化してほしいものである。ちなみにレビュアーが観賞した記憶のある作品は、13作中の4作である。
50年後、100年後には今の東京も「古き良き時代の東京」として語られることがあるかもしれない。ただ、その語りが銀幕の名画と結び付けられることはないだろう。寂しい限りである。
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銀幕の東京: 映画でよみがえる昭和 (中公新書 1477) 新書 – 1999/5/1
川本 三郎
(著)
- 本の長さ270ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1999/5/1
- ISBN-104121014774
- ISBN-13978-4121014771
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1999/5/1)
- 発売日 : 1999/5/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 270ページ
- ISBN-10 : 4121014774
- ISBN-13 : 978-4121014771
- Amazon 売れ筋ランキング: - 353,306位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2014年1月9日に日本でレビュー済み
著者は映画評論家で、紀行エッセイストでもある。本書は、その両面が融合したような内容だった。
前半は『東京物語』『流れる』『銀座化粧』などの名画を通して古き東京をのぞきこみ、後半では有楽町、上野、浅草といった町を映画にからめながら紹介している。
たとえば、『東京湾』からは立石の血液銀行、西新井橋のボート小屋、築地橋などが切り取られる。いずれもいまではなくなってしまったものだが、そうした過去の東京の景色が、映画の中には記録されているのである。
後半の後楽園では、黒澤明『野良犬』、『秀子の応援団長』などが取り上げられ、そのなかの風景が示される。
映画の中にこんなに過去の記憶が保存されているとは思わなかった。
前半は『東京物語』『流れる』『銀座化粧』などの名画を通して古き東京をのぞきこみ、後半では有楽町、上野、浅草といった町を映画にからめながら紹介している。
たとえば、『東京湾』からは立石の血液銀行、西新井橋のボート小屋、築地橋などが切り取られる。いずれもいまではなくなってしまったものだが、そうした過去の東京の景色が、映画の中には記録されているのである。
後半の後楽園では、黒澤明『野良犬』、『秀子の応援団長』などが取り上げられ、そのなかの風景が示される。
映画の中にこんなに過去の記憶が保存されているとは思わなかった。
2007年7月7日に日本でレビュー済み
本書は昭和二十、三十年代に作られた日本映画を通して、往時の東京の街並みを再現しようとしたもの。私は現在でこそ神奈川都民だが、田舎で生まれ育ったので、当時の東京の街並みなど知らない筈なのに、読み進めて行くうちに何故か懐かしさを覚えてしまうという不思議な魅力を持った作品である。
これは「映画を通して」という構想が奏功してからであろう。挙げたらキリがないが、「東京物語」、「流れる」、「下町の太陽」、「銀座の恋の物語」など私も観た作品が採り上げられるので、街並みの再現と同時に往時の様々な俳優達(有名俳優から玄人好みの個性派俳優)の思い出も甦る。このため、良く知っていた筈のない街並みも、知っていたかのような錯覚に捉われ、何だが懐かしさを覚えるのである。本書が街並みの再現と同時に、往時の人々(主に下町)の人情を再現しようとしている点も見逃せない。
本作はそうしたノスタルジーものとしての意義だけでなく、記録文学としても価値が高いと思う。著者によれば、昭和三十九年(東京オリンピック)以降、東京の街並みは大きく変ってしまったと言う。それが本書執筆の動機であるが、平成の時点から見れば変貌振りは更に顕著であろう。そうした意味でも、戦後の東京の街並みと人情を見事に再現した心温まる書。
これは「映画を通して」という構想が奏功してからであろう。挙げたらキリがないが、「東京物語」、「流れる」、「下町の太陽」、「銀座の恋の物語」など私も観た作品が採り上げられるので、街並みの再現と同時に往時の様々な俳優達(有名俳優から玄人好みの個性派俳優)の思い出も甦る。このため、良く知っていた筈のない街並みも、知っていたかのような錯覚に捉われ、何だが懐かしさを覚えるのである。本書が街並みの再現と同時に、往時の人々(主に下町)の人情を再現しようとしている点も見逃せない。
本作はそうしたノスタルジーものとしての意義だけでなく、記録文学としても価値が高いと思う。著者によれば、昭和三十九年(東京オリンピック)以降、東京の街並みは大きく変ってしまったと言う。それが本書執筆の動機であるが、平成の時点から見れば変貌振りは更に顕著であろう。そうした意味でも、戦後の東京の街並みと人情を見事に再現した心温まる書。
2005年6月26日に日本でレビュー済み
昭和30年代という、著者の言葉を借りれば、「東京のベルエポック」期に焦点を当てて、小津、成瀬の名作はもちろんのこと、今ではあまり見られなくなった作品に描かれた懐かしい東京を、著者の思い出を交えて語る。
東京を舞台にした映画といっても、ここで取り上げられるほとんどはいわゆる下町を舞台にした作品である。そして、華やかというより地味で慎ましい庶民の生活を描いた作品が多い。
そのため、いわゆる映画による東京案内の体裁を取りながら、実は映画はいかに東京に住む庶民を描いたかに力点がおかれている。
懐かしい東京へタイムスリップできる本である。
東京を舞台にした映画といっても、ここで取り上げられるほとんどはいわゆる下町を舞台にした作品である。そして、華やかというより地味で慎ましい庶民の生活を描いた作品が多い。
そのため、いわゆる映画による東京案内の体裁を取りながら、実は映画はいかに東京に住む庶民を描いたかに力点がおかれている。
懐かしい東京へタイムスリップできる本である。