本来ノーベル賞の受賞に値する人が受賞できなかった事例を挙げると枚挙にいとまがない。北里柴三郎や鈴木梅太郎らは所謂人種差別で受賞できなかった人たちである。高校の教科書にも掲載され、化学の基礎であるメンデレーエフの周期律表は幾度かノミネートされたが結局受賞できなかった素晴らしい業績の一つである。確かにメンデレーエフ以前にオクテットセオリーというのがあり、周期律表はその応用と言えば言えるが、1906年のフッ素の単離と周期律表との合致の報告に対しノーベル賞が与えられている事実を考えれば、周期律表は1906年以前に受賞されるべき業績であった。
ワトソン、クリック、ウイルキンスのDNAの二重らせん構造に対しノーベル賞が与えられたが、これもロザリンドフランクリンのDNAのX線写真の業績と二重らせんの可能性を示唆した研究費報告書の記述が全く無視され、反対に何の業績も無いウイルキンスに賞が与えられたのは、ロザリンドフランクリンが既に死亡していたという事実もあるが、余りにも意図的なミスキャストであった。ワトソンも実験データを持たない理論家で机上の空論をクリックと行っていただけで、クリックも上司からロザリンドフランクリンの研究費報告書の中に記載された二重らせんの可能性の緻密なデータに基づく解読を盗み読んだ人間に過ぎない。それらの意味でDNA二重らせんの栄誉は与えるべき人に与えられないことになってしまったのである。もしもDNAのX線写真をLポーリングが見ることがあったならばポーリングこそ蛋白質構造解析に続き、DNAの構造解析に対しノーベル賞を受賞した科学者であった。彼は3重らせん構造を提案していたのだからX線写真で即座に2重らせんを思いついたはずである。
現在の分析化学の世界でクロマトグラフィーの重要さは至極当たり前の事実であり、クロマトグラフィーについては理系の人間は大学3年生で習い、実習する。クロマトグラフーはロシアのミハイル・ツヴェットが炭酸カルシウムを担体にし、複数のクロロフィル成分を分離したことに始まる。クロマトグラフィーとは色を分けるという意味で、クロロフィルの分析は1906年のツヴェットの業績である。現在ではクロマトグラフ(クロマトグラフィーを行う装置)の無い分析機器の世界は考えられず、ガスクロ、液クロ、ゲル濾過、電気泳動など様々な分野に応用されている。DNAの塩基分列の実験もSDS電気泳動で行う。
この様な素晴らしい業績がなぜ評価されなかったのか?その理由として考えられるのは多くのクロマトグラフィーの業績が英語ではなくロシア語で報告された事にあると考える。ノーベル賞は英語での業績しか考慮の対象にされず、また受賞者が生存していなければならないことから、本当に素晴らしい業績だけが受賞に値するかと言えばそうとは限らない。
日本人の文学賞も英語に翻訳されて初めて評価の対象とされる。その意味で翻訳されない、和歌や短歌などはいくら素晴らしくても評価の対象にはならない。英語であればボブデウランでも受賞できる賞である。
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ノーベル賞の100年: 自然科学三賞でたどる科学史 (中公新書 1633) 新書 – 2002/3/1
馬場 錬成
(著)
- 本の長さ227ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2002/3/1
- ISBN-104121016335
- ISBN-13978-4121016331
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2002/3/1)
- 発売日 : 2002/3/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 227ページ
- ISBN-10 : 4121016335
- ISBN-13 : 978-4121016331
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,152,350位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2017年12月28日に日本でレビュー済み
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2004年11月7日に日本でレビュー済み
第1回ノーベル賞授与式は1901年に行われた。その後ノーベル賞(本書では自然科学三賞)にどんな出来事があったのか、その100年の歴史がまとめられている。
本のつくりは「日本人とノーベル賞」「ノーベル賞創設の歴史」「各ジャンル(物理学や医学、分子生物学)のおもな出来事」の三本柱。中でも湯川秀樹博士の日本人初受賞より前の、日本人とノーベル賞の関わりぶりが充実している。
ノーベル財団が所蔵する資料(推薦者による受賞者の推薦文や、選定者による候補者についての報告書など)は、受賞後50年経って初めて公開となる。しかも閲覧できる人はごく限られており、日本人でその権利をもつのは、科学史が専門の東京大学・岡本拓司講師のみなのだ。
そこで著者は、岡本氏の報告論文の読み込みや岡本氏本人への取材などを綿密に行い、それをわかりやすく本の中でまとめ、これまでに明かされなかった秘話などを披露してくれる。
ノーベル賞関連の新書や選書は数多く出ているが、この本のウリはここだろう。湯川秀樹が日本人として初受賞する前の、日本人候補(北里柴三郎、野口英世、鈴木梅太郎など)についての話を知りたい方は、とくに本書をオススメする。
本のつくりは「日本人とノーベル賞」「ノーベル賞創設の歴史」「各ジャンル(物理学や医学、分子生物学)のおもな出来事」の三本柱。中でも湯川秀樹博士の日本人初受賞より前の、日本人とノーベル賞の関わりぶりが充実している。
ノーベル財団が所蔵する資料(推薦者による受賞者の推薦文や、選定者による候補者についての報告書など)は、受賞後50年経って初めて公開となる。しかも閲覧できる人はごく限られており、日本人でその権利をもつのは、科学史が専門の東京大学・岡本拓司講師のみなのだ。
そこで著者は、岡本氏の報告論文の読み込みや岡本氏本人への取材などを綿密に行い、それをわかりやすく本の中でまとめ、これまでに明かされなかった秘話などを披露してくれる。
ノーベル賞関連の新書や選書は数多く出ているが、この本のウリはここだろう。湯川秀樹が日本人として初受賞する前の、日本人候補(北里柴三郎、野口英世、鈴木梅太郎など)についての話を知りたい方は、とくに本書をオススメする。
2005年5月12日に日本でレビュー済み
これは自然科学分野での代表的なノーベル賞について概観した本であるが、本文で著者も述べている通り、ノーベル賞の歴史はまさに20世紀の科学の歴史でもあり、科学史としても読める本である。ノーベル賞の発見に至る経緯などもそれなりに書かれており、大変に勉強になる。日本人は科学に疎くなったとよく新聞で報道されるようになったが、科学に弱いと思う人は本書を読まれると良いだろう。大変わかりやすく読みやすい本でもある。
2002年6月18日に日本でレビュー済み
今、最も新しいノーベル賞の本であると思う(2002年3月現在)。
したがって、ノーベル賞に関する最新情報が書いてあるのでとても興味深い。
日本人科学者の業績についても述べてあるのだが、私たちが普段知らないところで、
日本人もかなり進んだ研究をしており、今後ノーベル賞の日本人受賞者がどんどん
増加してくるのではないかと期待してしまう。
最新情報ばかりでなく、ノーベル賞に最も近付きながら逃した日本人のことなど、
歴史についても触れてある。
ただ、タイトルを見てそう思いがちだが、ノーベル賞の歴史について詳しく書いて
あるというわけではない。
ノーベル賞の歴代受賞者から抜粋して、その傾向を分析するという内容であるという
印象をうけた。
したがって、ノーベル賞に関する最新情報が書いてあるのでとても興味深い。
日本人科学者の業績についても述べてあるのだが、私たちが普段知らないところで、
日本人もかなり進んだ研究をしており、今後ノーベル賞の日本人受賞者がどんどん
増加してくるのではないかと期待してしまう。
最新情報ばかりでなく、ノーベル賞に最も近付きながら逃した日本人のことなど、
歴史についても触れてある。
ただ、タイトルを見てそう思いがちだが、ノーベル賞の歴史について詳しく書いて
あるというわけではない。
ノーベル賞の歴代受賞者から抜粋して、その傾向を分析するという内容であるという
印象をうけた。
2005年2月12日に日本でレビュー済み
本書は、実に見事に20世紀という100年間の科学の歩みを「ノーベル賞」という観点から描いている。
また、科学の歩みだけでなく、その時代背景を踏まえた論説にもなっているので、ノーベル賞という賞自体を考える意味においても、実に興味深いものとなっている。
しかし、この本を読むとよく分かるのだが、20世紀と言う100年間は科学が爆発的に発達した時代だった。
これから100年間の21世紀では、どのような分野で多くのノーベル賞受賞者が輩出されるのだろうか?
読者の興味を次の100年間の未来へと結びつけてくれる本である。
また、科学の歩みだけでなく、その時代背景を踏まえた論説にもなっているので、ノーベル賞という賞自体を考える意味においても、実に興味深いものとなっている。
しかし、この本を読むとよく分かるのだが、20世紀と言う100年間は科学が爆発的に発達した時代だった。
これから100年間の21世紀では、どのような分野で多くのノーベル賞受賞者が輩出されるのだろうか?
読者の興味を次の100年間の未来へと結びつけてくれる本である。