アメリカにおける判例に関しての流れの解説は評価できるが、ミーガン法の実態などを鑑みるなどすれば作者の主張はかなり偏っていると言える。
少しだけ具体例を挙げてみても、作者は行政罰であるのだから日本でもできるだろうとしているが、これだけ効果が強くまた他人を縛りつけるには制約が強いものであることを考えれば、普通は行政罰の範囲を超えている(行政罰はあくまで刑事罰にまでならないように罰を軽くすることで、二重処罰ではないという風に解釈しているから)と判断されるだろう。
が、作者はここの面だけではなく、他の部分でも実態を見ていないのでは?とみられる部分が多く、事実として就業制限や住所制限、周囲からの嫌がらせなどの実態を把握しているだろうにもかかわらず、そういったところにあまり注視していないような見解が目立つ。
誓約書さえ書かせたりすればいいだろうなどと机上の空論を述べているものが目立ち、はっきり言って役に立たない。
また、再犯率に関しても話はうやむやになるだろうとしていながらも、再犯率が高い可能性があるだろうという憶測で再犯率を根拠にしようとしていることや、他の犯罪にて同様の疑問を持たないという統計比較の方法としてはあるまじきことをやっている。
普通は統計が使い物にならないのなら使えないと判断すべきであり、その数字自体は根拠にしてはいけないのである。
最初から予断と偏見、知識不足で構成されているので、結論ありきというべき論理が出てくるのでお話にならない。
私見ではあるが、作者及び米最高裁判所の判断などといったところで、性犯罪においてどう見ても奇妙な事実が目の前にあっても、急に判断が狂うことのほうが個人的には研究対象としてみたいところである。
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性犯罪者から子どもを守る: メーガン法の可能性 (中公新書 1888) 新書 – 2007/3/1
松井 茂記
(著)
子どもに対する事件が跡を絶たない。特に性犯罪の前歴がある人間による同様の犯罪を防げなかったことは、社会に大きな衝撃を与えた。アメリカではすでに、メーガン法と呼ばれる、児童に対する性犯罪者の登録・公表制度が導入されている。日本でも近年その存在が注目されるようになったが、政府は導入に消極的だ。メーガン法は子どもを守る手段となるのか。その制度と功罪、合憲性について検討する。
- 本の長さ265ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2007/3/1
- ISBN-104121018885
- ISBN-13978-4121018885
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2007/3/1)
- 発売日 : 2007/3/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 265ページ
- ISBN-10 : 4121018885
- ISBN-13 : 978-4121018885
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,115,853位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
確かに他の方指摘のようにメーガン法に対する反対意見のほうが
説得力を持ってしまっているような印象を受けました。
文章は非常に読みやすく、また法律なんてわかんない~
という人にも読みやすい、やさしい内容になっていると思います。
またメーガン法について書かれている本がまだ少ないので
読んでみてもいいかもしれません。
説得力を持ってしまっているような印象を受けました。
文章は非常に読みやすく、また法律なんてわかんない~
という人にも読みやすい、やさしい内容になっていると思います。
またメーガン法について書かれている本がまだ少ないので
読んでみてもいいかもしれません。
2007年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アメリカでは、子どもに対する性犯罪者に対して、出所後も警察に住所・氏名・職場などを登録させ、更にその情報を公衆に告知・公表するという制度があるが、これが一般に「「メーガン法」と呼ばれているものだ。
アメリカの各州で定められているようなメーガン法に対して日本政府はその導入に消極的であるが、本書は子どもに対する性犯罪が日本でも相次いで行われている中で、子供を性犯罪者から守るという観点から、メーガン法の日本での導入を検討する、という趣旨のもの。
メーガン法は子どもを性犯罪者から守ることができるという利益ばかりでなく、性犯罪者の社会復帰を絶望的にさせるという、性犯罪者にとっての不利益もある(例えば、性犯罪者だと公表されているものが住居・雇用等を簡単に見つけることができるであろうか)。
このような、メーガン法の利点・問題点の両方を、すでにメーガン法が制定されているアメリカの場合をベースにしながら、日本での導入可能性・必要性について検討する。
文章の書き方に少し問題があるというか少々読んでいてダルい部分があって、もう少しうまく整理できたのではないなかなあと思うが、メーガン法の長所・短所をわかりやすく知ることができるという点において、良い本であると思う。
アメリカの各州で定められているようなメーガン法に対して日本政府はその導入に消極的であるが、本書は子どもに対する性犯罪が日本でも相次いで行われている中で、子供を性犯罪者から守るという観点から、メーガン法の日本での導入を検討する、という趣旨のもの。
メーガン法は子どもを性犯罪者から守ることができるという利益ばかりでなく、性犯罪者の社会復帰を絶望的にさせるという、性犯罪者にとっての不利益もある(例えば、性犯罪者だと公表されているものが住居・雇用等を簡単に見つけることができるであろうか)。
このような、メーガン法の利点・問題点の両方を、すでにメーガン法が制定されているアメリカの場合をベースにしながら、日本での導入可能性・必要性について検討する。
文章の書き方に少し問題があるというか少々読んでいてダルい部分があって、もう少しうまく整理できたのではないなかなあと思うが、メーガン法の長所・短所をわかりやすく知ることができるという点において、良い本であると思う。
2017年1月11日に日本でレビュー済み
犯行の蔓延を前提に議論や法整備が進められるのは仕方ないが、予防(教育)についての言及が余りに蔑ろで辛い。
2007年4月10日に日本でレビュー済み
本書は、アメリカ合衆国で施行されている、
性犯罪者を取り締まる刑事特別法=メーガン法を、
日本においても導入することを主張する書物です。
かかるメーガン法立法の背景と、その内容、
そしてかなりハードな同法を巡るアメリカでの喧々諤々の議論が紹介された後、
同法が我が国で導入される際の問題点が検討されていきます。
まず、メーガン法の妥当性を、
アメリカ合衆国憲法や日本国憲法等と照らして検討する過程は、
法学学習者などにとって興味深く読めると思います。
とはいっても、著者は同法導入推進の旗幟を鮮明にしておられ、
比較考量の天秤の一方には、児童を性犯罪から守るという、
正当かつ反論不可能な法益がドーンと置かれてしまうので、
きめ細かな考察が欠けているように感じられました。
現に一応数多く取り上げられている同法への反対意見も、
かなりの説得力を有しているように思えました。
次に、暗数を加味しても犯罪件数に歴然とした差があり、
また犯罪者の処遇を巡る政策、法文化、
ひいてはコミュニティの内実にも相違点の多いアメリカにおける同法を、
我が国における性犯罪対策として安易に取り込むことには、
慎重な対応が望まれると思います。
もちろん一件一件の事件を重く受け止めることは当然ですが、
昨今我が国の至るところで、住民が自主的に児童の通学路を見守るような、
ソフトな対策が採られ始めています。
そのような、現行制度やコミュニティによる「太陽政策」の効用も定かでないうちに、
「劇薬」を投与するのは余りにも性急、かつ法律の効果を過信しているように思えます。
性犯罪者を取り締まる刑事特別法=メーガン法を、
日本においても導入することを主張する書物です。
かかるメーガン法立法の背景と、その内容、
そしてかなりハードな同法を巡るアメリカでの喧々諤々の議論が紹介された後、
同法が我が国で導入される際の問題点が検討されていきます。
まず、メーガン法の妥当性を、
アメリカ合衆国憲法や日本国憲法等と照らして検討する過程は、
法学学習者などにとって興味深く読めると思います。
とはいっても、著者は同法導入推進の旗幟を鮮明にしておられ、
比較考量の天秤の一方には、児童を性犯罪から守るという、
正当かつ反論不可能な法益がドーンと置かれてしまうので、
きめ細かな考察が欠けているように感じられました。
現に一応数多く取り上げられている同法への反対意見も、
かなりの説得力を有しているように思えました。
次に、暗数を加味しても犯罪件数に歴然とした差があり、
また犯罪者の処遇を巡る政策、法文化、
ひいてはコミュニティの内実にも相違点の多いアメリカにおける同法を、
我が国における性犯罪対策として安易に取り込むことには、
慎重な対応が望まれると思います。
もちろん一件一件の事件を重く受け止めることは当然ですが、
昨今我が国の至るところで、住民が自主的に児童の通学路を見守るような、
ソフトな対策が採られ始めています。
そのような、現行制度やコミュニティによる「太陽政策」の効用も定かでないうちに、
「劇薬」を投与するのは余りにも性急、かつ法律の効果を過信しているように思えます。