著者は詩人であり、中国文学の専門家ではないが、それがかえってこの本が初心者にもわかりやすい漢詩入門書になっている所以ではなかろうか。例えば、著者独自の見解を述べたであろう以下のような記述は漢詩初心者にとっては大枠を理解する上で大変有難い。「東晋は百年余つづくが、この間、とくに前半目立つ詩人は無きに等しいが、後半になって唐以前最大の偉才が登場した。陶潜、字は淵明。」「陶淵明がいなければ後世、唐の杜甫も、宋の蘇軾も、下って清の袁枚も出なかったろう。」「唐帝国三百年の最も卓れた詩才を挙げれば、衆目の一致するところ盛唐の李白と杜甫。これに次ぐのが中唐の韓愈と白居易。」「韋応物は、先立つ王維、孟浩然、つづく柳宗元と並べて後世、王孟韋柳と称せられ、卓れた自然詩人を謳われる。」「宋代三百年間、名の知られる詩人は六千八百人以上。唐三百年間の詩人を網羅したといわれる『全唐詩』の二千二百人余の三倍強。まさに詩人の時代だが、第一人者は誰かとなれば衆目の一致するところ、蘇軾だろう。」
また要所要所に中国王朝史が詳しく述べられており、時代背景の理解に一役買っているが、これも著者ならではの初心者への気遣いであろう。例を挙げれば、「後漢が亡びて中国全土が分裂、隋が興って全国を統一するまでの370年間を一まとめに魏晋南北朝と呼ぶ。南朝に限っても魏、西晋、東晋、宋、斉、梁、陳、王朝がめまぐるしく変わった政情不安な乱世で、」「唐朝ほぼ三百年を四つに分け、初唐・盛唐・中唐・晩唐とする。このうち盛唐は中宗が韋后に毒殺された710年から代宗即位三年目の765年までの56年間。中に玄宗の治世44年を含み、政治・経済・文化の最盛期であるとともに、後半は安史の乱により凋落の兆しの見えはじめた時代でもある。」
もちろん書き下し文とその説明文も詩人らしいルビ遣いが心憎いほど流麗で他書に類を見ない出来栄えであるので、初心者だけでなく漢詩上級者も学ぶべきことが多い良書であろう。
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漢詩百首: 日本語を豊かに (中公新書 1891) 新書 – 2007/3/1
高橋 睦郎
(著)
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返り点と送り仮名の発明によって、日本人は、ほんらい外国の詩である漢詩を自らのものとした。その結果、それを鑑賞するにとどまらず、作詩にも通暁する人物が輩出した。本書は、中国人六〇人、日本人四〇人の、古代から現代に及ぶ代表的な漢詩を精選し、詩人独自の読みを附すとともに、詩句の由来や作者の経歴、時代背景などを紹介。外国文化を自家薬籠中のものとした、世界でも稀有な実例を、愉しみとともに通読する。
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2007/3/1
- ISBN-104121018915
- ISBN-13978-4121018915
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2007/3/1)
- 発売日 : 2007/3/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 248ページ
- ISBN-10 : 4121018915
- ISBN-13 : 978-4121018915
- Amazon 売れ筋ランキング: - 146,020位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2019年2月3日に日本でレビュー済み
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2010年2月28日に日本でレビュー済み
1つの詩が見開き1ページと限られるため、詩全体が紹介されていないのが少し残念。
あと、日本人の漢詩はやはりちょっと感じが違う。中国人の漢詩にはない湿りけが感じられる。
あと、日本人の漢詩はやはりちょっと感じが違う。中国人の漢詩にはない湿りけが感じられる。
2019年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
漢詩全文の紹介というより名フレーズを部分的に切り取って、漢詩に親しんでもらおう
という趣旨の本です。中国の詩60首と日本の漢詩40首。ポピュラーな詩をあえて選ばず、
ちょっと外して、光る部分を紹介されているあたり心憎い感じさえします。
詩人らしい感性が伝わる、味わいのある本だと思います。
という趣旨の本です。中国の詩60首と日本の漢詩40首。ポピュラーな詩をあえて選ばず、
ちょっと外して、光る部分を紹介されているあたり心憎い感じさえします。
詩人らしい感性が伝わる、味わいのある本だと思います。
2020年7月27日に日本でレビュー済み
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気に入りました。中国漢詩が日本語を豊かにしていることがわかりました。
2024年5月1日に日本でレビュー済み
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原文も載せておらず、また解説も作品より作者の履歴中心、選択したものも不遇の愁に偏っている
2014年7月3日に日本でレビュー済み
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いまさら漢詩なんて…という人がいるだろうが、読めば日本語の表現力も上がりますよ。いい本ですよ。
2014年7月21日に日本でレビュー済み
本書に添えられた「対談」の中で学習院大学教授鈴木健一氏も述べていることだが、この本の大きな魅力は高橋睦郎氏の訳文にあるのではあるまいか。どちらかと云うと堅苦しく感じられることの多い漢詩が、ルビを活用したお洒落で分かりやすい訳文によって、とても身近なものに感じられる。例えば韓愈(768-824)の『履霜操(りそうそう)』、
父兮(ちちよ) 児(われ)寒(こご)えたり、母兮(ははよ) 児(われ)飢(う)えたり。児(われ)罪(あし)くば当(まさ)に笞(むちう)て、児(われ)を逐(お)うて何(なに)をかなす。児(われ) 中野(ちゅうや)に在(あ)り、以(もっ)て宿(やど)り以(もっ)て処(お)る。四(よも)に人声(ひとこえ)無(な)し、誰(たれ)か児(われ)と語(かた)る。
の訳は
お父さん 児(あたい)は寒い。お母さん 児(あたい)は飢(ひも)じい。児が罪(わるいこと)をしたのなら、当(どう)ぞ笞(ぶ)って。児を逐(おいだ)して 何為(どうしよう)っていうの? 児は野っぱらのまん中に 宿(よをあか)し以(そし)て処(ひをおく)る。四方(まわり)に人声(ひとのこえ)はなく 児と話(はなしてくれ)るひとは誰もいない。
となる。また一休宗純(1394-1481)の『養叟和尚に寄す』、
菴(いおり)に住むこと十日(とおか)にして意(こころ)忙忙(ぼうぼう)、脚下(きゃっか)の紅糸線(こうしせん)甚(ななは)だ長し。他日(たじつ)君(きみ)来(きた)り如(も)し我を問わば、魚行(ぎょこう) 酒肆(しゅし) 又(また) 婬房(いんぼう)。
は
ここの菴(いおり)に住みたった十日で意(こころ)は忙忙(おちつかぬ)、わが脚下(あしもと)の紅(ぼんのう)の糸線(いとすじ)は甚(ひど)く長いのでな。他日(いつか)君(あんた)が来て如(も)し我(わし)のことをお問(さが)しなら、魚行(くいものや) 酒肆(のみや) 又(でなきゃ) 婬房(じょろや)さ。
となる。
井伏鱒二の『厄除け詩集』、佐藤春夫の『車塵集』ほどではないが、かなり思い切った訳文で楽しい。私のような素人にはとても難解な漢詩を、高橋氏がどう砕いて訳してくれているかを楽しみに、一日一首か二首読み進むうち、漢詩の魅力と日本語の美しさに改めて目を開かされている、そんな一冊だ。
なお本書は、副題に「日本語を豊かに」とあるように、「日本語が見る見る痩せて貧しくなっていく(p.245)」現状を憂えて書かれた書でもある。本編以外の「はじめに」「対談 漢詩は日本語の財産」「漢詩への感謝」「おわりに」で述べられていることは、とても重い。漢詩に興味のない方にも、この部分だけは(立ち読みでも結構ですから)是非読んでいただきたいと思う。
父兮(ちちよ) 児(われ)寒(こご)えたり、母兮(ははよ) 児(われ)飢(う)えたり。児(われ)罪(あし)くば当(まさ)に笞(むちう)て、児(われ)を逐(お)うて何(なに)をかなす。児(われ) 中野(ちゅうや)に在(あ)り、以(もっ)て宿(やど)り以(もっ)て処(お)る。四(よも)に人声(ひとこえ)無(な)し、誰(たれ)か児(われ)と語(かた)る。
の訳は
お父さん 児(あたい)は寒い。お母さん 児(あたい)は飢(ひも)じい。児が罪(わるいこと)をしたのなら、当(どう)ぞ笞(ぶ)って。児を逐(おいだ)して 何為(どうしよう)っていうの? 児は野っぱらのまん中に 宿(よをあか)し以(そし)て処(ひをおく)る。四方(まわり)に人声(ひとのこえ)はなく 児と話(はなしてくれ)るひとは誰もいない。
となる。また一休宗純(1394-1481)の『養叟和尚に寄す』、
菴(いおり)に住むこと十日(とおか)にして意(こころ)忙忙(ぼうぼう)、脚下(きゃっか)の紅糸線(こうしせん)甚(ななは)だ長し。他日(たじつ)君(きみ)来(きた)り如(も)し我を問わば、魚行(ぎょこう) 酒肆(しゅし) 又(また) 婬房(いんぼう)。
は
ここの菴(いおり)に住みたった十日で意(こころ)は忙忙(おちつかぬ)、わが脚下(あしもと)の紅(ぼんのう)の糸線(いとすじ)は甚(ひど)く長いのでな。他日(いつか)君(あんた)が来て如(も)し我(わし)のことをお問(さが)しなら、魚行(くいものや) 酒肆(のみや) 又(でなきゃ) 婬房(じょろや)さ。
となる。
井伏鱒二の『厄除け詩集』、佐藤春夫の『車塵集』ほどではないが、かなり思い切った訳文で楽しい。私のような素人にはとても難解な漢詩を、高橋氏がどう砕いて訳してくれているかを楽しみに、一日一首か二首読み進むうち、漢詩の魅力と日本語の美しさに改めて目を開かされている、そんな一冊だ。
なお本書は、副題に「日本語を豊かに」とあるように、「日本語が見る見る痩せて貧しくなっていく(p.245)」現状を憂えて書かれた書でもある。本編以外の「はじめに」「対談 漢詩は日本語の財産」「漢詩への感謝」「おわりに」で述べられていることは、とても重い。漢詩に興味のない方にも、この部分だけは(立ち読みでも結構ですから)是非読んでいただきたいと思う。
2007年4月13日に日本でレビュー済み
著者の高橋睦郎は非定型詩、俳句、短歌、さらに舞台芸術の脚本執筆と
同世代の寺山修司にも劣らない多彩な活躍を誇る詩人であるが、
近年では日本古典を国文学的堅苦しさに捉われない自由奔放な視点から
再評価する試みを続けており、本書はその最新の成果というべきものである。
日本古典教育が無味乾燥な文法に終始しているのと同様、漢文教育も
返り点などのテクニックな観点に捉われすぎているのを嘲笑うかのように
孔子から毛沢東(!)に至るまでの中国の漢詩はもちろんのこと、
(中村真一郎の著作などを除けば)一般的には殆ど知られていない
日本の漢詩も菅原道真、一休禅師、頼山陽、正岡子規とビッグネームが
紹介されており、「文学好き」の漢詩入門には最適である。
同世代の寺山修司にも劣らない多彩な活躍を誇る詩人であるが、
近年では日本古典を国文学的堅苦しさに捉われない自由奔放な視点から
再評価する試みを続けており、本書はその最新の成果というべきものである。
日本古典教育が無味乾燥な文法に終始しているのと同様、漢文教育も
返り点などのテクニックな観点に捉われすぎているのを嘲笑うかのように
孔子から毛沢東(!)に至るまでの中国の漢詩はもちろんのこと、
(中村真一郎の著作などを除けば)一般的には殆ど知られていない
日本の漢詩も菅原道真、一休禅師、頼山陽、正岡子規とビッグネームが
紹介されており、「文学好き」の漢詩入門には最適である。