アメリカがヘゲモニー(覇権)を維持し、世界秩序形成に取り組む過程で「戦争」をどのように位置付けて来たのかを検討した本。朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、コソボ紛争、イラク戦争に関して、関係者の証言を交えて検証している。また、冷戦終了後、「帝国」となったアメリカが対中国・EUに対してヘゲモニーを維持する姿勢も描いている。イラク戦争に対するEUとアメリカとの温度差にも触れている。だが、全体的に既知の事象を羅列しているだけで新鮮味に欠ける。著者が戦争を否定していない点にも疑問符が付く。
作中で、ベトナム戦争の失敗により、アメリカの知識人の間にも「アメリカが例外の国であった時代は終った」との認識が広まった事が書かれているが、これが逆にアメリカの覇権主義を象徴していると思う。著者はこの覇権主義(選民思想)の出発点を独立戦争に求めているが、原住民であるインディアンを追い払った時点で既に始まっていると思う。煎じ詰めれば、アメリカの論理は「自分が正義と思う事は武力を使っても押し通す」である。これを戦略と呼ぶのだろうか ? また、このアメリカの覇権主義に対して日本はどう対峙すべきか論じられていない点に不満が残る。そして、最後に述べられる筈だった今後のアメリカの戦略の記述がウヤムヤなのも大きな瑕疵。
頁数が少ないので駆け足になったのは仕方がないが、著者の分析をもっと掘り下げて斬新な意見を聞かせて欲しかった。
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アメリカの世界戦略: 戦争はどう利用されるのか (中公新書 1937) 新書 – 2008/3/1
菅 英輝
(著)
- ISBN-104121019377
- ISBN-13978-4121019370
- 出版社中央公論新社
- 発売日2008/3/1
- 言語日本語
- 本の長さ238ページ
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2008/3/1)
- 発売日 : 2008/3/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 238ページ
- ISBN-10 : 4121019377
- ISBN-13 : 978-4121019370
- Amazon 売れ筋ランキング: - 531,857位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 2,167位中公新書
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年10月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本は大変面白うい本です。アメリカという国がよくhわかります。
2009年8月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まず本書は、ヘゲモニー、デタント、ガバナンスといった語句の意味がスラスラと理解でき、アメリカや国際問題の歴史や知識が蓄積されている人でないと、ほとんど理解できないと思います。
文章自体は平易ですが、文章構成や語句の言い回しが学者特有の論文形式のためにとてもわかりづらく、一般人向けではないと思います。新書ですが中身は100%研究論文です。頁数の少ない新書なのに末尾に掲載された引用文献先がものすごい量です。
本書はあちこちの文献や資料を引用し、それを整理し列挙しているだけの内容でしたので、私は読書中、筆者がいったい何を強く訴えたいのかほとんどわかりませんでした。湾岸戦争、イラク戦争を主導したウォルフォウッツらネオコン達に関しても、新聞を読んでいる人なら誰でも知っているようなまとめ方でした。
本書には、「アメリカ世界戦略の研究」、または「アメリカ世界戦略の一考察」といった題名が妥当だと思います。新書としては星一つです。
文章自体は平易ですが、文章構成や語句の言い回しが学者特有の論文形式のためにとてもわかりづらく、一般人向けではないと思います。新書ですが中身は100%研究論文です。頁数の少ない新書なのに末尾に掲載された引用文献先がものすごい量です。
本書はあちこちの文献や資料を引用し、それを整理し列挙しているだけの内容でしたので、私は読書中、筆者がいったい何を強く訴えたいのかほとんどわかりませんでした。湾岸戦争、イラク戦争を主導したウォルフォウッツらネオコン達に関しても、新聞を読んでいる人なら誰でも知っているようなまとめ方でした。
本書には、「アメリカ世界戦略の研究」、または「アメリカ世界戦略の一考察」といった題名が妥当だと思います。新書としては星一つです。
2011年7月2日に日本でレビュー済み
朝鮮戦争以来の歴代政権を見ながらなぜアメリカはしばしば武力で問題を解決しようとするのか解明する。しかし結論としては単純である。その時々で理由は違うが最終的にはアメリカはほとんど確実に武力に訴えると言うことである。このロジックはリベラル派の大統領でも逃れることはできない。
例えばジョンソンは国内の差別をなくすと言う目標を持ち、それはある程度達成できたがそのための手段である政権維持にはベトナムの介入が必要であった。これは朝鮮戦争で確立した資本主義対共産主義という命題にジョンソンが拘束されたせいだと著者は分析する。
また協調外交に努めたクリントンも2期目にはユーゴ扮装を介入せざるを得なくなった。これはヨーロッパの問題をEU内で解決できなかったせいである。この限りにおいて覇権安定論は一定の説得力を持っていたと言える。
そして財界の意向も忘れてはならない。アメリカの企業は日本、中国、EU、中東諸国と言ったアメリカの経済支配を脅かす存在には自国を操ってでも攻撃する。国内でたびたび反戦運動が起きることを考えるとアメリカの介入を最も望んでいるのは彼ら大企業集団かもしれない。
例えばジョンソンは国内の差別をなくすと言う目標を持ち、それはある程度達成できたがそのための手段である政権維持にはベトナムの介入が必要であった。これは朝鮮戦争で確立した資本主義対共産主義という命題にジョンソンが拘束されたせいだと著者は分析する。
また協調外交に努めたクリントンも2期目にはユーゴ扮装を介入せざるを得なくなった。これはヨーロッパの問題をEU内で解決できなかったせいである。この限りにおいて覇権安定論は一定の説得力を持っていたと言える。
そして財界の意向も忘れてはならない。アメリカの企業は日本、中国、EU、中東諸国と言ったアメリカの経済支配を脅かす存在には自国を操ってでも攻撃する。国内でたびたび反戦運動が起きることを考えるとアメリカの介入を最も望んでいるのは彼ら大企業集団かもしれない。
2008年7月10日に日本でレビュー済み
アメリカの世界戦略については、日々、報道等を通じてそれなりに理解しているものと思い、本書に対しても、当初は、タイトル等から判断して、「平凡な内容のものかな?」、「買うほどのものかな?」と思いつつ手に取りました。しかしながら、本書は完成度が高く、エッセンスがぎゅっと凝縮しておりました。購入して腰を据えて読んでみた感想は、「大変勉強になりました」の一言に尽きます。
本書では、およそ第二次世界大戦後から現在までの流れの中において、朝鮮戦争、ベトナム戦争、冷戦、イラク戦争等の「戦争」の位置づけにポイントを置きつつ、アメリカのアジア、ソ連、欧州との外交方針等の変遷を解説しています。「わかりやすさ」に相当配慮されているようで、例えば、原因、背景等の説明に際しては、「第一に、・・・第二に、・・・」等の項目立てをすることを徹底しており、また、文体も簡潔・明瞭で、中味が濃いものとなっています。
さらに、過去だけでなく、最近の情勢に関しても、熱戦の続く大統領選や混迷を極めるイラク情勢などに言及しており、これらの展望を理解する上で不可欠な視座が示されていると思います。
とてもお手頃ではないでしょうか。
本書では、およそ第二次世界大戦後から現在までの流れの中において、朝鮮戦争、ベトナム戦争、冷戦、イラク戦争等の「戦争」の位置づけにポイントを置きつつ、アメリカのアジア、ソ連、欧州との外交方針等の変遷を解説しています。「わかりやすさ」に相当配慮されているようで、例えば、原因、背景等の説明に際しては、「第一に、・・・第二に、・・・」等の項目立てをすることを徹底しており、また、文体も簡潔・明瞭で、中味が濃いものとなっています。
さらに、過去だけでなく、最近の情勢に関しても、熱戦の続く大統領選や混迷を極めるイラク情勢などに言及しており、これらの展望を理解する上で不可欠な視座が示されていると思います。
とてもお手頃ではないでしょうか。