チョコレートの歴史文化を纏めた著作の中でも、取り分け本書の大きな特色となっているのは「庶民のチョコレート」に重点を置いている所だ。
嘗て、カカオは高値で取引された最高級品であり、そこから生まれたココアは王侯貴族達の飲み物でもあった…だが、現代では至る所で、然も安値で気軽にチョコレートを食する事が出来る。
長い歴史を経て庶民にも身近になったチョコレート…本書と共にその歴史を覗いてみよう。
さて、本書は先ず、その長い歴史を辿る所から始まる。
カカオの発見は古代にまで遡り、そして一概にカカオ豆と言ってもその種類に依って味わいも風味も変わり、然もそれ等は砂糖と出逢ってこそ苦味や酸味が活かされる。
因みに当初のチョコレートは飲み物であり、薬でもあった…即ち、それが現在の固形のチョコレートとして誕生するまでにはかなりの時間を要する訳だが、本書はその経緯を非常に丁寧に解説しているので、チョコレートの歴史を良く理解出来たように思う。
そして、ここまでだけでもかなりの読み応えがあるのだが、やはり最も面白いのは冒頭にも述べたように「庶民のチョコレート」に焦点を絞った後半だ。
著者の指摘する通り、チョコレートは工房で職人が作る高級チョコレートとスーパー等でも気軽に手に入る既製品の二種類があり、本書が語るのは後者…然も、日本でもお馴染みの「キットカット」の誕生秘話が中心なので興味が尽きる事はなかった。
尚、キットカットは余りにもワールド・ワイドの商品になった所為でお忘れの方も多いと思うが、言う迄もなくイギリス生まれ…そこで本書は先ず、イギリスのココア文化や生産者について多角的に論じ、続いてチョコレート工場の誕生と発展へと話を繋げて行く。
そして購買層の絞込みや広告を豊富な図版と共に紹介しながら、そのマーケットの広がりについても解説…因みに、キットカットと言えば「have a break」賭してもお馴染みだが、実はこの一言が生まれるまでにも試行錯誤があった事が窺われ、一つの商品のマーケットが拡大するまでの努力と苦労、アイデアがここに凝縮されているようにも思えた。
また、戦争下に於けるパッケージの工夫と需要の変化、そして戦後に更なる拡大と変化を遂げるマーケット…尚、日本でも戦時中はカカオ豆の輸入が止まる中、有り合わせの材料で軍用チョコレートが開発されたと言うのだから、チョコレートが現在のような“おやつ”ではなく、栄養価の高い代用食と看做されていた歴史も振り返る事が出来るだろう。
その他、ロウントリー社の工場で働く女性達の素顔と恵まれた労働環境からは古き良き時代が偲ばれるし、アメリカに売り込みを掛ける上では価値観の違い等も検討された事を読むにつけ、嘗ての日本は「男性=甘いものを好まない」という所謂「こうあるべき」と言う決め付けがあった事も併せて色々と考えさせられた次第である。
そして、これだけ多くの話題を詰め込んでいるにも拘らず、非常に整然と解り易く纏められており、これも全て全体の構成が巧みだからであろう…実に優れた一冊であった。
皆様も、本書を読みながらhave a break!
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チョコレ-トの世界史: 近代ヨ-ロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書 2088) 新書 – 2010/12/20
武田 尚子
(著)
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- ISBN-10412102088X
- ISBN-13978-4121020888
- 出版社中央公論新社
- 発売日2010/12/20
- 言語日本語
- 寸法11 x 1.2 x 17.5 cm
- 本の長さ225ページ
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- 発売日 : 2010/12/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 225ページ
- ISBN-10 : 412102088X
- ISBN-13 : 978-4121020888
- 寸法 : 11 x 1.2 x 17.5 cm
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- - 126位中公新書
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上位レビュー、対象国: 日本
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2011年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
各章要約です(主観入ってます)
■第一章:カカオ・ロードの拡大
チョコレートの原料であるカカオの役割『神々への供物』『貨幣』『栄養効果』について、簡単な事例とともに紹介。
『貨幣』としては、17世紀の大西洋三角貿易で砂糖と並び、中米アメリカの主要交易品であった。
■第二章:すてきな飲み物ココア
17世紀半ばから、薬としてココアをたしなむ宮廷女性がフランスで増加。オランダでは、カカオマスから抽出した
ココアバターを皮膚薬として、植民地・軍船に常備。食品としての価値は、カトリック諸国とは異なる経済・社会環境の
北西ヨーロッパで上昇した。
■第三章:チョコレートの誕生
17世紀半ばにイギリスでコーヒーハウスが誕生。社会的関心の高い層の情報交換の場として栄える。19世紀後半の関税
引き下げにより、砂糖価格が下落。様々なココアの開発が進む。
■第四章:イギリスのココア・ネットワーク
禁欲的特性を持つクエーカーが、チョコレート産業ブルジョワの一角を形成。また、19世紀末には、一般家庭にもココアを
入手しやすくなったこ とから、かつての王侯貴族が飲む高価なイメージが稀薄し、コンセプトも大衆寄りに変化した。
■第五章:理想のチョコレート工場
ロウントリー社の運営方法を紹介。女性の離職者を減らすため、各々の特性に合う女性作業員の配置や、社会的活動の
積極的な支援を行った。この背景には、クエーカーの「ビジネス」+「社会のために尽くす」精神が表れている。
■第六章:戦争とチョコレート
工場労働者のエネルギー補給源として、高カロリーで血糖値をあげることができ、かつ手軽に摂取できるチョコレートが
アルコールに取って代わる。また、探検隊や軍隊の携行品としてもチョコレートは大活躍した。
■第七章:チョコレートのグローバル・マーケット
戦後、経済の復興に伴う消費支出の拡大とともに、チョコレート・コーティング菓子の消費量も増加。また、チョコレートの
製造は、グローバルな市場を見据えた再編による大企業企業と、クラフトマン工房を維持する企業とに二分されることとなる。
■終章:スイーツと社会
各々の企業・工房が自社商品の希少性をアピールする時代に。フェアトレードにより、消費者の生産地の労働環境に対する関心も向上。
チョコレート(カカオ)の歴史を辿りつつ、ヨーロッパ経済の歴史も辿ることができます。
チョコレートの知識+経済の知識(欧州:中世から近代まで)をつけたい方は是非。
ビジネスの観点でみると、「キットカットのマーケティングの歴史」は大変興味深く、また参考になりましたね。
■第一章:カカオ・ロードの拡大
チョコレートの原料であるカカオの役割『神々への供物』『貨幣』『栄養効果』について、簡単な事例とともに紹介。
『貨幣』としては、17世紀の大西洋三角貿易で砂糖と並び、中米アメリカの主要交易品であった。
■第二章:すてきな飲み物ココア
17世紀半ばから、薬としてココアをたしなむ宮廷女性がフランスで増加。オランダでは、カカオマスから抽出した
ココアバターを皮膚薬として、植民地・軍船に常備。食品としての価値は、カトリック諸国とは異なる経済・社会環境の
北西ヨーロッパで上昇した。
■第三章:チョコレートの誕生
17世紀半ばにイギリスでコーヒーハウスが誕生。社会的関心の高い層の情報交換の場として栄える。19世紀後半の関税
引き下げにより、砂糖価格が下落。様々なココアの開発が進む。
■第四章:イギリスのココア・ネットワーク
禁欲的特性を持つクエーカーが、チョコレート産業ブルジョワの一角を形成。また、19世紀末には、一般家庭にもココアを
入手しやすくなったこ とから、かつての王侯貴族が飲む高価なイメージが稀薄し、コンセプトも大衆寄りに変化した。
■第五章:理想のチョコレート工場
ロウントリー社の運営方法を紹介。女性の離職者を減らすため、各々の特性に合う女性作業員の配置や、社会的活動の
積極的な支援を行った。この背景には、クエーカーの「ビジネス」+「社会のために尽くす」精神が表れている。
■第六章:戦争とチョコレート
工場労働者のエネルギー補給源として、高カロリーで血糖値をあげることができ、かつ手軽に摂取できるチョコレートが
アルコールに取って代わる。また、探検隊や軍隊の携行品としてもチョコレートは大活躍した。
■第七章:チョコレートのグローバル・マーケット
戦後、経済の復興に伴う消費支出の拡大とともに、チョコレート・コーティング菓子の消費量も増加。また、チョコレートの
製造は、グローバルな市場を見据えた再編による大企業企業と、クラフトマン工房を維持する企業とに二分されることとなる。
■終章:スイーツと社会
各々の企業・工房が自社商品の希少性をアピールする時代に。フェアトレードにより、消費者の生産地の労働環境に対する関心も向上。
チョコレート(カカオ)の歴史を辿りつつ、ヨーロッパ経済の歴史も辿ることができます。
チョコレートの知識+経済の知識(欧州:中世から近代まで)をつけたい方は是非。
ビジネスの観点でみると、「キットカットのマーケティングの歴史」は大変興味深く、また参考になりましたね。
2023年7月7日に日本でレビュー済み
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チョコレートの歴史について、学びたくって初めて買った本。
勉強になります。
勉強になります。
2021年12月2日に日本でレビュー済み
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たとえば、「カカオと砂糖は、双子のきょうだいのようなものである。」の文。
こういうキャッチーな文は掴みとして持ってきた方がいいです。
散々とカカオと砂糖が、、、と諸国における状況を羅列した後に言われても、「うん、そうみたいだね、、、」となるだけです。
16〜18世紀の部分の話はもっと面白く書いてほしいし、書けると思います。結局、人は細かい事実よりもストーリー性に惹きつけられるので。
勉強にはなりました。
こういうキャッチーな文は掴みとして持ってきた方がいいです。
散々とカカオと砂糖が、、、と諸国における状況を羅列した後に言われても、「うん、そうみたいだね、、、」となるだけです。
16〜18世紀の部分の話はもっと面白く書いてほしいし、書けると思います。結局、人は細かい事実よりもストーリー性に惹きつけられるので。
勉強にはなりました。
2022年2月24日に日本でレビュー済み
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チョコレートが庶民の口に入るようになったのは、ここ数十年のこと。農業、工業、科学技術の粋が詰まっている。この貴重な食べ物を隷属の道具にしてはならないと強く感じました。
2018年6月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
単に「スイーツの成立・歴史」として時系列で事実を追うのでなく、「労働力・富の分配・働くことの意義」という極めて現代的かつ斬新な視点から、「チョコレートを手がかりに、先進国家の社会システムの成立自体を読み解いてみせる」のが本書の魅力と思う。
学者先生の作品にありがちなまわりくどさや、大上段から講釈をするが如き圧迫感なく、かといって読者におもねる訳では全くない「文章の
レジスターの水準」にも好感がもてる。
王のために生み出され、大量生産を支える安価な労働力を「再生産」するため大量消費されるスイーツと化したチョコレートの数奇な運命。それとは対照的に、「内的な力の再生」により神とつながる宗教儀式における精神性とも深く関わる神秘性。たくさんの人達の汗と涙が刻まれているカカオからの精製過程と、極めて多面的な角度から、チョコレートを糸口に社会史を俯瞰する名著。
学者先生の作品にありがちなまわりくどさや、大上段から講釈をするが如き圧迫感なく、かといって読者におもねる訳では全くない「文章の
レジスターの水準」にも好感がもてる。
王のために生み出され、大量生産を支える安価な労働力を「再生産」するため大量消費されるスイーツと化したチョコレートの数奇な運命。それとは対照的に、「内的な力の再生」により神とつながる宗教儀式における精神性とも深く関わる神秘性。たくさんの人達の汗と涙が刻まれているカカオからの精製過程と、極めて多面的な角度から、チョコレートを糸口に社会史を俯瞰する名著。
2020年5月28日に日本でレビュー済み
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南米にいた時、カカオの果実を貰ったけど、カカオからココアが出来るプロセスが勉強できて大変有意義でした。
2011年11月27日に日本でレビュー済み
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本書はタイトル通り、チョコレートの歴史を解説したものです。
帯には
「これはいったい薬か、飲み物か それとも 食べものなのか」
と大きく書かれていて、私は「いや、食べものに決まっとるがな!」と少々帯の文句を馬鹿にしてから読み始めたのですが、私の勉強不足でした・・・(笑)
カカオを原料としてできあがったモノは、時代によって薬だったり飲み物だったり食べものだったりしたようです。
また、カカオ自体が貨幣として扱われ、経済力の象徴だった時代もあるとのこと。
歴史ばかりではなく、チョコレートの製造方法等も書いてあるので、チョコレートが好きな人が読めば絶対に面白い一冊だと思います!
チョコレートが好きじゃない自分でも面白かったぐらいですから(笑)
こうやってチョコレートの歴史を読みやすくまとめてくれた本はなかなか無いと思うので、結構貴重な一冊なのではないでしょうか。
帯には
「これはいったい薬か、飲み物か それとも 食べものなのか」
と大きく書かれていて、私は「いや、食べものに決まっとるがな!」と少々帯の文句を馬鹿にしてから読み始めたのですが、私の勉強不足でした・・・(笑)
カカオを原料としてできあがったモノは、時代によって薬だったり飲み物だったり食べものだったりしたようです。
また、カカオ自体が貨幣として扱われ、経済力の象徴だった時代もあるとのこと。
歴史ばかりではなく、チョコレートの製造方法等も書いてあるので、チョコレートが好きな人が読めば絶対に面白い一冊だと思います!
チョコレートが好きじゃない自分でも面白かったぐらいですから(笑)
こうやってチョコレートの歴史を読みやすくまとめてくれた本はなかなか無いと思うので、結構貴重な一冊なのではないでしょうか。