大国、世界の指導的国家を世界史のなかで、戦争(軍事力)と経済(力)を軸に据え、地政学などの手法を駆使し、歴史的に俯瞰しながら検証している名著。国際関係論としても学べる。リアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムなど超えたところにある現実、歴史に裏打ちされたテキスト。
移ろい往く大国の覇権興亡を1500年から2000年まで、ヨーロッパを中心に描く、ヨーロッパ中心史観といわれようと何と言われようと、迫力あり、論旨明快で、世界的なベストセラーに数えられるのもうなずける。ハプスブルグ家、オランダ、ポルトガル、神聖ローマ帝国、フランスナポレオン、大英帝国、ナチスドイツ、ソ連、アメリカ、の興亡。
ナポレオン、ナチスは軍事力に偏りすぎたこともあるが、冬上軍のロシアへ攻め込んだことが致命的な戦略ミスであり、経済面での病理現象、国内の財政を圧迫し潰れた。ロシアは民族主義に資本主義を取り入れた、中国は共産国家ゆえの唯物史観、拝金主義に塗れている、知識を軽視し、経済、科学、あらゆる分野で遅れを取ったことを反省し対米競争をむき出しにし覇権を唱え始めている、アメリカはかつての大英帝国のように、世界中に軍を駐留させて、手を広げ過ぎている。
大国から学ぶべきは、軍事史と経済史であること。国力としての軍事力も経済力も相対的で、覇権国家のみにスポットを当てる愚を廃し、主要な国々について比較する、下巻の最終章で、1980年当時の世界情勢と歴史的事実から類推される21世紀を示唆している、軍事と経済という全体構成を保ちつつ、個別の事象を迫力をもって描く構成力には、著者の力量を感じる。下巻は、一次大戦終結1919年から、米ソが衰退してきた1980年までの歴史と、今後の推測。「二十一世紀に向かって」は、ここ数十年を見る限り筆者の推測を外れている。EU統合、日本経済は停滞、ソ連は崩壊に至った。歴史は人の予期しない方向に流れていくが、そこにある時代精神を知ることで、歴史の本質を理解できるようになる。時代精神を歴史的事実によって実証している本書は、真の国際関係論を説いたアカデミックな名著である。
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世界の運命 - 激動の現代を読む (中公新書 2114) 新書 – 2011/6/24
世界的ベストセラー『大国の興亡』で知られる、歴史学の泰斗による最新エッセイ集。巨大な視野から、現代の世界の本質を言い当てる。
- ISBN-104121021142
- ISBN-13978-4121021144
- 出版社中央公論新社
- 発売日2011/6/24
- 言語日本語
- 本の長さ241ページ
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2011/6/24)
- 発売日 : 2011/6/24
- 言語 : 日本語
- 新書 : 241ページ
- ISBN-10 : 4121021142
- ISBN-13 : 978-4121021144
- Amazon 売れ筋ランキング: - 96,919位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 507位中公新書
- - 1,425位政治 (本)
- - 22,328位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年7月3日に日本でレビュー済み
カトリック系の中高一貫男子校をでて、サッチャリズムに嫌気がさして渡米したといったようなことがあとがきにある。St Cuthbert High Schoolというその学校のhomepageの卒業生名簿にadmiralなどという名前とともにある。1200人というから、ひと学年200人くらいなのだろうか。学力テストでクラス分けされているように読める。宗教的教育をするが、どの宗教の子でも受け入れると書いてある。156ページにユダヤ教の断食明けの食事会のあととか、何年もカトリックの礼拝を毎週欠かしたことはないと書いてあるが著者個人の背景にちょっと興味をもってしまった。
イスラエルの未来についての人口動態統計による分析は私には新鮮だったし、またロシアの、人口の問題、neo 国家主義的な若者たちの問題(ロシア版ヒトラーユーゲント)などさすがに日本の新聞をさらっと読んだだけではでてこない。
もとになる有名な言葉など、本歌どりをしている部分をもっと注をいっぱいつけると(The buck stops hereとかout of jointとか、、訳者が言っているように、検索すればたいてはでてくる。)、また一冊の教養書(英語、歴史、文学、一般教養、地理など)になる。闇の奥が地獄の黙示録のもとだったなんて。
イスラエルの未来についての人口動態統計による分析は私には新鮮だったし、またロシアの、人口の問題、neo 国家主義的な若者たちの問題(ロシア版ヒトラーユーゲント)などさすがに日本の新聞をさらっと読んだだけではでてこない。
もとになる有名な言葉など、本歌どりをしている部分をもっと注をいっぱいつけると(The buck stops hereとかout of jointとか、、訳者が言っているように、検索すればたいてはでてくる。)、また一冊の教養書(英語、歴史、文学、一般教養、地理など)になる。闇の奥が地獄の黙示録のもとだったなんて。
2012年1月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「大国の興亡」でお馴染みの歴史学者によるエッセイ集。
なかなか斬新な視点で世相を読んでいます。
世界の将来を占うことができるかも。
なかなか斬新な視点で世相を読んでいます。
世界の将来を占うことができるかも。
2011年7月2日に日本でレビュー済み
英国出身の歴史家で主著が世界的なベストセラーとなった著者ならではのエッセイ集。賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ、を自ら実践しながら、その合間に執筆された現状分析を踏まえた予測分析的内容を含む。評者は著者が勤務するイェール大学にマンハッタンのグランセントラルから、メトロノース・ニューヘブン線で訪ねるので、第3章の「鉄道ファンからの将来提案」などは、著者の批判精神を具体的に思い出しながら、呵々大笑した。ニューヨークとDCの間には毎日昼間1時間置きにデルタ・シャトルという定期フライトがあるが、時間がある限り、マンハッタンのペンステーションからDCのユニオン・ステーションまでAmtrakで移動する方が時間的にも、金額的にも経済的なのは全く同感。だが、その一方で高速鉄道の技術は日欧中が独占し、アメリカにはない。Amtrakの最高時速は、精々120キロ。車と飛行機に依存するアメリカ経済の歪さを鋭利に風刺する。
通貨戦争と戦後金融経済の歪みを整理しても鋭利、世界史の目線は精確な分析と均衡に依存する、その絶妙さは流石である。
序文にある「それにしても現在の日本の指導層は、百年前と較べて、なぜこんなに弱体なのだろうか」と詰問している。現代日本には政治家もエリート官僚もただ拝金イデオロギーに毒され続けているのだが、それは東京発のIHT, NYT, WSJでは読み抜けないであろう。それにしても著者のユーモアとアイロニーはアメリカ人には分かりにく表現が多いようにも感じる。
役者は著者より1年若い同世代で、既に旧知の間らしい。故に解説も面白く、偶然にも著者の故郷を取材で訪ねていたり、鼎談の司会を担当したりして、呼吸が合っている。その成果として、著者が嫌った政治家サッチャー女史の名言を紹介している。「欧州は歴史の産物だが、米国は哲学の産物である」、20−21世紀では名言であろう。
通貨戦争と戦後金融経済の歪みを整理しても鋭利、世界史の目線は精確な分析と均衡に依存する、その絶妙さは流石である。
序文にある「それにしても現在の日本の指導層は、百年前と較べて、なぜこんなに弱体なのだろうか」と詰問している。現代日本には政治家もエリート官僚もただ拝金イデオロギーに毒され続けているのだが、それは東京発のIHT, NYT, WSJでは読み抜けないであろう。それにしても著者のユーモアとアイロニーはアメリカ人には分かりにく表現が多いようにも感じる。
役者は著者より1年若い同世代で、既に旧知の間らしい。故に解説も面白く、偶然にも著者の故郷を取材で訪ねていたり、鼎談の司会を担当したりして、呼吸が合っている。その成果として、著者が嫌った政治家サッチャー女史の名言を紹介している。「欧州は歴史の産物だが、米国は哲学の産物である」、20−21世紀では名言であろう。
2011年8月21日に日本でレビュー済み
世界的に著名な英国出身の歴史家が描いたエッセイ集。記事の大半が、今より2、3年以上前のものであり、著者が気にした現在の世界の全貌を語るには、ちょっとインパクトには欠け、タイムリーな評伝物ではないところは、マイナスポイントです。本書を読んで、作者は米国の政治、経済にはかなりの驚鐘をならしており、現在の米国の実情は、作者が危惧した通りの展開になっています。但し、中国に関しては、元々、悪いことを外に隠す習性の国民性であることは歴史が証明しており、本書126頁 鉄道ファンからの将来提案にて、米国内の鉄道設備云々に危惧し、日本、欧州、カナダ、韓国含め中国の企業が高速鉄道分野で今後成長性を増すようなことを描いていますが、先の高速鉄道事故で証拠を埋めてしまった国だけに、作者が考えているようなことは、正直ありえないのではないかと思う。中国に関しては、現在世界第二位のGDP国であり、数値的には、将来米国を抜くような展開があろうとも、やはり、国民の民族性、国内格差、そして中国の政治統治の問題がクリアできないと、実のある経済大国には絶対なりえないにではないでしょうか?先日、米国の副大統領が訪中し、次の国家主席と目される習氏と会談をしてきたとか。米国が中国をいろんな面で最重要国に取扱う機会が、今後増々多くなるんでしょうが、同じタイミングで米国と中国のバスケット試合で、ものすごい大乱闘。経済大国の体が整っていない、中国の姿が、全世界に中継されました。やっぱりと思った人が多数でしょうけれど。。。。。。。
2011年9月24日に日本でレビュー済み
歴史家ならではの大局的な視座に立ったエッセイ集。2007年から2011年に書かれたものだが、今なお古びていない。根底に流れるのは、地球規模の経済的バランスは欧米からアジアに傾きつつあるという歴史認識であり、弱いドルは確実に米国の国際的影響力の低下を招くという危機感である。欧米の凋落と新興国の台頭といういま最も旬なテーマを考えるうえで、様々な示唆を与えてくれる良書。「いかにして国家は復権したのか」「長期的な米ドルの運命」「領土と力―常に大きいほど良いわけではない」「米国のソフト・パワーは蘇るのか?」の四つのエッセイが特に面白かった。
2011年8月23日に日本でレビュー済み
あの「大国の興亡」の著者ポール・ケネディにより2007年から2011年にかけて書かれたエッセイ集。
この間世界金融危機が起き、オバマが誕生し、新興国が力をつけ、商品相場が高騰し、そしてソブリンリスクと通貨安競争が始まった。
これらの出来事の都度、著者は鋭い考察を示してくれる。
たとえば
・米国は全世界のGDPの2割を占めているがドルは7割を占めている。この不均衡の是正の動きは近い将来起こるだろうと2009年に書いている。
・また、地球温暖化に関する報告書や今世紀の中ごろまでにアジアが興隆するというような統計の報告には疑問を呈している。
・さらに、ロシアは出生率と死亡率の両面から人口学的にみて崩壊の危機に瀕しているとする。
・そして、アメリカで進む「お茶会」運動にも、内向き志向を強めているとして懸念している。
・また、オバマ政権に関しては、せいぜい船のマストを修理するくらいのことしかしていないと酷評している。
そしてまさに今、リビアのカダフィ政権が倒れようとしているが、中東世界の未来は決してバラ色ではないと筆を置いていることは何やら暗示的である。
この間世界金融危機が起き、オバマが誕生し、新興国が力をつけ、商品相場が高騰し、そしてソブリンリスクと通貨安競争が始まった。
これらの出来事の都度、著者は鋭い考察を示してくれる。
たとえば
・米国は全世界のGDPの2割を占めているがドルは7割を占めている。この不均衡の是正の動きは近い将来起こるだろうと2009年に書いている。
・また、地球温暖化に関する報告書や今世紀の中ごろまでにアジアが興隆するというような統計の報告には疑問を呈している。
・さらに、ロシアは出生率と死亡率の両面から人口学的にみて崩壊の危機に瀕しているとする。
・そして、アメリカで進む「お茶会」運動にも、内向き志向を強めているとして懸念している。
・また、オバマ政権に関しては、せいぜい船のマストを修理するくらいのことしかしていないと酷評している。
そしてまさに今、リビアのカダフィ政権が倒れようとしているが、中東世界の未来は決してバラ色ではないと筆を置いていることは何やら暗示的である。