現代を代表する言語教育の碩学、斎藤・齋藤先生お二人の対談をまとめた本です。2004年刊ですから、斎藤先生46歳、齋藤先生44歳でしょうか。この本は斎藤先生の「日本人と英語」に先立つこと3年前に出されています。
「日本人と英語」は明治以来100年間の日本人の英語の受容と教育の歴史を極力客観的に見ながら時代の区切りごとに斎藤先生の論評を加えたもので、現在文科省が推進しまた世間でも持てはやされている文法軽視会話奨励英語教育に対する批判は抑制的でした。
それに対し、その3年前に出されたこの対談本は、斎藤・齋藤両先生の面目躍如という面持ちで、国語教育、英語教育の現在のあり方に鋭く切り込み遠慮なく批判を浴びせています。お二人の教育の実践家としての凄味は、ではどうすればよいのかということがきちんと提示されていることです。
私はこの本を読んで、特に第4章の対談の言葉に一番力強さを感じました。映画の字幕翻訳家の戸田奈津子さんが「翻訳は英語力というけれど、翻訳で本当に試されるのは日本語力です。」と話されていたことも思い出しました。あのとき戸田さんはシルベスタースタローンのことも話されていて、彼は本当に勉強家で英語をしっかり勉強しているという趣旨のことも言われていましたが、これなども斎藤先生が「英文法の論理」の中でスタローンの発言について解説されていることとも符合します。
お二人の先生方の息子さんたちもだいたい似たような年齢のようで、息子さんたちに対する家庭教育についても触れられていて微笑ましいです。第7章の「オレ様症候群」の座標には笑いました。
が、(マイナス、マイナス)の座標に位置する子供たちへの対応も必要です。結局、今の教育界・世の中は、子供の存在価値を学校の成績にのみ一本化する流れにここ数十年間あって、それは何にも変わっていない。日本の子供たちは自己肯定感が弱いというのが世界的に見ての現実で、学校教育はこれに対して何ら有効な手だてを講じられなかったというのが現実です。これの突破口として、齋藤先生の「先生増殖方式」は私の経験からしても有効であると思いました。
特に小学校の先生・学齢期の子を持つ親におすすめします。
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日本語力と英語力 (中公新書ラクレ) 新書 – 2004/4/10
朗読、暗誦の復権を唱える「日本語の達人」齋藤孝。近代日本の偉人の勉強法を研究する「英語の達人」斎藤兆史――普遍的な「上達の法則」を知る二人は、ともに口語表現重視の教育改革を批判し、返す刀で本当のコミュニケーション能力を身に付ける要諦を説き明かす。その主張の骨子は「国語教育を充実させよ」「英会話ごっこにも似た低劣な早期英語教育を止めさせよ」「『型』の訓練を中心とした骨太の教育を実現させよ」。語学習得の王道がここにある。
- 本の長さ196ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2004/4/10
- ISBN-104121501284
- ISBN-13978-4121501288
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2004/4/10)
- 発売日 : 2004/4/10
- 言語 : 日本語
- 新書 : 196ページ
- ISBN-10 : 4121501284
- ISBN-13 : 978-4121501288
- Amazon 売れ筋ランキング: - 739,784位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『読書力』『コミュニケーション力』『古典力』(岩波新書)『理想の国語教科書』(文藝春秋)『質問力』『現代語訳学問のすすめ』(筑摩書房)『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)等多数。TBSテレビ「情報7days ニュースキャスター」等テレビ出演多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。 (写真提供:草思社)
1958年、栃木県出身。東京大学大学院教育学研究科教授。専門の英学・英語教育の他、英文学の翻訳も数多く手がける。英ノッティンガム大学英文科博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部で長年教鞭をとった(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『教養の力 東大駒場で学ぶこと (ISBN-10: 4087206858)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年1月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は国語のプロ・斎藤孝と英語のプロ・斎藤兆史(よしふみ)の対談である。
両者に共通しているのは、「英語は基本から入れ」である。文法と単語、音読の基本から入るべき、また、英語学習を駆動するのは論理力であり国語力であると主張する。
そして、小学校教育に関して、
・「英会話ごっこ」の英語教育はやめるべき
・国語教育の内容を見直すべき(厚くせよ)
と主張する。
全く同意であり、その他の考察も学びのある一冊であった。
しかし欲を言えば、異なる意見をぶつけ合う対話が見たかった。終始お互いの意見を認め合う本書は、対談ではあるが対話ではない。
両者に共通しているのは、「英語は基本から入れ」である。文法と単語、音読の基本から入るべき、また、英語学習を駆動するのは論理力であり国語力であると主張する。
そして、小学校教育に関して、
・「英会話ごっこ」の英語教育はやめるべき
・国語教育の内容を見直すべき(厚くせよ)
と主張する。
全く同意であり、その他の考察も学びのある一冊であった。
しかし欲を言えば、異なる意見をぶつけ合う対話が見たかった。終始お互いの意見を認め合う本書は、対談ではあるが対話ではない。
2005年1月22日に日本でレビュー済み
著者らの意見に基本的には賛成だけど、記述の矛盾が気になった。
(子どもに英語で話し掛けるのは良くない。そんなことしたら、子どもに悪い発音が身に付いてしまう。と言いつつも、「私は自分の子どもに英書を読んで聞かせて、発音と意味を教えている」との記載がある。)
対話という形式なのだから、ある程度は仕方ないのかもしれないけれど、主張に矛盾があるとどうしても説得力が弱くなってしまう。
自分が「良いな」と思った部分だけ、自身の勉強法に利用するのが、本書の最良な利用法でしょう。
上達の方法なんて、人それぞれ。他人に合った方法が、自分に合うとは限らないのだから。
(子どもに英語で話し掛けるのは良くない。そんなことしたら、子どもに悪い発音が身に付いてしまう。と言いつつも、「私は自分の子どもに英書を読んで聞かせて、発音と意味を教えている」との記載がある。)
対話という形式なのだから、ある程度は仕方ないのかもしれないけれど、主張に矛盾があるとどうしても説得力が弱くなってしまう。
自分が「良いな」と思った部分だけ、自身の勉強法に利用するのが、本書の最良な利用法でしょう。
上達の方法なんて、人それぞれ。他人に合った方法が、自分に合うとは限らないのだから。
2011年12月9日に日本でレビュー済み
語るべき内容がたいしてない、興味を持ってもらえるだけの内容がたいしてない、それでも欧米人にどうしても話を聞いてもらいたいのなら、格調高い英語を話さなければならないのだという危機感があるのはよく分かった。なにか欧米にものすごいコンプレックスを持っているような気がして仕方がない。そんなことを書きたかったのではないだろうに・・・本人達の意図していることがこの本だけでは分からない。志の部分が捨て置かれ、技術論に終始。ということは、この本単体でみると恐怖を煽るハウツー本として利用される可能性があると思う。
2004年6月25日に日本でレビュー済み
文法軽視、「実践コミュニケーション」主義の傾向がある今日の英語教育だけでなく、水準が下がってきている国語教育も厳しく批判している。「日本語力があっての英語力だ」、「真の国際コミュニケーションが出来るようになる近道などない」、など、本書に書かれていることは、英語達人を目指す人のみならず、英語を学習する人、英語にかかわる人すべてに読んでもらいたい。
2007年5月21日に日本でレビュー済み
日本語と英語の第一人者である新進気鋭の二人の斉藤先生による一冊。
ことばというのは、個人がよりよく考えたり、また他者と望ましいコミュニケーションをとるためのツールである。しかし今日、このことばというのは危機的な状態に陥っている。ボキャブラリーや論理性、他者への配慮の欠如といったこれらの問題は由々しい国民的問題である。
特に母語である日本語と第一外国語である英語についても取り巻く環境の問題は多い。二人の斉藤先生は、卓抜した洞察力や経験から、安易な実体のない「コミュニケーション重視」の英語などの問題を一刀両断し、あるべき方向を示す。
ことばの重みをもう一度、あらためてかみ締めたいものである。
ことばというのは、個人がよりよく考えたり、また他者と望ましいコミュニケーションをとるためのツールである。しかし今日、このことばというのは危機的な状態に陥っている。ボキャブラリーや論理性、他者への配慮の欠如といったこれらの問題は由々しい国民的問題である。
特に母語である日本語と第一外国語である英語についても取り巻く環境の問題は多い。二人の斉藤先生は、卓抜した洞察力や経験から、安易な実体のない「コミュニケーション重視」の英語などの問題を一刀両断し、あるべき方向を示す。
ことばの重みをもう一度、あらためてかみ締めたいものである。
2005年5月18日に日本でレビュー済み
この本の最初のところで、中学教科書の実態が載っています。ここにあることは、私が初めて中学で働き始めて目が点になってしまった箇所です。今のこの教科書で教えることは、外国語を学ぶことにおいて何か勘違いしているような気がしました。斉藤先生は私が言いたかったことを全てこの本で言ってくれています。一度是非読んでみてください。お勧めの1冊です。
2015年10月31日に日本でレビュー済み
国語v英語、齋藤v斎藤、孝v兆史、東大法学部v東大文学部、静高v宇高、テニスv合気道。
共通点の多い二人が共通してリーディングを重視している。
まず名文を声を出して読むことの効果が高いことを訴えている。基礎を反復練習で習得することを訴えている。
賛成である。
しかし、特に兆史先生の英会話重視の英語教育への反論は、それが不要のように聞こえることが危険だと思われる。
兆史先生はNHK教育テレビで発音に集中して聞いて話すスキルを教える番組の講師をするほど、発音と会話の教育にも携わっている。小学生に英語は教えるな、といいながら、自分の小学生の息子にはハリーポッターを読ませている。
「学校教育で与えることのできる英語力というのは、ほんの基礎の基礎です。」「英語に関しては、文法を習ったけど話せないことに対し、とても批判的です。」p190と、大量で高度な練習が必要なこと、それはだれもがしないし、する意義はないこと、個人個人の目標に沿って英語を勉強すべきことを示唆しているが、明示はしていない。同じことはマーク・ピーターセン 日本人の英語 (岩波新書) や千野栄一 外国語上達法 (岩波新書 黄版 329) が主張しているが、本書は混乱したメッセージを与えるか、具体的な指針を与えずに終わってしまうだろう。
英語勉強法に関しては、ASIN:B00QRL8ATY 英語はもっと科学的に学習しよう (中経出版)]]の提唱する、大量のインプットと適度のアウトプットが効果的ではないかと思われる。使わないと記憶は定着しないからである。
ビジネスに経験のない教育者がビジネスに英語が不要であるかのような主張も、百害あって一利なしではないか、と懸念する。
孝先生が日本語のうまい韓国人が教材として山岡荘八 の提唱する、大量のインプットと適度のアウトプットが効果的ではないかと思われる。使わないと記憶は定着しないからである。
ビジネスに経験のない教育者がビジネスに英語が不要であるかのような主張も、百害あって一利なしではないか、と懸念する。
孝先生が日本語のうまい韓国人が教材として山岡荘八 徳川家康 文庫 全26巻 完結セット (山岡荘八歴史文庫) を使った事例を紹介したことに対し、兆史先生は、 アガサ・クリスティー を薦めていることを具体的な提言としてアマゾン読者への便宜に報告します。
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まず名文を声を出して読むことの効果が高いことを訴えている。基礎を反復練習で習得することを訴えている。
賛成である。
しかし、特に兆史先生の英会話重視の英語教育への反論は、それが不要のように聞こえることが危険だと思われる。
兆史先生はNHK教育テレビで発音に集中して聞いて話すスキルを教える番組の講師をするほど、発音と会話の教育にも携わっている。小学生に英語は教えるな、といいながら、自分の小学生の息子にはハリーポッターを読ませている。
「学校教育で与えることのできる英語力というのは、ほんの基礎の基礎です。」「英語に関しては、文法を習ったけど話せないことに対し、とても批判的です。」p190と、大量で高度な練習が必要なこと、それはだれもがしないし、する意義はないこと、個人個人の目標に沿って英語を勉強すべきことを示唆しているが、明示はしていない。同じことはマーク・ピーターセン 日本人の英語 (岩波新書) や千野栄一 外国語上達法 (岩波新書 黄版 329) が主張しているが、本書は混乱したメッセージを与えるか、具体的な指針を与えずに終わってしまうだろう。
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ビジネスに経験のない教育者がビジネスに英語が不要であるかのような主張も、百害あって一利なしではないか、と懸念する。
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