満州国という国がかつて中国にあって日本人が住んでいた、という程度にしか一般の日本人は知らないのではないでしょうか?
私もその程度の知識だったので、この際、ちゃんと満州国について理解しておこうと思い本書を読みました。著者は京都大学名誉教授の歴史学者である山室信一さんで、あとがきを読むと歴史学の範疇を超えた満州への強い思いを感じます。
満州は広大な中国のほんの一部かと思っていましたが、大日本帝国下の日本、台湾、朝鮮を合わせた総面積の2倍弱あったと知って驚きです。
また、私も含めて日本人にとっての満州のイメージは決して悪くはないと思います。もちろん日本による帝国主義によるアジア侵攻の一環であったという認識はありますが、満州国時代に日本が開発したインフラや建物が立派だったとか、そういう話を多く聞きます。
本書を読むと日本人と比べて中国人は明らかな差別を受けていて、白米も食べられず古着を着て列車でも日本人と席を分けられていたばかりか、日本語を話させて毎朝東の皇居にむけて遥拝を強要させていたとか、さらには貧しい中国人農家の家長を強制徴用したおかげで、氷点下の冬のなか着る服もなく丸裸で子供達が放置されていたなどという話は衝撃的でした。
さらに強い嫌悪感を覚えたのが、王道政治や民族共同など表づらだけは立派に着飾り、清国ラストエンペラー溥儀を擁立してあたかも中国のためアジアのための新天地だなどと堂々と喧伝し、欧米諸国や中国にはすっかり見透かされていたにもかかわらず、日本人は自分の言葉に酔いしれて万歳三唱をやっていたことです。
とは言うものの、当時の世界をマクロ的に俯瞰してみて、じゃあ、今の日本人がもしも当時の日本にタイムスリップしていたら何ができたのか?平和憲法を世界に表明していたら、シベリア鉄道を利用して100万人の兵士がソ連から送られて日本海の制海権はソ連のものになっていたでしょう。それとも太平洋戦争をしないで自ら日米安保を締結して自ら米国の属国となってソ連に対抗するか?
満州国を批判するのは簡単ですが、列強の帝国主義による世界地図の塗り絵合戦を考えると色々と考えることは多いと思いました。
あと、満州国の形態を考えると、平和な安土で国防は日本に委託、というのが今の日本とアメリカの関係に似ているような気がします。日本の領土に必要な軍施設を設けて、その費用は日本が負担、米軍基地が占有する空域をわざわざ避けて飛行する日本の民間機。それでも日本人はアメリカが好きなわけで、やはりローマ帝国の時代から帝国主義を学んできた西欧と、島国から足を踏み出したばかりの日本では役者が違うなと感じました。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥1,056¥1,056 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥1,056¥1,056 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥285¥285 税込
配送料 ¥250 6月7日-8日にお届け
発送元: 東京ブック 迅速発送 販売者: 東京ブック 迅速発送
¥285¥285 税込
配送料 ¥250 6月7日-8日にお届け
発送元: 東京ブック 迅速発送
販売者: 東京ブック 迅速発送
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
キメラ: 満洲国の肖像 (中公新書 1138) 新書 – 2004/7/25
山室 信一
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,056","priceAmount":1056.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,056","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"vJajHCEBjExFqiAH9oEN8PGxc1FT1zMQmVkEMEXheAZCz7eplLIl3ARs%2FqzZgQ%2F%2B8JCH0CvuqFsY19SmYdzs%2FrXzmh6dJwvkMZ5w4Gczqbn8S1rwFdc7gV3ZBunb7B%2Bm","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥285","priceAmount":285.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"285","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"vJajHCEBjExFqiAH9oEN8PGxc1FT1zMQIMCrgorsEC%2BUcZpr5byTnRlhjIP4Z%2BGbLHhh1fQLeORNkhlgl2pLp0WQDo%2Bl6I3XjEE9NA6v1jVBOxjhJ38oA5ckCT57NYM2M8%2Fs8b%2BM%2B60esFhh85wR2RxfhGsQs8Zz%2B8IctjTOWo%2FLhtQn7Unj2G6ivhzUWVKx","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
- ISBN-104121911385
- ISBN-13978-4121911384
- 出版社中央公論新社
- 発売日2004/7/25
- 言語日本語
- 本の長さ428ページ
よく一緒に購入されている商品
対象商品: キメラ: 満洲国の肖像 (中公新書 1138)
¥1,056¥1,056
最短で6月7日 金曜日のお届け予定です
残り11点(入荷予定あり)
¥1,100¥1,100
最短で6月7日 金曜日のお届け予定です
残り5点(入荷予定あり)
¥1,298¥1,298
最短で6月7日 金曜日のお届け予定です
残り9点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2004/7/25)
- 発売日 : 2004/7/25
- 言語 : 日本語
- 新書 : 428ページ
- ISBN-10 : 4121911385
- ISBN-13 : 978-4121911384
- Amazon 売れ筋ランキング: - 66,330位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2024年4月29日に日本でレビュー済み
2022年10月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
人口が多く、しかも国土が狭く、資源に乏しい我が国は、海外に領土と資源を求めて進出すること、其の為には武力の行使と他国の侵略をも辞さない、というのが戦前の日本の基本的考え方であった。しかし、狭い国土というのは戦前に主張された間違った思想であり、戦後、日本には未開発の国土が大量に存在することが判明した。不足する資源は、貿易を通じ獲得すれば事足りる。其の為、優れた工業製品を開発、輸出し、外貨を稼いで必要資源を輸入すればよい。軍事大国よりも経済大国として発展することの方が世界に受け入れやすい。
中国の北東部=満洲を軍事的に支配しようとした戦前の日本の発想は間違っていた。
中国の北東部=満洲を軍事的に支配しようとした戦前の日本の発想は間違っていた。
2023年7月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
よくわかる本です。しかし、私としては、最終章が現地での生活による肉声が聞けたとの思いがあります。
2022年3月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
満州国がどんなものであったのかの要点は抑えてある。対日協力者の事情や現地採用の役人の日本人に対する給与格差などについても記されてある。
ただし、著者が自身の教養を見せつけたいのか、前半の章で無駄な修辞文句を連ねているのは嫌な印象をもった。
西洋哲学や西洋政治学の知識があるのだろうが。
ただし、著者が自身の教養を見せつけたいのか、前半の章で無駄な修辞文句を連ねているのは嫌な印象をもった。
西洋哲学や西洋政治学の知識があるのだろうが。
2021年3月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新書本で学術的にこれほど子細な研究内容を網羅したものを読んだのは初めてである。初版の1993年から2019年まで版を重ねていることが、何よりも本書の価値を示している。
2019年12月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
満洲国に関しては賛否それぞれに極端なものが出やすいが
だいたいここが問題なんじゃないかと提起してくる内容なので読みやすい。
ここを起点に読んでいっても問題ないと思う。
だいたいここが問題なんじゃないかと提起してくる内容なので読みやすい。
ここを起点に読んでいっても問題ないと思う。
2015年4月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本は島国でほぼ同一民族なので、国内での民族紛争を経験していないので、歴史的に外交下手であるといわれている。
戦前の複合民族国家満洲国での歴史的体験は、日本人が初めて、人種、言語、習俗、価値観の異なる人たちと共存しようとした試みであった。「しかし、そこで現実に行われたことは、異質なものの共存をめざすのではなく、同質性への服従」を求めることであった。「寄らば大樹の陰」も日本人の特質としてよく指摘される。どうやら、日本人は、ネゴシエーション下手なこともあって、「服従」か「支配」かで絶えず揺れ動いているように見える。その特質が、この本では、満洲国体験を通じて浮き彫りにされている。「日本人とはなにか」を考えるうえで、 是非一読を勧めたい名著である。
戦前の複合民族国家満洲国での歴史的体験は、日本人が初めて、人種、言語、習俗、価値観の異なる人たちと共存しようとした試みであった。「しかし、そこで現実に行われたことは、異質なものの共存をめざすのではなく、同質性への服従」を求めることであった。「寄らば大樹の陰」も日本人の特質としてよく指摘される。どうやら、日本人は、ネゴシエーション下手なこともあって、「服従」か「支配」かで絶えず揺れ動いているように見える。その特質が、この本では、満洲国体験を通じて浮き彫りにされている。「日本人とはなにか」を考えるうえで、 是非一読を勧めたい名著である。
2016年9月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
満州国について調べるならまずはこれといわれていたのを思い出した。実際読んでみると、新書とは思えないほど参考文献リストが充実していて、非常に重宝。反面、文章は生硬で、正直読みづらかった。興味深いエピソードを参考文献からトレースするのが正しい読み方の本だと思った。