こういった再読三読に耐え得る本について、何を語るべきなのだろうか。
全ては今作の中で語られており、
このような名作を形容すべき適切な言葉が見つからない
というのが偽らざる本音である。
吉田健一は三島由紀夫や谷崎潤一郎と並び称せられる美しく流麗な文章の書き手であり
澄んだ小川が豊かな谷を軽やかに流れゆくように古今東西の『旨いもの』や『酒』について
あたかも上質な音楽のように綴ってみせる。
全編を通じ、読み手の官能に訴えかける豊かな世界は
これぞ読書の快楽を満たす至福の一冊と呼んでも過言ではない。
圧巻は『饗宴』で語られる夢と現の間を漂うような御馳走の数々。
読者は否が応でも彼の文章に絡め取られ、虜になる。
読み終えて、まだ吉田健一の世界に酔いしれたいのなら
姉妹作『私の食物誌』を手に取ってもいいし、
もう一度今作を読み返すという手もある。
また、気の向くままにページを開いて拾い読みをしても
十分に快楽を得られることを保証する。
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舌鼓ところどころ (中公文庫 A 50-4) 文庫 – 1980/1/10
吉田 健一
(著)
- 本の長さ249ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1980/1/10
- ISBN-104122006996
- ISBN-13978-4122006997
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1980/1/10)
- 発売日 : 1980/1/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 249ページ
- ISBN-10 : 4122006996
- ISBN-13 : 978-4122006997
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- - 5,921位中公文庫
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- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年3月14日に日本でレビュー済み
「こういう時節に年末の街を歩いていると一年中、原稿を書き続けたのだから(中略)、これ以上書けば気が違うだろうし、気が違って雑誌や出版社の編集者が喜ぶ筈はないとすれば、何も書かずにいて締切を延ばす方が編集者に対して親切であるという考えで頭が一杯になり、万事、ゆったりして来る」(『仕事をする気持』)
このような、あたかも哲学書のパロディのようなクドクドした語り口でふざけた事を延々と書いていって、脱力した終わり方で文章を締めるというのが、吉田健一の随筆の持ち味です。
この『舌鼓ところどころ』はそれが満載されていて、暇な時でもこれ1冊あれば大船に乗った気持ちで居られること請け合いなのです。いわゆるグルメレポーターの走りとも言えるのですが、昭和30年代初頭までの話なので実用性は全くなく、今では全てが寓話となり、その分安心してその中に浸りきれるのです。
吉田健一は故吉田茂首相の長男で、ケンブリッジ大学に留学してから文学者、作家の道を歩んだという変わり種です。相続の時にも、「金と土地はいらないから酒を全部くれ」ということで話がまとまったという逸話があるそうですが、それも定かではありません。
このような、あたかも哲学書のパロディのようなクドクドした語り口でふざけた事を延々と書いていって、脱力した終わり方で文章を締めるというのが、吉田健一の随筆の持ち味です。
この『舌鼓ところどころ』はそれが満載されていて、暇な時でもこれ1冊あれば大船に乗った気持ちで居られること請け合いなのです。いわゆるグルメレポーターの走りとも言えるのですが、昭和30年代初頭までの話なので実用性は全くなく、今では全てが寓話となり、その分安心してその中に浸りきれるのです。
吉田健一は故吉田茂首相の長男で、ケンブリッジ大学に留学してから文学者、作家の道を歩んだという変わり種です。相続の時にも、「金と土地はいらないから酒を全部くれ」ということで話がまとまったという逸話があるそうですが、それも定かではありません。
2013年12月29日に日本でレビュー済み
内容はうなさか書房氏のレビューどおり大別3部ですが、実用的なのは真ん中の書名にとられた部分です。表題都市などの食べ歩きで住所も町名で止まらず番地まであったり電話番号の記してある店もあり、土産用の菓子・漬物・干物などを含み、単品料理・商品の価格、平均予算についてもできる限り記そうとされていてガイドとして使用されることを十分意識されています。しかし、著者はずいぶん昔に亡くなられた方です、そのガイドが実用的?と思われることでしょう。事実、価格は東京と比較すれば当時は割安だったらしいとわかるくらいです。廃業された店もあり、現存してても料理人の交替、全国展開などで味が変わったのではとか料理名・味は同じでも価格をいれると同一とはいえないものもあります。にもかかわらずいまだにお薦めできるのは、その地の家庭、少なくとも料理店で普通に食せるその地ならではの料理が多く紹介されているからです。それはそうかもしれないが、そういう料理、食べられる店をカラー写真、詳細基本情報付で紹介する現代の本がいくらもあるではないかといわれるかもしれません。が、それらと一線を画するのが著者の食味表現の名人芸です。和・洋・中いろいろな料理・食品、場合によっては複数と比較することが多いのですが的確です。また、鶫の脳味噌など一般が食しないもの、その地の風物、昔の光景などにたとえることもありますが、味がわかりようもないはずなのに納得させてしまう腕があります(例;魯迅のどんな作品より旨い)。料理を食する場の雰囲気まで見事にとらえているのは金沢で同名の小説
金沢・酒宴 (講談社文芸文庫)
に結実します。そういうことならむしろ料理・食べ物主題で読みたいという方には傑作
私の食物誌 (中公文庫)
があります。店・料理(その店一代限りになりうるものを含む)名は著者が特に感動したらしきものにとどめ列記すると新潟「玉屋」(茹でたらば蟹のわた・ぜんまい粕漬け)・「田舎屋」(三平汁)など8店、大阪「たこ梅」(囀り)・「だるま」(かやく飯・粕汁・精進)など8店、広島「かき豊」など3店、呉「かなめ旅館」(目張煮付)など2店、長崎「富貴楼」(豚の角煮)・「花月」(アラの湯引き・鯨の刺身)など9店、島原・平戸各1店、金沢「福光屋」・「つば甚旅館」(鰯の押し鮨)・「大友楼」(泥鰌蒲焼)など6店、片山津1店、神戸「青辰」(あなご丼)・「牡丹園別館」(炒鮮ナイ)・「ハナワ・グリル」(リドヴォオのクリイム煮)など10店、酒田「相馬屋」(鰰白子の湯上げ・辛子豆腐・最上川産鮭の土手鍋・飛島の鯛刺庄内納豆まぶし・同鮑のわたの吸い物)など3店。