「いわゆる大航海は、ヨーロッパ人に、世界像と人間認識において
大きな意識変革を迫る大事件でもあった」(56)
前半ではコロンブスの航海を辿りながら、当時のヨーロッパ人の想像界、
すなわち彼らがいかに中世的な世界観を抱いていたのかが示される。
中盤から後半にかけては、主にインディオをめぐるスペイン帝国側の議論や対応が描かれる。
全体として、ルネサンス期スペインがインディオという他者に直面することで、
そもそも人間とは何かという自己定義を公共的議論のなかで練り直し、次第に普遍的な人間性
という概念を獲得し、近代へと近づいていくという構図になっている。
尤も、そこにはインディオの犠牲という負の側面が常に付きまとっているが。
著者の専門はスペイン史ではなく文化人類学だが、記述は驚くほど丁寧であり、
しかも用を得て読み物としても面白い。
とりわけ評者が刮目したのは、トマス・モア『ユートピア』を、当時のほとんどの人は
ノンフィクションとして読んでいたという指摘である。
またこれは素人の憶測だが、本書(初版1971年)は、日本においては非常にマイナーであった
(今もそうだが)スペイン史研究にとっても大きな意義を持っていたのではないか。
一例として、本書の20年後に出版された『もうひとつのスペイン史:中近世の国家と社会』は
当初「スペイン帝国の光と影」という本書と極めて類似したタイトルの下に構想されたという。
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新世界のユートピア: スペイン・ルネサンスの明暗 (中公文庫 M 16-2) 文庫 – 1989/7/1
増田 義郎
(著)
- 本の長さ286ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1989/7/1
- ISBN-104122016320
- ISBN-13978-4122016323
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1989/7/1)
- 発売日 : 1989/7/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 286ページ
- ISBN-10 : 4122016320
- ISBN-13 : 978-4122016323
- Amazon 売れ筋ランキング: - 851,077位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,266位ヨーロッパ史一般の本
- - 5,310位中公文庫
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