本書は、タイトルの通りイスラム教の成立史について書かれています。著者はその分野では非常に高名な井筒俊彦氏。
凄い本ですね。バックグラウンドとして大量のアラビア語書物を読みこんだ、氏ならではの筆致です。普通の人が疑問に思うであろうこと、なぜイスラム教はこれほどの影響力を持つに至ったのかが的確に解説されてる。
特長は、イスラム教成立前の時代から中東における文化的背景をつまびらかにし、なぜイスラム教義が勃興してきたのか解き明かしていること。事実から当時の状況を推察していく手法が非常に明晰。
アラビア語の言語学的な分析をすることによってのみ、初めて判明する事柄も書かれている。なぜキリストを単なる預言者の一人として扱うのか、それも解説されています。
近代では、いろいろな意味でイスラム圏を考慮に入れないわけにはいかない。ところが彼らの宗教・文化について理解を深めようとする人がどれほどいるだろう。古の人は、事を運ぶに至って相手を知ることは重要で必須と言っていたような。
彼らを知るには、単純に現代におけるイスラム文化圏を知れば良いように考えてしまいがちですが、本書のようにイスラム教の長い歴史と文化的背景を概観することの方が、より大切なのではないかと感じました。
一読をお薦めします。

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イスラーム生誕 (中公文庫 い 25-2) 文庫 – 1990/8/1
井筒 俊彦
(著)
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- 本の長さ236ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1990/8/1
- ISBN-104122017319
- ISBN-13978-4122017313
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1990/8/1)
- 発売日 : 1990/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 236ページ
- ISBN-10 : 4122017319
- ISBN-13 : 978-4122017313
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,212,782位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 36位イスラム教(一般)関連書籍
- - 442位宗教入門 (本)
- - 2,127位世界史 (本)
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著者について
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1914年東京・四ツ谷生まれ。
1937年慶應義塾大学英語英文学科卒業、同大学文学部助手。
1941年『アラビア思想史』、49年『神秘哲学』。
1959年から2年間にわたって中近東・欧米でイラスーム研究に従事。
1961年マギル大学客員教授、69年同大学イスラーム学研究所テヘラン支部教授、75年イラン王立研究所教授。
1979年イラン革命激化のためテヘランから日本に帰国。『意識と本質』(1980-82年)、『意味の深みへ』(1985年)、『コスモスとアンチコスモス』(1989年)、『超越のことば』(1991年)、絶筆『意識の形而上学』(1993年)など代表著作を発表。
1993年北鎌倉の自宅にて逝去(78歳)。
カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2003年5月24日に日本でレビュー済みAmazonで購入イスラムの誕生を物語り調で語る前半と、時代背景を踏まえながらコーランを読み解く後半に分かれています。後半もイスラムの生まれたその時代に重点が置かれていて、その後どのようにイスラムが発展していったかはほとんど触れないので、現在のイスラムについてや、具体的にイスラム文化がどのようなものであるかを知りたい人にはあまりお薦めしませんが、根本から知りたいという人にはいいかも知れません。読みやすいです。
- 2015年3月22日に日本でレビュー済み帰国中の古本屋巡りの折に入手した。
カナダは移民が大変多い国であり、多文化に触れる機会は多い。
しかし日本と同じくイスラム文化に触れる機会は少ない。
興味深く、一日で完読してしまった。
井筒俊彦は語学の天才だと聞いたことがあったが、この読み易くかつ無駄の無い文章に感嘆した。
難しく書くことは簡単である。
読み手の心を鷲掴みにするかの如き文章に酔いしれた。
井筒俊彦全集を購入したくなった。
- 2012年3月28日に日本でレビュー済み東洋思想研究の権威、井筒俊彦がムハマンドの生涯と、イスラムの概要について記した書。
それぞれのパートは、文庫でおよそ100ページづつ。コンパクトにまとめられている。
アラブ人はとても現実的な考えを持つ民族で、部族同士の結びつきが強かった。
そうした中に、ムハマンドが部族を越えた神と言う発想を持ち込んだ、その当時の衝撃の大きさがよくわかる。
また、カーバ神殿の黒い石も、実は、イスラム教以前の宗教を取り込んだものだという。
ムハマンドからすると、キリスト教の三身一体という考え方は、邪道以外の何ものでもなく、人間と神には決定的な違いがあるとして批判していた。
そうした、あまり知られていない事実が、平易な文章で、わかりやすく説明されている。
- 2010年3月17日に日本でレビュー済み井筒俊彦氏の著作としては「イスラーム文化」と「意識と本質」が代表的で、翻訳は岩波文庫の「コーラン」が親しまれていると思うのだが、新古書店で出くわしたこの文庫は、思いの外に面白い一冊だった。
この文庫は、昭和二十七年に発表した「ムハンマド伝」と、それから三十年近くあとに発表した「イスラームとは何か」の二篇を収録したもので、どちらもこの本のタイトルである「イスラーム生誕」の時期に関わる記述だ。「ムハンマド伝」では新進の時期の著者による瑞々しい描写が目立ち、「イスラームとは何か」ではムハンマドが布教していた時期にアラビアで流布していた概念を一つ一つ精査してイスラームの思想形成と引き合わせていく丁寧な論考として読み応えがある。
どちらにも共通する要素として、イスラームが広まる前のアラビアで支配的だったベドウィンとしての生き方、イスラムから見た「無道時代=ジャーヒリーア」の生活様式や心の構えが詳しく説明されることで、ムハンマドが主張したことの意味合いやイスラームの過激さがよくわかるようになっている。またユダヤ教・キリスト教徒の対抗上で「アブラハム=イーブラヒームの宗教」の後継としての規定をはっきりさせたという経緯についても理解しやすい説明だと思う。
ムハンマドの死後のイスラームの展開についてはほとんど触れていないが、イスラームの発端についてはかなり詳しく明らかにしている文庫。
- 2011年12月8日に日本でレビュー済みこの本を読み下すのは、簡単なようでかなり困難ではないかと思われる。
しかし仏教やヒンズー教などと違って実はルーツがスルーされやすい「イスラム教がどのようにしてできたか」ということに関しては、この本は重要な役割をもつ。
イスラム教はほかの宗教と違って「原理主義」(ほかの宗教とは違いムハンマドは神ではなく人間である)というところ、キリスト教やユダヤ教を尊敬しながらも厳しく排除し「政治」としてイスラム教を広めていったところなどは現代の中東紛争を知る上で欠かせない知識である。
そしてどの宗教も実はいろいろな教えをつまみ食いしつつできている・・・というのが、エルサレムがほかの宗教の聖地ともなるところのゆえんであろう、ということは意外と東洋史では学習しない。
そして後半にみられるコーランの美しさ。
宗教を知らずして、歴史を知ることはできない。