①国際政治学的見地から執筆されたロシア革命史の名著である。戦後すぐに出版された。したがって、本書は戦後の冷戦史とソ連邦の解体までの歴史はない。
②著者の主張として顕著なことは、「世界革命の失敗」を強調していることである。トロツキーの世界革命論がスターリンの一国社会主義に敗北した。スターリンは五ヵ年計画を達成し、重化学工業化に成功し、独ソ戦に堪えうる生産力を築いた。
③「世界同時革命」には失敗しても、ソ連邦、東欧諸国、中国、北朝鮮、ベトナム、キューバ等社会主義陣営は十分に西側に対抗しうる勢力を有していた。
④1989年の東欧社会主義政権の崩壊、ベルリンの壁解体=東西ドイツの統一、米ソ大統領によるマルタ島での冷戦終結宣言、1991年におけるソ連邦の解体は、米ソ軍拡競争からのソ連邦の離脱、社会主義経済の破綻によるものである。
⑤共産党の一党独裁、民主化運動への弾圧、言論の自由の封印、情報の非公開等社会主義政権の未来は絶望的であった。
中国の市場経済の導入は必然的であった。そうしなければ、社会主義経済は崩壊する。こうした歴史は本書にはない。
⑥著者は、なぜボルシェヴィキ革命は成功したのかという核心的問いを提示する。
回答は、ボルシェヴィキが説いた〈反戦〉にある。兵士・労働者・農民は厭戦気分の限界にあった。ソヴィエト(評議会)が結成された理由はいかに第一次世界大戦から戦線離脱し、有利に講話条約を締結するかということにあった。資本主義が最も高度に発達した国で革命が起こるという予言は見事に外れたのである。
参考になる論点が満載だ。
お勧めの一冊だ。
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ロシア革命史: 社会思想史的研究 (中公文庫 い 65-1) 文庫 – 1994/6/1
猪木 正道
(著)
- 本の長さ292ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1994/6/1
- ISBN-104122021065
- ISBN-13978-4122021068
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1994/6/1)
- 発売日 : 1994/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 292ページ
- ISBN-10 : 4122021065
- ISBN-13 : 978-4122021068
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,219,086位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 178位ロシア史
- - 3,353位ヨーロッパ史一般の本
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2020年1月8日に日本でレビュー済み
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学習・研究会に活用しました。色あせていますが、十分活用できています。
2021年2月20日に日本でレビュー済み
多角的な視点から各イデオロギーの成立とそれによる革命期の趨勢を詳細に書き記している。
まだソ連が謎に包まれた国家であった時代に書かれたものとは思えないほど、高度なレベルで正確にソ連を捉えている。
前提知識があまりなくても理解できるほど丁寧に書かれているのでロシア革命に限らず、歴史やイデオロギーに興味のある人は絶対読んで損はない。
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