戦国時代の名高い武将達の群像劇。
司馬作品らしく女性視点から描いたものもありますが、女性がほとんど出てこない作品もあります。
あとがきに、この6つはどれも気楽に書いた、気サクな連中に出てもらったと司馬先生が書いている通り、登場人物は皆人間臭く、司馬先生の持ち味がよく出ています。
一夜官女
これから読む方のために内容には触れませんが、非常に構成が上手いなと思いました。
雨おんな
これはいまひとつでした。
女は遊べ物語
タイトルの通り「スイーツ(笑)」なお話しです。遊び好きの妻と、妻の浪費に悩む下っ端武将の物語。
戦国なのに現代的です。
織田家の史実の武将をモデルにしているのが戦国ファンには嬉しいですね。
実際の戦国時代の家庭生活もこんな感じだったのかなとも想像します。
京の剣客
吉岡一門と宮本武蔵にまつわる剣客のお話。女っ気はありません。
他の宮本武蔵作品に異論を唱えるアンチテーゼ的な内容で、興味深いです。
剣術家だけでなく司馬作品によく出てくるあの武将も登場させて、剣術に長けているだけでは成り上がれない戦国の世で、なぜあえて剣の腕を磨くのか?というジレンマも描いています。
伊賀の四鬼
他の忍者もの短編集にも収録されているので、既読でした…この本に入れなくても良かったのでは。
侍大将の胸毛
天下に名高い「槍の勘兵衛」こと渡辺了のお話です。戦国ファンとしてこれ目当てで本書を買いました。
構成としては、今はぐうたら生活を送っているが、かつては戦場で敵無しの猛将だった男を、女の主人公が女性視点から描写するといった、司馬作品にとても多いパターンです。
また、司馬先生おきまりの、戦国の世が終焉して槍働きをする居場所がなくなった「いくさ人」の悲哀も存分に描かれています。
このパターンは司馬作品では本当に多く、本編はその中では主役の女性との不倫臭い描写がメロドラマっぽい感じで、作品としては完成度は高く無いかなとも思います。
ただし本作は、勘兵衛が一介の武辺者ではなく、兵を率いる将としていかに優れていたかが描かれており、戦国ファンにはたまらないものがあります。
現代の企業は、トップと末端の間の中間管理職が不足していると聞いたことがありますが、この時代も同じだったのかなと思います。
大組織にとって絶対に必要な、優れたプロフェッショナルの管理職であった勘兵衛が多くの大名から引く手数多の描写は、現代にも通じるものがあります。
この作品は、司馬作品の中で、勘兵衛の主君の藤堂高虎を最も悪く、狭量な人物として描いているように感じます。
司馬先生って、後藤又兵衛や塙団右衛門のような子供っぽい所のある武辺者が大好きで、この勘兵衛はその二人よりは高い格にある武将なのですが、やはりその二人と同様に主君の高虎と対立して「奉公構」(再仕官させないように他大名に触れ回る)にされてしまいます。
司馬先生はそれをやった旧主を非常に悪く描く傾向があるんですよね。
特に先生が一番好きな武将であろう、又兵衛を奉公構にした黒田長政は、色々な作品でとても悪く描かれています。
まぁ私自身も、転職を何度も繰り返したので、奉公構にする大名は嫌いですけどね。
自分が何度も主を変えたのに、部下の勘兵衛を奉公構にした高虎を悪く描くのは当然でしょう。
ちなみに転職を繰り返した私は、高虎のように最後に大出世することはありませんでした…。
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一夜官女 改版 (中公文庫 し 6-40) 文庫 – 1995/5/18
司馬 遼太郎
(著)
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- 本の長さ281ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1995/5/18
- ISBN-104122023114
- ISBN-13978-4122023116
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1995/5/18)
- 発売日 : 1995/5/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 281ページ
- ISBN-10 : 4122023114
- ISBN-13 : 978-4122023116
- Amazon 売れ筋ランキング: - 402,955位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1923年大阪市生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒。「ペルシャの幻術師」で講談倶楽部賞、『梟の城』で直木賞を受賞。『竜馬がゆく』『国盗り物語』『坂 の上の雲』『空海の風景』『翔ぶが如く』など構想の雄大さ、自在で明晰な視座による作品を多数発表。この他『街道をゆく』『風塵抄』『この国のかたち』な どの紀行、エッセイも多数。’96年逝去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 司馬遼太郎と寺社を歩く (ISBN-13: 978-4334747213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2010年4月15日に日本でレビュー済み
最近は、短編など手軽に読めるものを好んで読みます。
長いと、気合も必要だし、少し面倒になってきていて・・・。
司馬遼太郎は、長編のイメージが強いですが、短編もすばらしい。
僕が感じるこの作家の最大の魅力は、竹を割ったかのような快活な文体だと思います。
読んでいて、爽快感があり、大好きです。
この短編集でも、それを存分に味わうことができます。
伊賀の忍者の短編が、かっこよかったです。
歴史に埋もれた、影の功労者・・・。
男はやっぱり、こういうのが好きなんです。
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読んでいて、爽快感があり、大好きです。
この短編集でも、それを存分に味わうことができます。
伊賀の忍者の短編が、かっこよかったです。
歴史に埋もれた、影の功労者・・・。
男はやっぱり、こういうのが好きなんです。
2004年12月30日に日本でレビュー済み
司馬さんらしく、男女の交歓を心理描写巧みに描き出している。「一夜官女」の岩見重太郎、「侍大将の胸毛」の渡辺勘兵衛らの戦国型武士の生きざまが、女性の視点からカッコよく描かれている。