安重根に関しては獄中の彼に接した日本人のうちの少なからぬ人たちが高潔な人柄に感銘を受けたというエピソードは知っていたがまとまった形で読んだのは初めて。伊藤博文が暗殺された駅のホームに行くほどの徹底した取材から浮かび上がる人物像や暗殺へと至る経緯は実に読み応えがある。ただ、他の方も指摘しているが本の構成が読みにくいのは残念。
菅官房長官が数年前に安重根をテロリストだと断じたことがあったが「テロ」が極悪人というイメージを植え付けそもそも何故そのような行動に至ったのか考えることを妨げる、思考停止の道具としてしばしば使われるのはそれ以前もあったが9/11以降より露骨になっていった。思考停止から脱するための薬として一読を勧めたい（なのに現時点では古本でしか入手できないのは実に残念）。安と伊藤それぞれの正義について考えてみるのはそれからでも遅くないだろう。
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