鎌倉の或る地域が舞台。
離婚して、ライターの仕事をしながら息子を育てる主人公。(中野)(男性、40代前半)
その主人公を取り巻く兄妹、夫と別居して娘を育てるナッちゃんという女性。
ときどき訪れる風変わりな友人たち。
ストーリーがとくになく、日常が描かれている。
息子が訊く、大人でも答えを持っていない疑問。
子供を相手に、疑問に真摯に答える主人公。決して有耶無耶な答え方をせず、きちんと説明する。例えば宇宙の構造など。(例えばです。本文中にあったかどうか憶えてませんが)
息子と主人公の会話。大人と大人の議論的な会話。
小学校にあがる前から文字を教えるべきか、で議論する大人たち。敢えて、幼児に文字を教えないのには教えない意味がある、という主人公の考え。
主人公のなかには常に、物事に対する深い議論と考えがある。脳のなかで、いつもじっくりと考えている。主人公は、一般的な結論づけられている物事にも、常に疑問を持ち、自らの見解を持っている。
保坂氏は、哲学、いや特に心理学を意識して議論的な会話部分を書かれたのかな、と途中から思いました。
子育てを経験していない僕にはリアリティーが出せないので、僕には書けない作品かな、と思います。
自分が子供の頃をも思い出させる、ほのぼのとした小説でした。
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季節の記憶 (中公文庫 ほ 12-1) 文庫 – 1999/9/1
保坂 和志
(著)
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第33回(1997年) 谷崎潤一郎賞受賞
- 本の長さ376ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1999/9/1
- ISBN-104122034973
- ISBN-13978-4122034976
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1999/9/1)
- 発売日 : 1999/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 376ページ
- ISBN-10 : 4122034973
- ISBN-13 : 978-4122034976
- Amazon 売れ筋ランキング: - 244,399位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1956年、山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞。その他の著書に『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2002年8月20日に日本でレビュー済み
日常のありふれたおしゃべりに他者の知性を感じつつも、気に留めた理由までは把握できず、もどかしい思いをした経験はないだろうか。この物語においてそういった解読されざる叙情は、登場人物たちによっていちいち哲学され、主人公である「僕」の、しかし、自分が「神の声」の立場にないと自覚されたナレーションで丁寧に解説される。その繰り返しが醸し出すリズムこそ、オブジェを持たないこの作品の柱であり、読者に向けられた「世界を客観的にイメージする」ためのレッスンだ。正確な世界認識を持つ柄杓は、井戸の蛙を引きずり出すだろう。
でも、ここから小さな声を打ち付けておく…
「ある種の傲慢かつまらないメルヘン趣味」なんて言われちゃってる唯脳論、君は読者に対してやさしかった。解釈の理由は君に保証されていた。忘れないよ。
でも、ここから小さな声を打ち付けておく…
「ある種の傲慢かつまらないメルヘン趣味」なんて言われちゃってる唯脳論、君は読者に対してやさしかった。解釈の理由は君に保証されていた。忘れないよ。
2019年8月30日に日本でレビュー済み
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初めの方は、面白く読めるのだろうかと思いつつ読んでましたがだんだん引き込まれていきました。鎌倉には高校の修学旅行ですから50年前になります全然覚えてないですが、鎌倉の風景、情緒ある町並み、海岸の景色、想像して読んでました。行きたい気持ちが募った程です。読み終わり余韻が残り続編を探しましたが廃番になっていて残念です。
2019年10月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
見事に何も起こらない小説です。そこに繰り広げられるのは、稲村ヶ崎周辺の景色と、5歳の息子の疑問に端を発する大人たちの議論。これがどうでもいいようでもあり、妙に哲学的でもあるのが面白い。理屈っぽいのが苦手な人には辛いかもしれませんが、私には楽しめました。
2012年5月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今さら私が言う程のことではないですが。
最近、本屋の販促ポップなどで「一気に読める」「驚愕のラスト」などという言葉をよく見かけますが、この小説はその正反対です。
特になにも起こらない、ただ稲村ケ崎の美しい風景の中で登場人物たちが、考え、しゃべり、生活しています。
先が気になって徹夜で読んでしまうとかいうわけでは全くなく、毎日、電車の中やお風呂で、寝る前などに数ページ、という感じで読み進めていきましたが、1文1文がなんとなく楽しく、「読書というのはストーリーが知りたくてするわけではなくて、時間を楽しみたいからする行為だったんだな」と改めて感じました。
ラストシーンで涙ぐんでしまったのは自分でも意外でした。何気ない毎日の積み重ねの物語がキュンと切ないのは、いつかそれが終わってしまうという大前提があるからでしょうか。
こんな環境で子供時代を過ごすクイちゃんが羨ましいな。読み終わって、日常の一部がぷつっと消えてしまったように寂しくてたまらなったので、後編があるときいてとても嬉しいです。でもそれも読み終わっちゃったら本当に悲しくなっちゃいそうなので、いつ読み始めるか悩んでしまいます。
最近、本屋の販促ポップなどで「一気に読める」「驚愕のラスト」などという言葉をよく見かけますが、この小説はその正反対です。
特になにも起こらない、ただ稲村ケ崎の美しい風景の中で登場人物たちが、考え、しゃべり、生活しています。
先が気になって徹夜で読んでしまうとかいうわけでは全くなく、毎日、電車の中やお風呂で、寝る前などに数ページ、という感じで読み進めていきましたが、1文1文がなんとなく楽しく、「読書というのはストーリーが知りたくてするわけではなくて、時間を楽しみたいからする行為だったんだな」と改めて感じました。
ラストシーンで涙ぐんでしまったのは自分でも意外でした。何気ない毎日の積み重ねの物語がキュンと切ないのは、いつかそれが終わってしまうという大前提があるからでしょうか。
こんな環境で子供時代を過ごすクイちゃんが羨ましいな。読み終わって、日常の一部がぷつっと消えてしまったように寂しくてたまらなったので、後編があるときいてとても嬉しいです。でもそれも読み終わっちゃったら本当に悲しくなっちゃいそうなので、いつ読み始めるか悩んでしまいます。
2008年6月23日に日本でレビュー済み
この小説を長編大河散歩小説と呼んだのは保坂氏本人です。
独特の長いセンテンス、稲村ケ崎に流れる穏やかで雄大な時間、なんとも愛らしい登場人物、等々。
すっかり保坂ワールドに引き込まれてしまいます。
登場するロケーションは全て実在の場所で、私の家が割と近い事もあるのだけれど、読み進めていくと実際の風景がイメージされて、とても優しい気分にしてくれます。
たしかに読むのには根気がいる。
もしかしたら途中で嫌になってしまう人もいるのかもしれないけれど、大好きな人にはこれを読んでもらって感想を聞きたくなる。感性の接点があるかどうか知りたいのです。
長いセンテンスに関しては、文章の最後が「た」で終わるのがどうしても気になってしまい、そこを回避するために「〜なのだけれど」や「ところで」の様な妙な繋ぎになっているらしいです。
独特の長いセンテンス、稲村ケ崎に流れる穏やかで雄大な時間、なんとも愛らしい登場人物、等々。
すっかり保坂ワールドに引き込まれてしまいます。
登場するロケーションは全て実在の場所で、私の家が割と近い事もあるのだけれど、読み進めていくと実際の風景がイメージされて、とても優しい気分にしてくれます。
たしかに読むのには根気がいる。
もしかしたら途中で嫌になってしまう人もいるのかもしれないけれど、大好きな人にはこれを読んでもらって感想を聞きたくなる。感性の接点があるかどうか知りたいのです。
長いセンテンスに関しては、文章の最後が「た」で終わるのがどうしても気になってしまい、そこを回避するために「〜なのだけれど」や「ところで」の様な妙な繋ぎになっているらしいです。
2007年2月27日に日本でレビュー済み
登場人物のひとりひとりにとって、かけがえのない「時間」が流れていく様子を、その楽しさもやるせなさも、それと指摘することなくそのまま描いた作品です。読むこちらの「時間」の流れまで見つめ直させてくれます。
2003年10月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
さらっと読めるのに心に残る物語で、以前に読んだのですが、息子が生まれてからもう一度読みたくなって買いました。
登場人物がとても魅力的ですし、特に主人公の、息子に対する真面目でのんびりした接し方が素敵です。こどもに「どうして?」と、問い掛けられてどう答えるか、そんなことを考えながら読むのも楽しかったです。子どもの成長とともに、手元に置いておきたいと思わせる本でした。
登場人物がとても魅力的ですし、特に主人公の、息子に対する真面目でのんびりした接し方が素敵です。こどもに「どうして?」と、問い掛けられてどう答えるか、そんなことを考えながら読むのも楽しかったです。子どもの成長とともに、手元に置いておきたいと思わせる本でした。