「國語改革」つて何か知つてゐますか? と尋ねても、知らない、との答へが返つてくるのが普通です。
恐ろしいことだと思ふ。
昭和二十一年以降の國語政策によつて、日常目にし、自分の書きもする表記が變へられたことに日本人である我々は無自覺だし、學校の授業でも教はらない。それどころか戰前の文章をずたずたに改竄して、つまり現在の新漢字・「現代仮名遣い」に〈直して〉公教育に用ゐる始末です。
本書によつて明治の國語問題から戰後の國語改惡についての概要を知ることが出來ます。また執筆陣である文學者によつて、國語恢復の方策も提言されてゐます。みなユニークかつ本質を衝いた論理的な文章です。
最後の丸谷才一による「言葉と文字と精神と」は壓卷。冒頭に曰く、
「国語改革が必要だといふ理由は、究極のところ、二つだつた。第一は、文字がむづかしすぎてとても覚えきれないから易しくしようといふことであり、第二は、むづかしい文字ではタイプライターやコンピューターが使へないし印刷にも困るといふことだつた。整理してしまへばこの二つが主なもので、あとは付随的なものにすぎなかつたのである。あれほどの大変革がたつたこれだけの理由でおこなはれたと聞くと、何か信じがたいやうな気がするかもしれないが、本当にこれだけだつたのだから仕方がない。現代日本人はこの二つの事由のために、漢字を制限し、新字を作り、歴史的仮名づかひを廃して新仮名づかひに切替へ、送りすぎの送り仮名法を定めたのである。」
第一の理由はふざけた話で、教師と生徒の双方向的怠慢ですね。
電算機器が發達普及してゐる今日、第二の理由は成り立たない。むしろ個人PCで完璧な正字を出さうとしても、「国語改革」による漢字制限が邪魔をして苦労させられます。
本書は 『日本語の世界 16 国語改革を批判する』 として昭和五十八年に出たものの文庫版ですが、日本語表記が現在のままであるかぎり有用でありつづけるでことでせう。
本書に觸發された方には、是非とも福田恆存『私の國語教室』(文春文庫、他)もお薦めです。
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国語改革を批判する (中公文庫 ま 17-10) 文庫 – 1999/10/1
丸谷 才一
(編集)
- 本の長さ476ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日1999/10/1
- ISBN-104122035058
- ISBN-13978-4122035058
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (1999/10/1)
- 発売日 : 1999/10/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 476ページ
- ISBN-10 : 4122035058
- ISBN-13 : 978-4122035058
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