本読みは、一度興味を持った著者の本は棚の中から浮かび上がって呼び寄せられることがある。
著者山本氏の「江戸お留守居役の日記」を手に取って、不勉強で全く知らなかったが強く惹きつけられた。
庶民を中心に回っていた江戸は多くの本が巷に出回っているものの、武士の世界の興味深さに踏み込んで
エンターテイメントとして素人が楽しめる本は少なく、楽しく読み終えた。以来、書店に足を運ぶと山本
博文氏の著述が本棚で目につく。
古本屋の棚に「江戸城の宮廷政治」と「鳶魚で江戸を読む」の2冊が置いてあり、すぐに両方手に取った。
まずは、「鳶魚」から。
明治生まれ昭和の時代まで長い間、江戸を書き続けて大部かつ多様な江戸研究の書物群を残した人だ。
彼「鳶魚の江戸文庫」全集を中公文庫に収録するにあたって、監修・解説担当などを山本氏が行ったが、
この際、全てを読み直し、もう一度「鳶魚のとらえた江戸時代」を位置づけ、評価したものがこの本。
やはり、鳶魚が下級武士の子であったせいもあるが、武士を(思想、生活信条、実際の生活など)核に
江戸時代を見ている視線に、山本氏と同じ気風を感じるところもあり、杉浦日名子さんの庶民の暮らし
が主体に描かれた著書の対角線にあるけれど、全く違った面白さがある。
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鳶魚で江戸を読む: 江戸学と近世史研究 (中公文庫 や 44-5) 文庫 – 2005/10/1
山本 博文
(著)
「生きた江戸百科辞典」と称された三田村鳶魚とは……。江戸学の開祖鳶魚と対極にある近世史家が、アカデミズムの側から、現代歴史学の目で鳶魚の業績を辿りつつ、その人物像をさぐる
- 本の長さ252ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2005/10/1
- ISBN-104122045991
- ISBN-13978-4122045996
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2005/10/1)
- 発売日 : 2005/10/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 252ページ
- ISBN-10 : 4122045991
- ISBN-13 : 978-4122045996
- Amazon 売れ筋ランキング: - 939,790位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2022年11月5日に日本でレビュー済み
2000年に出た単行本の文庫化。
『江戸を楽しむ-三田村鳶魚の世界』の続刊。もともと中公文庫の「鳶魚江戸文庫」シリーズの各巻解説として書かれた文章が一冊にまとめられている。
今回は、前巻と違って鳶魚にひきつけた内容だ。まず鳶魚の生涯が詳しく紹介されていき、鳶魚のひととなりや仕事について知ることができる。そのあとも、泥棒、目明かし、側用人、遊女、札差などを切り口として、鳶魚の仕事の再評価が試みられ、いかに優れた歴史家だったかが明らかにされていく。
さらに重ねて、著者自身の広い視野と、透徹した眼差しによって、江戸文化がくっきりと見えてくる。
『江戸を楽しむ-三田村鳶魚の世界』の続刊。もともと中公文庫の「鳶魚江戸文庫」シリーズの各巻解説として書かれた文章が一冊にまとめられている。
今回は、前巻と違って鳶魚にひきつけた内容だ。まず鳶魚の生涯が詳しく紹介されていき、鳶魚のひととなりや仕事について知ることができる。そのあとも、泥棒、目明かし、側用人、遊女、札差などを切り口として、鳶魚の仕事の再評価が試みられ、いかに優れた歴史家だったかが明らかにされていく。
さらに重ねて、著者自身の広い視野と、透徹した眼差しによって、江戸文化がくっきりと見えてくる。
2013年3月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
おもしろい歴史エッセイとして読むこともできるが、現代の歴史学に三田村鳶魚の業績をどのように採り入れていくかを探っている論考としても読むことができる。
『鳶魚江戸文庫』(中公文庫)の解説を本にしたものである。
著者は、鳶魚の吉原研究を特に高評価していて、この分野の基礎とすべき研究であるとしている。また、鳶魚は、様々な市井の事件・出来事を研究し、その史実の背後にある社会構造を見通す透徹した視線を持っているとしている。
著者の本『徳川将軍15代 264年の血脈と抗争』(小学館101新書)では、三田村鳶魚の文章からの引用が四つある。
『鳶魚江戸文庫』(中公文庫)の解説を本にしたものである。
著者は、鳶魚の吉原研究を特に高評価していて、この分野の基礎とすべき研究であるとしている。また、鳶魚は、様々な市井の事件・出来事を研究し、その史実の背後にある社会構造を見通す透徹した視線を持っているとしている。
著者の本『徳川将軍15代 264年の血脈と抗争』(小学館101新書)では、三田村鳶魚の文章からの引用が四つある。
2012年10月11日に日本でレビュー済み
江戸時代を舞台にした時代小説を書く作家達が参考にするという、三田村鳶魚の江戸論を判りやすく解説してあります。
鳶魚の江戸論は、当時の随筆を資料にしているということで、近世史学者からはあまり重視されてこなかったらしいですが、「何故それは起こったのか」その背景(世相や政策)まで一次資料を使って掘り下げていることなども紹介されています。
鳶魚の江戸論は、当時の随筆を資料にしているということで、近世史学者からはあまり重視されてこなかったらしいですが、「何故それは起こったのか」その背景(世相や政策)まで一次資料を使って掘り下げていることなども紹介されています。
2022年8月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
〇 本書は、三田村鳶魚の書いた文章を手掛かり足掛かりとして江戸時代の政治、社会の実相に迫ろうという本。江戸情緒をたっぷりと味わえるのではないかというわたしの勝手な期待(カバー表紙の素敵な絵も罪だ)はすっかり外れてしまった。「江戸っ子」なぞは、19世紀に入って下層民が芝居にかぶれて威勢がよくなったもので「馬鹿か気違いかわからぬようなもの」だと読んだときにはちょっとショックを受けた。
〇 在野の江戸研究家三田村鳶魚は、歴史学者の間ではともすると軽んじられてきたようだ。鳶魚の江戸研究と正規の歴史学とを橋渡しして鳶魚の業績に正当な評価を与えたい、というのが著者(正規の歴史学者である)の意図らしい。わたしは今回はじめて鳶魚の仕事を知った。
〇 三田村鳶魚の著作について折に触れて書いた14篇の文章だから、決して体系的とは言えないが、そうだったのかとうれしくなるような話がいくつも出て来る:
・・ たとえば、吉原の遊客を調べると、羽振りの良い階層の変遷がわかる。江戸初期は三河武士、それから旗本奴、諸国代官、豪商、札差と変遷する。つまり、中央武士、地方武士、商業者、金融者と稼ぎ頭は変わって行った。
・・ また、幕末に強気の意見書を提出して国事に積極的に関与しようとした大名を見ると、徳川家斉の子を養子や嫁として受け入れた藩が多い。津山藩松平、福井松平、徳島蜂須賀、鳥取池田、明石松平である。彼らは徳川氏の血統を意識して使命感を持って行動を起こしたのだろう。
・・ また、江戸で火事が起きると家持ちは資産を失う一方で、借家住まいの大工や職人は何も失わず、その後の復興特需で良い仕事にありついた。こうして貧富の差が狭まったのだが、火事が江戸の花と言われたのにはこういう事情もあったらしい。
〇 ひとつだけ難点を言えば、山本先生、時々ちょっとだけ文章の歯切れがわるいような気がする。やっぱり鳶魚江戸学と正規の歴史学との間に立つと迷うことが多いのだろうか。
〇 在野の江戸研究家三田村鳶魚は、歴史学者の間ではともすると軽んじられてきたようだ。鳶魚の江戸研究と正規の歴史学とを橋渡しして鳶魚の業績に正当な評価を与えたい、というのが著者(正規の歴史学者である)の意図らしい。わたしは今回はじめて鳶魚の仕事を知った。
〇 三田村鳶魚の著作について折に触れて書いた14篇の文章だから、決して体系的とは言えないが、そうだったのかとうれしくなるような話がいくつも出て来る:
・・ たとえば、吉原の遊客を調べると、羽振りの良い階層の変遷がわかる。江戸初期は三河武士、それから旗本奴、諸国代官、豪商、札差と変遷する。つまり、中央武士、地方武士、商業者、金融者と稼ぎ頭は変わって行った。
・・ また、幕末に強気の意見書を提出して国事に積極的に関与しようとした大名を見ると、徳川家斉の子を養子や嫁として受け入れた藩が多い。津山藩松平、福井松平、徳島蜂須賀、鳥取池田、明石松平である。彼らは徳川氏の血統を意識して使命感を持って行動を起こしたのだろう。
・・ また、江戸で火事が起きると家持ちは資産を失う一方で、借家住まいの大工や職人は何も失わず、その後の復興特需で良い仕事にありついた。こうして貧富の差が狭まったのだが、火事が江戸の花と言われたのにはこういう事情もあったらしい。
〇 ひとつだけ難点を言えば、山本先生、時々ちょっとだけ文章の歯切れがわるいような気がする。やっぱり鳶魚江戸学と正規の歴史学との間に立つと迷うことが多いのだろうか。