この本を手にしたときは、てっきり会社関連の本ばかりだと思ったが、全然違った。
作者はなぜこれほどまでに「馬鹿」が世界に蔓延しているのかを、哲学者と作者の書簡のやり取りという形式で話が進む。
蔓延する理由の推論として、進化論から生物学、社会学、組織論と話は多岐に渡る。科学的な検証というにはほど遠いが、非常に示唆に富んでおり、多くの人が唸らされるのではないだろうか。
本著を読んで、「馬鹿」についてではなく、悪人が供給過剰なほど現れるのはなぜかという序文が書かれたOxford Univesity発行の本を思い出した(書名は失念)。
なぜ賢者よりも愚者の方が供給過剰なのか。
なぜ善人よりも悪人の方が供給過剰なのか。
なぜ富者よりも貧者の方が供給過剰なのか。
こんな問いに答えてくれる本が欲しくなる。
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愚か者ほど出世する (中公文庫 ア 7-1) 文庫 – 2007/5/1
- 本の長さ221ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2007/5/1
- ISBN-10412204863X
- ISBN-13978-4122048638
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2007/5/1)
- 発売日 : 2007/5/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 221ページ
- ISBN-10 : 412204863X
- ISBN-13 : 978-4122048638
- Amazon 売れ筋ランキング: - 880,702位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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Krokodil Gena
個人が持つ知性は人間の生き残りにとってもはや邪魔者でしかない。細かいところまで制度が浸透すればするほど、社会は構成員の知性を疎んじるようになる。それでも人類に希望を託そうとする教授と、でもやっぱりもうダメなんじゃないかと思う著者の往復書簡に基づいて書かれた本書は、今の時代に日本で出版されたら間違いなく発禁になりそうな過激な表現で満ちている。
コリン310
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教訓的な話としてはどうだろうか。イカルスは太陽の熱で翼を溶かしてしまう。確かに象徴的な人間の愚かさなのかもしれない。人間の科学の行く先も、そういう懸念に満ちているという感じがしないでもない。原子爆弾や遺伝子操作。行き着く先はきわめて危なっかしい。
そういう神話を作ったのは誰か。過去の人間は優れていたから滅んだのか。それとも僕らとつながっているのか。そういうことを考えてしまう。神話は今の世界でも応用がきく。そういうことなら話は分かる。過去の教訓は現在だからこそ活きる場合がある。結局はそれは選択しているからである。過去の経験を誰が体験したのか。過去の人間のように想像力が働くならば、今の人間が道を間違うことは無いようにも思える。しかしながら人間は容易に過去を忘れることができるので、また容易に道も踏み外すのである。しかしそれは時期にもよる。正しいと思っていた道が、後になって考えてみると間違っていたということもあるのである。
愚か者が世界を席巻し滅ぼさないうちに賢者は革命を起こすべきなのか。勿論愚か者にその理屈が分かるわけが無い。賢者革命は目的を達成できない。そういうジョークを楽しみたい人は、こういう理屈に付き合って自分なりの考え方を洗練するのもいいだろう。少なくとも西洋人はかなり皮肉が好きらしい。行き着くところはこういう厭世観にもつながるものらしいのである。
そういう神話を作ったのは誰か。過去の人間は優れていたから滅んだのか。それとも僕らとつながっているのか。そういうことを考えてしまう。神話は今の世界でも応用がきく。そういうことなら話は分かる。過去の教訓は現在だからこそ活きる場合がある。結局はそれは選択しているからである。過去の経験を誰が体験したのか。過去の人間のように想像力が働くならば、今の人間が道を間違うことは無いようにも思える。しかしながら人間は容易に過去を忘れることができるので、また容易に道も踏み外すのである。しかしそれは時期にもよる。正しいと思っていた道が、後になって考えてみると間違っていたということもあるのである。
愚か者が世界を席巻し滅ぼさないうちに賢者は革命を起こすべきなのか。勿論愚か者にその理屈が分かるわけが無い。賢者革命は目的を達成できない。そういうジョークを楽しみたい人は、こういう理屈に付き合って自分なりの考え方を洗練するのもいいだろう。少なくとも西洋人はかなり皮肉が好きらしい。行き着くところはこういう厭世観にもつながるものらしいのである。
遅読猫
この本の主張は次の一文に要約されている。
「自然は、いや、とくに文化はつまりわれわれの社会は、人間の知的資質を強化する働きをせず、それどころか組織的に抑圧しているということです」p215
「われわれの社会」が知性を「抑圧している」ということは、まあ、あるかもしれない。
しかし、著者は「自然」、つまり進化も、現在では人間の知性を衰えさせ、結果、バカを増やしている、とも主張して、それを科学的に裏付けようとしている、のだが…。
「端的に言おう。人間は動物の一員にすぎないなら、なぜほかの動物を観察するように観察しないのだろうか。オオカミやガチョウ相手にするのと同じ科学的な基準で、しかるべき距離をおいてその行動を判断しないのは、いったいどうしたわけだろうか」p21
著者がこの疑問を抱いたのは、コンラート・ローレンツが亡くなる(1989年)直前のこと。
一方、社会生物学論争の発端となった、エドワード・オズボーン・ウィルソンの著書「社会生物学」が著されたのは1975年。
にもかかわらず、最後まで著者が社会生物学に言及することがないのは、いったいどうしたわけだろうか。
「自然淘汰は種の存続というただひとつの目的のために働くということだ」p65
著者は、そして論争相手の哲学者も、「自然淘汰」を、例えば会社を存続させるための入社試験のようなものだと考えているらしい。
「それらの情報のすべてが、二重らせんの蛋白質の鎖から成る大きな分子DNAのなかに収まっているのだ。…驚嘆すべき結果が出たのは、人間にもっとも近い類人猿と人間とを比較したときだった。方法は人間の血液中の蛋白質の分子とチンパンジーのそれとの比較だ。両者の違いはごくわずかだった。人間の遺伝形質とチンパンジーのそれとの違いは二パーセントにもならなかった」p193
「蛋白質の鎖から成るDNA分子」って?、蛋白質やDNAがなんなのかもまったく理解していない…。
ほかにも、アルツハイマー病は進化による知力低下のメカニズムで説明できる、等々、もう滅茶苦茶。
著者の主張通り、進化論的要因もバカの増加に関係しているとしても、それは、現在では社会あるいは文化が守ってくれるおかげで、バカにかかる淘汰圧が弱くなっているから、というただそれだけの話ではなかろうか。
ところで、最後のほうに、
「[NASAの]連中が、それまでにつくられた人工衛星のなかでもっとも精巧なものに、見たところ嘘みたいだが彼らにはそうは思えないある仕事を任せたのだ。このことは、その野心的なプロジェクトを進めたトレンス・ジョンソンが記者会見で世界中にその結果を鼻高々に語ったことから判明した。彼は言ったのだ。「たしかな情報があります。宇宙ロボットが、地球上に知的生物が生存する証拠を示してくれました。」…宇宙ロボットが、地球上に知的生物の実跡があるとたしかめるまでに、なんと三年の月日を要したのだ」p220
…と、あるんですけど、これはいったいなんなんでしょう?
こんな発表、本当にあったんですかね。
「自然は、いや、とくに文化はつまりわれわれの社会は、人間の知的資質を強化する働きをせず、それどころか組織的に抑圧しているということです」p215
「われわれの社会」が知性を「抑圧している」ということは、まあ、あるかもしれない。
しかし、著者は「自然」、つまり進化も、現在では人間の知性を衰えさせ、結果、バカを増やしている、とも主張して、それを科学的に裏付けようとしている、のだが…。
「端的に言おう。人間は動物の一員にすぎないなら、なぜほかの動物を観察するように観察しないのだろうか。オオカミやガチョウ相手にするのと同じ科学的な基準で、しかるべき距離をおいてその行動を判断しないのは、いったいどうしたわけだろうか」p21
著者がこの疑問を抱いたのは、コンラート・ローレンツが亡くなる(1989年)直前のこと。
一方、社会生物学論争の発端となった、エドワード・オズボーン・ウィルソンの著書「社会生物学」が著されたのは1975年。
にもかかわらず、最後まで著者が社会生物学に言及することがないのは、いったいどうしたわけだろうか。
「自然淘汰は種の存続というただひとつの目的のために働くということだ」p65
著者は、そして論争相手の哲学者も、「自然淘汰」を、例えば会社を存続させるための入社試験のようなものだと考えているらしい。
「それらの情報のすべてが、二重らせんの蛋白質の鎖から成る大きな分子DNAのなかに収まっているのだ。…驚嘆すべき結果が出たのは、人間にもっとも近い類人猿と人間とを比較したときだった。方法は人間の血液中の蛋白質の分子とチンパンジーのそれとの比較だ。両者の違いはごくわずかだった。人間の遺伝形質とチンパンジーのそれとの違いは二パーセントにもならなかった」p193
「蛋白質の鎖から成るDNA分子」って?、蛋白質やDNAがなんなのかもまったく理解していない…。
ほかにも、アルツハイマー病は進化による知力低下のメカニズムで説明できる、等々、もう滅茶苦茶。
著者の主張通り、進化論的要因もバカの増加に関係しているとしても、それは、現在では社会あるいは文化が守ってくれるおかげで、バカにかかる淘汰圧が弱くなっているから、というただそれだけの話ではなかろうか。
ところで、最後のほうに、
「[NASAの]連中が、それまでにつくられた人工衛星のなかでもっとも精巧なものに、見たところ嘘みたいだが彼らにはそうは思えないある仕事を任せたのだ。このことは、その野心的なプロジェクトを進めたトレンス・ジョンソンが記者会見で世界中にその結果を鼻高々に語ったことから判明した。彼は言ったのだ。「たしかな情報があります。宇宙ロボットが、地球上に知的生物が生存する証拠を示してくれました。」…宇宙ロボットが、地球上に知的生物の実跡があるとたしかめるまでに、なんと三年の月日を要したのだ」p220
…と、あるんですけど、これはいったいなんなんでしょう?
こんな発表、本当にあったんですかね。
gachiuri
この本は、人間がバカになりつつあるという話について、いろいろな例を取り上げてみている例である。
科学的内容といった感じはなく、かなり強引な論理を駆使したり、いろいろな例を挙げて、よればよるほどバカになるとか面白い話を展開している本だった。
ただ、社会の中で、個性をつぶされずに、生きていくにはどうしたらいいかとか、ちょっと、マジメに考えてしまうような話もなかには散見された。
養老氏も書いているとおり、この本自体かなりおバカである。もし、著者が、こういう主張を、科学的な方法といった装いでなしたならば、私も、穏やかに読んでられなかったと思うが、バカっぽい主張でシニカルにかいているからこそ、面白く読めた。
ただし、引用された科学の内容はかなりでたらめなものが混じっており(例えば、チンパンジーとヒトの分岐が150万年前だとか)、それはさすがによくないのではないかと感じた。
科学的内容といった感じはなく、かなり強引な論理を駆使したり、いろいろな例を挙げて、よればよるほどバカになるとか面白い話を展開している本だった。
ただ、社会の中で、個性をつぶされずに、生きていくにはどうしたらいいかとか、ちょっと、マジメに考えてしまうような話もなかには散見された。
養老氏も書いているとおり、この本自体かなりおバカである。もし、著者が、こういう主張を、科学的な方法といった装いでなしたならば、私も、穏やかに読んでられなかったと思うが、バカっぽい主張でシニカルにかいているからこそ、面白く読めた。
ただし、引用された科学の内容はかなりでたらめなものが混じっており(例えば、チンパンジーとヒトの分岐が150万年前だとか)、それはさすがによくないのではないかと感じた。
だどん
人間が(というよりも、自分が)物事を考えなくなることの理由が、理路整然と説かれていて面白い反面、人間が必然的にバカになっていくという落ちにちょっと微妙なものを感じてしまいました。
話は、著者であるジャーナリスト(バカ必然派)と、人間の知性を信じる哲学者との交換書簡、見たいな感じで進みますが、著者の「のさばるのはバカばかり」と言い切るシニカルさが妙に納得してしまいます。(身近にあるからでしょうか、それとも自分自身がそうだからでしょうか?)
「バカの壁」の養老先生も褒めているとおり、読む価値のある一品だと思います。
話は、著者であるジャーナリスト(バカ必然派)と、人間の知性を信じる哲学者との交換書簡、見たいな感じで進みますが、著者の「のさばるのはバカばかり」と言い切るシニカルさが妙に納得してしまいます。(身近にあるからでしょうか、それとも自分自身がそうだからでしょうか?)
「バカの壁」の養老先生も褒めているとおり、読む価値のある一品だと思います。
sparerib
本著で知った科学的事実は一つだけ。
「現代の人類は類人猿の時代と比較すれば、脳みその総量が減って来ている」
そりゃそうです。だって、獲物を追いかけなくてもいい、明日の天気を自分で予想しなくていい、
狩りの道具を自作しなくてもいい、猛獣から身を護らなくてもいい、遠くまで移動するのに歩いて
行かなくてもいい、離れた相手と音声信号で話ができる、自分の失敗をコトバ一つで誤魔化そうと
思えば誤魔化せる(笑・・)。退化するのが当然ですね。。
陥穽だらけの現代社会に適応し過ぎる愚か者になるくらいならば、気持ちだけは原始人類の視点に
戻り「市井の哺乳類」である事実を忘れず愚直に生きることにしているレビュワーは、他人様から
「阿呆!」と呼ばれるのを逆に誇りに思うことにしています。
内心、「フン!だ。愚か者には阿呆のやる事は理解できるわけがないぜ」呟きながらですが(笑)。。
「現代の人類は類人猿の時代と比較すれば、脳みその総量が減って来ている」
そりゃそうです。だって、獲物を追いかけなくてもいい、明日の天気を自分で予想しなくていい、
狩りの道具を自作しなくてもいい、猛獣から身を護らなくてもいい、遠くまで移動するのに歩いて
行かなくてもいい、離れた相手と音声信号で話ができる、自分の失敗をコトバ一つで誤魔化そうと
思えば誤魔化せる(笑・・)。退化するのが当然ですね。。
陥穽だらけの現代社会に適応し過ぎる愚か者になるくらいならば、気持ちだけは原始人類の視点に
戻り「市井の哺乳類」である事実を忘れず愚直に生きることにしているレビュワーは、他人様から
「阿呆!」と呼ばれるのを逆に誇りに思うことにしています。
内心、「フン!だ。愚か者には阿呆のやる事は理解できるわけがないぜ」呟きながらですが(笑)。。
朝吹龍一朗
あの養老先生が序文を書いています。さすが「バカの壁」の著者です。この本の主張は「人間はだんだんバカになっている」である。丹念に事実(とおぼしき言説)を積み上げていく。相方に設定されているオーストリアの哲学者が
「文化こそが人類が進歩している証拠」とのたまうと、すかさず、
「文化があるからこそ、人間社会のあらゆるメンバーが、もっとも優秀な人と同じことができる」と切り返します。
最後は「目指す方向がわからない者ほど堂々と進んでいく」と締めくくられます。
マイナーな本ですが、図書館で探す価値大です。
「文化こそが人類が進歩している証拠」とのたまうと、すかさず、
「文化があるからこそ、人間社会のあらゆるメンバーが、もっとも優秀な人と同じことができる」と切り返します。
最後は「目指す方向がわからない者ほど堂々と進んでいく」と締めくくられます。
マイナーな本ですが、図書館で探す価値大です。