「歴史にifは禁物」とはポピュラーな謂だが、
実証史家で好著の多い秦郁彦氏による
「絶対不敗は可能だったか?」ほか、
先の大戦における計10篇の「if」を収録する本書。
禁物であるはずの「if」を設定することで
見えてくる戦訓・教訓。
本書各章の「if」は、それぞれ
勝てるはずもない戦に突入した愚かさを炙り出す。
[ハワイ作戦]及び[ミッドウェー作戦]を、
出版社の会議室で実際に図上演習した模様を収録した章や、
日本本土上陸作戦[オリンピック作戦]及び[コロネット作戦]
が実施された場合を考察した章の迫力は、一読に値する。
しかし本書が、表紙にある通り「序 半藤一利」「編 秦 郁彦」
であることはいま一度確認しておいた方がいい。
半藤氏によるテキストは「序」6頁のみ(図演に参加していたり、
本書の成り立ち全体に関わっていることは判るのだが)。
秦氏によるテキストは章ふたつである。
表紙のダブルネームは確かにその通りではあるが、
あざとさは禁じえない。
そしてこの二人を含めた延べ8名の著者による各章の構成には、
決まったフォーマットがないため読みづらく、
よって章ごとの質の差も目についてしまう。
この本が半藤氏と秦氏の共著であったなら、
或いはせめて対談集であったならば本書の数倍面白かっただろう、
という「if」が私の結論である。
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太平洋戦争のif: 絶対不敗は可能だったか? (中公文庫 は 36-9) 文庫 – 2010/6/1
秦 郁彦
(編集)
- 本の長さ339ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2010/6/1
- ISBN-104122053293
- ISBN-13978-4122053298
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2010/6/1)
- 発売日 : 2010/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 339ページ
- ISBN-10 : 4122053293
- ISBN-13 : 978-4122053298
- Amazon 売れ筋ランキング: - 969,770位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,852位中公文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年6月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著名な戦史家である泰郁彦氏の編纂ということで期待して読んでみたが、俗っぽいif本と何ら変わる所がなかった。読み応えがあったのは、ハワイ作戦とミッドウェー海戦の図演に関する部分のみ。残りは「ハワイ攻撃で第2次攻撃を実施していたら」とか「レイテ湾に栗田艦隊が突入していたら」といった語り尽くされたテーマばかりである。何故今更このような「手垢のついた」テーマでわざわざ書く必要があるのか、疑問に思った次第である。
2010年8月27日に日本でレビュー済み
太平洋戦争のあの時、あの場面でああしていれば、日本は・・・という仮説を展開することは、架空戦記の定番である。
日本人が「こうすれば勝てたのに」みたいなことを考えても、負け惜しみというか、「死児の齢を数える」的な繰り言になりがちで、なかなか生産的なものにならない。しかも、どんなに都合良くシミュレートしても、日本は個々の戦闘では勝利しえても、最終的にはアメリカに負けるという残念な結果しか出てこないので、日本をムリヤリ勝たせるために、タイムスリップなどのSF的設定によって未来の兵器・知識を登場させる戦記シミュレーション小説も少なくない。
本書はそうした御都合主義とは一線を画し、太平洋戦争の重要局面における“if”を採り上げ、史実と異なる戦局の展開があり得たかを、学術的に厳密に考察する。
たとえば、
○日本軍が第2段の進攻作戦を実施せずに、基地航空部隊による国防圏内における制空権の確立、海上護衛部隊によるシーレーン保護など守勢に回った場合、どうなったか?(秦郁彦「絶対不敗態勢は可能だったか」)
○太平洋戦争前に、ドイツに呼応する形で関東軍がソ連に侵攻していたら、どうなったか?(土門周平「日ソもし戦わば」)
○真珠湾攻撃において、山本五十六自身がハワイに出撃して現地指揮を取り、港湾施設や重油タンクの攻撃を命じていたら、どうなったか?(野村実「真珠湾攻撃 三つの想定」)
○イギリスを屈服させアメリカを孤立させるという当初の戦略構想に従い、ミッドウェーへ向かう代わりにインド・セイロン方面に進攻してたら、どうなったか?(秦郁彦「幻の北アフリカ進攻作戦」)
○アリューシャン攻略を延期し、ミッドウェー海戦に隼鷹・龍驤の2空母を参加させ、また史実では後衛の主力艦隊に配備されていた重巡群を赤城・加賀・蒼龍・飛龍の空母4隻の前に布陣させていたら、どうなったか?(野村実「ミッドウェー海戦の“イフ”」)
○第一次ソロモン海戦において、三川艦隊が泊地再突入を行い、アメリカの輸送船団を叩いていたら、どうなったか?(横山恵一「ガダルカナル戦に勝機はあったか」)
○レイテ沖海戦において、栗田艦隊が「謎の反転」をせずレイテ湾に突入していたら、どうなったか?(横山恵一「栗田艦隊、レイテ湾に突入す」)
○アメリカが原爆を用いないで、ダウンフォール作戦を決行していたら、どうなったか?(檜山良昭「日本本土決戦となれば」)
など、戦史研究や架空戦記小説において関心の的になってきた有名な「戦況の転換点」の数々を検証している。
この他にも、日本側が史実以上に不利になる可能性なども検討しており、客観的な分析となっている。
これらの論考は、可能性を積み上げることで日本の勝利を夢想して楽しむ類のものではなく、むしろ日本側が最善手を選び続けても勝つどころか「負けないままでいる」ことすら難しいことを論じている。そして、日米の国力差・物量差をうんぬんする以前に、史実における日本軍の戦略構想や作戦指揮が極めて拙劣であり、「負けるべくして負けた」ことを浮き彫りにしている。
名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』ほどではないが、「失敗学」的な視点が随所に見られ、得るところが多い良書であろう。
日本人が「こうすれば勝てたのに」みたいなことを考えても、負け惜しみというか、「死児の齢を数える」的な繰り言になりがちで、なかなか生産的なものにならない。しかも、どんなに都合良くシミュレートしても、日本は個々の戦闘では勝利しえても、最終的にはアメリカに負けるという残念な結果しか出てこないので、日本をムリヤリ勝たせるために、タイムスリップなどのSF的設定によって未来の兵器・知識を登場させる戦記シミュレーション小説も少なくない。
本書はそうした御都合主義とは一線を画し、太平洋戦争の重要局面における“if”を採り上げ、史実と異なる戦局の展開があり得たかを、学術的に厳密に考察する。
たとえば、
○日本軍が第2段の進攻作戦を実施せずに、基地航空部隊による国防圏内における制空権の確立、海上護衛部隊によるシーレーン保護など守勢に回った場合、どうなったか?(秦郁彦「絶対不敗態勢は可能だったか」)
○太平洋戦争前に、ドイツに呼応する形で関東軍がソ連に侵攻していたら、どうなったか?(土門周平「日ソもし戦わば」)
○真珠湾攻撃において、山本五十六自身がハワイに出撃して現地指揮を取り、港湾施設や重油タンクの攻撃を命じていたら、どうなったか?(野村実「真珠湾攻撃 三つの想定」)
○イギリスを屈服させアメリカを孤立させるという当初の戦略構想に従い、ミッドウェーへ向かう代わりにインド・セイロン方面に進攻してたら、どうなったか?(秦郁彦「幻の北アフリカ進攻作戦」)
○アリューシャン攻略を延期し、ミッドウェー海戦に隼鷹・龍驤の2空母を参加させ、また史実では後衛の主力艦隊に配備されていた重巡群を赤城・加賀・蒼龍・飛龍の空母4隻の前に布陣させていたら、どうなったか?(野村実「ミッドウェー海戦の“イフ”」)
○第一次ソロモン海戦において、三川艦隊が泊地再突入を行い、アメリカの輸送船団を叩いていたら、どうなったか?(横山恵一「ガダルカナル戦に勝機はあったか」)
○レイテ沖海戦において、栗田艦隊が「謎の反転」をせずレイテ湾に突入していたら、どうなったか?(横山恵一「栗田艦隊、レイテ湾に突入す」)
○アメリカが原爆を用いないで、ダウンフォール作戦を決行していたら、どうなったか?(檜山良昭「日本本土決戦となれば」)
など、戦史研究や架空戦記小説において関心の的になってきた有名な「戦況の転換点」の数々を検証している。
この他にも、日本側が史実以上に不利になる可能性なども検討しており、客観的な分析となっている。
これらの論考は、可能性を積み上げることで日本の勝利を夢想して楽しむ類のものではなく、むしろ日本側が最善手を選び続けても勝つどころか「負けないままでいる」ことすら難しいことを論じている。そして、日米の国力差・物量差をうんぬんする以前に、史実における日本軍の戦略構想や作戦指揮が極めて拙劣であり、「負けるべくして負けた」ことを浮き彫りにしている。
名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』ほどではないが、「失敗学」的な視点が随所に見られ、得るところが多い良書であろう。
2002年5月21日に日本でレビュー済み
太平洋戦争をめぐる重要局面でのイフを現代日本戦史研究の第一人者たちが書いた。
そうそうたるメンバーが書いており、それぞれの論にはそれなりに説得力がある。
太平洋戦争を考える上でこのような知的ゲームもたまにはいいかもしれない。
文体が論文調もあれば、小説風もあり、全体の統一感がないのが残念。
海大方式図上演習の再現は、現代のシミュレーション戦史ゲームに興味がある人にとってはなかなか面白い。
第四章に、日本軍がビルマで止まらず、インドから中東に侵攻し、ドイツと握手するifがあるが、これは面白いifだ。これを実現するには、日本もドイツも占領地を傀儡政権ではなく独立させる約束が必須になり、それは当時の全体主義・軍国主義国家だった両国とも不可能だったとは思う!が!...。もしそうできていたら、枢軸国が国際社会の支持を得ることができ、世界史は大きく変わったと思う。
そうそうたるメンバーが書いており、それぞれの論にはそれなりに説得力がある。
太平洋戦争を考える上でこのような知的ゲームもたまにはいいかもしれない。
文体が論文調もあれば、小説風もあり、全体の統一感がないのが残念。
海大方式図上演習の再現は、現代のシミュレーション戦史ゲームに興味がある人にとってはなかなか面白い。
第四章に、日本軍がビルマで止まらず、インドから中東に侵攻し、ドイツと握手するifがあるが、これは面白いifだ。これを実現するには、日本もドイツも占領地を傀儡政権ではなく独立させる約束が必須になり、それは当時の全体主義・軍国主義国家だった両国とも不可能だったとは思う!が!...。もしそうできていたら、枢軸国が国際社会の支持を得ることができ、世界史は大きく変わったと思う。
2010年12月11日に日本でレビュー済み
序文で半藤一利氏が巷の妄想的仮想戦記とは違う、と胸を張っているが、その割にはあまり説得力のない内容です。
例えばサマール島沖で栗田艦隊主力がタフィ3を追わずにレイテ湾に突入したら、というifでは、水雷戦隊と特攻機がタフィ1〜3を撃破して栗田艦隊が武藏・妙高を欠いた程度でレイテ湾に突入し、オルデンドルフ艦隊を撃滅してブルネイに帰還します。こんな日本軍に都合の良い展開は妄想としか思えません。
米本土上陸のifも酷く、ミッドウェイで勝ってハワイも占領するところまではともかく(それだけでも相当無理があると思いますが)、ハワイの工廠や重油タンクを無傷で手に入れる前提になっているところなど、あまりにも都合が良すぎます。
太平洋戦争の研究―こうすれば日本は勝っていた を以前読んだとき、アメリカ人の認識は随分御粗末だなぁと思ったものですが、日本の「研究者」も大して変わらないことに今回驚きました。
例えばサマール島沖で栗田艦隊主力がタフィ3を追わずにレイテ湾に突入したら、というifでは、水雷戦隊と特攻機がタフィ1〜3を撃破して栗田艦隊が武藏・妙高を欠いた程度でレイテ湾に突入し、オルデンドルフ艦隊を撃滅してブルネイに帰還します。こんな日本軍に都合の良い展開は妄想としか思えません。
米本土上陸のifも酷く、ミッドウェイで勝ってハワイも占領するところまではともかく(それだけでも相当無理があると思いますが)、ハワイの工廠や重油タンクを無傷で手に入れる前提になっているところなど、あまりにも都合が良すぎます。
太平洋戦争の研究―こうすれば日本は勝っていた を以前読んだとき、アメリカ人の認識は随分御粗末だなぁと思ったものですが、日本の「研究者」も大して変わらないことに今回驚きました。
2004年5月1日に日本でレビュー済み
歴史研究のタブーとされる『if』を敢えて持ち込むことで、、『当事者達はなぜその決断を下したか』『それ以外の選択肢はなかったのか』『他の選択をしていたらその後の歴史はどのように展開したのか』などのテーマについて考察を加え、太平洋戦争をより深い観点で研究しようとした力作。作家としても著名な研究家が執筆陣に名を連ねた事で、現実に起こり得た『もうひとつの仮想戦史』としても読み応えのある内容に仕上がっている。
厳密な図上演習を通じて指揮官たちの心境を執筆者自ら体験しようとするなど、巷にあふれる仮想戦記のような自らに都合のよい『if』は極力切り捨てて客観に徹している。特に本土決戦の『if』は戦争経験のない我々の世代でも、紙面からもその凄惨さを十分感じ取ることができる項であった。
やや残念だったのは戦艦同士の砲撃戦や機動部隊の対地攻撃能力を過大評価しているきらいがある点で、レイテ海戦などは『本当にそんなにうまくいったのか』との疑問が残った。
ということで評価は、(星5つにしたかったが)1つマイナスで4つとした。
厳密な図上演習を通じて指揮官たちの心境を執筆者自ら体験しようとするなど、巷にあふれる仮想戦記のような自らに都合のよい『if』は極力切り捨てて客観に徹している。特に本土決戦の『if』は戦争経験のない我々の世代でも、紙面からもその凄惨さを十分感じ取ることができる項であった。
やや残念だったのは戦艦同士の砲撃戦や機動部隊の対地攻撃能力を過大評価しているきらいがある点で、レイテ海戦などは『本当にそんなにうまくいったのか』との疑問が残った。
ということで評価は、(星5つにしたかったが)1つマイナスで4つとした。