著者によれば現代社会の特徴は「市場化」と「自己規律化」だ。これらは、問題を自分で見つけて反省し、目標に向けて努力し、結果を評価する「問題−解決」型の思考を各人に要求する。また同時に、あらゆる分野でイノベーションを促し、進んでいるか遅れているかという単線的基準による評価・時間観念を社会に浸透させた結果、我々はしばしば「遅れ」の感覚に陥るようになったという。著者の議論は哲学的で少々難解な部分もあるが、私自身もよく感じる「遅れてしまった」という思いがどうして生じるかうまく説明してくれる。
なかでも経済史家のカール・ポランニーによる、シェークスピアの戯曲の主人公ハムレットが、どうして決断を遅らせたかについて考察した異色のエッセイを元に、地球大の市場メカニズムへの包摂(すなわち西欧で生まれた資本主義が、商品と貨幣によって他の地域社会を包摂して、土地所有や労働力を流動化していく外延的拡大のプロセス、および、本当の「自分」を探す自己実現が大切な目標となり、その「自分」に見合った・行くべき場所・過ごすべき時間等を新たな商品として開発していく内向的浸透のプロセス)について語る第1章は、現在の経済グローバリズムを考える上でとても興味深かった。
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〈遅れ〉の思考: ポスト近代を生きる 単行本 – 2007/3/2
春日 直樹
(著)
市場原理と自己規律化が支配する21世紀に<遅れ>の感覚が人々
の心をとらえ始めた。未開の地フィジー、逡巡するハムレット、「人間、失格」
の太宰治、未来を待つフリーターたちの<遅れ>との格闘に、ポスト近代に生き
る意味を探る、人類学者の鋭利な論考。
の心をとらえ始めた。未開の地フィジー、逡巡するハムレット、「人間、失格」
の太宰治、未来を待つフリーターたちの<遅れ>との格闘に、ポスト近代に生き
る意味を探る、人類学者の鋭利な論考。
- 本の長さ235ページ
- 言語日本語
- 出版社東京大学出版会
- 発売日2007/3/2
- ISBN-104130130250
- ISBN-13978-4130130257
登録情報
- 出版社 : 東京大学出版会 (2007/3/2)
- 発売日 : 2007/3/2
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 235ページ
- ISBN-10 : 4130130250
- ISBN-13 : 978-4130130257
- Amazon 売れ筋ランキング: - 644,470位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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