本書は、「シリーズ国際関係論」の最後を飾る本として、同シリーズの編者であり、日本を代表する国際政治学者、猪口孝による国際関係論の「系譜」を論じた書籍である。
が、このシリーズを順番に読んできた者として、一番がっかりし、当惑した本である。
国際関係論の学会に関わることのない門外漢として、同氏の位置付けも、その背景となっている十分は基礎知識もないが、率直に言って、読後感は「混乱」のみであった。
本書は、国際関係論の「系譜」論を称しているが、誰の「系譜」であるか、はっきりしない(第一部、第二部及び第三部の関係)。また、時として系譜論を論じているのか、政策論を論じているのかわからなくなってくる。そして、なぜ最後に地域研究との関係が(しかも他章と比べると相当はしょった形で)論じられ、この本が終わるのか理解しがたい。
私にとって、本書で一番知的にスリリングだった部分は、日本独自の国際関係理論の萌芽として、西田幾太郎、田畑茂二郎及び平野義太郎を論じた第六章であった。
しかし、それぞれの学者のどの著作を取り上げて論じているのか、全く不明である。文末の参考文献にすら掲載されていない。それぞれの論者について、我が国にも相当の、しかも参考にすべき、先行研究の蓄積があるにもかかわらず(例えば田畑茂二郎については、酒井哲哉教授の業績)、これらにも一切触れていない。したがって、著者の指摘するこれら論者の独自性が客観的にはっきりしてこない。
これ以外にも、残念ながら、文と文との論理的なつながりがはっきりしない部分、論拠が示されていないため主張に「?}をつけざるを得ない部分が散見された。
この本は、「あとがき」によると、主として過去に発表されたいくつかの論文や報告(英文)を再掲する形で構成された本とのこと。それぞれの報告に触れる機会のなかった専門家には、それなりの意味のある本かもしれない。しかし、本シリーズのような広い読者を対象とした啓蒙書シリーズにおいて(そのことは著者自身が「シリーズ刊行にあたって」で書いている)、このような本で締めくくるのは、いかがなものであろうか。
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国際関係論の系譜 (シリーズ国際関係論 5) 単行本 – 2007/12/1
猪口 孝
(著)
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学問として、また日々展開する国際関係を議論する仕事として、国際関係論はどのような軌跡を辿ってきたのか。古今東西の議論を広く視野に収めながら、20世紀および日本を軸に、国際関係論をトータルに問い直し、政策的指針を提示する。未来への道しるべ。
- 本の長さ259ページ
- 言語日本語
- 出版社東京大学出版会
- 発売日2007/12/1
- ISBN-10413034255X
- ISBN-13978-4130342551
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登録情報
- 出版社 : 東京大学出版会 (2007/12/1)
- 発売日 : 2007/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 259ページ
- ISBN-10 : 413034255X
- ISBN-13 : 978-4130342551
- Amazon 売れ筋ランキング: - 962,180位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2009年1月11日に日本でレビュー済み
本書は、日本を代表する国際政治学者、猪口孝による国際関係論の「系譜」を論じた書籍である。
私にとって、最も興味深かった内容は第6章と第7章である。
一般に国際関係論(思想)は、欧米(特に英米)で発達した学問体系である。多くの論者が指摘するように、日本は欧米(特に米国)から多くの理論を援用し、基本的には欧米の視座に基づいて世界政治を分析している。現状、日本独自の観点に基づいた国際政治理論は存在しない。では、「体系化に繋がる思想的視座は、日本には存在しないのか」。猪口が第6章で指摘するように、必ずしもそのようなことはない。第6章の内容は、日本の国際政治理論を体系化していく上で、大きな示唆を与えるように思われる。第7章でのアジア諸国(中国・韓国)を交えた分析は、たとえわずかな紙片しかそこに割いてないとはいえ、基本的には西欧諸国の学問体系に目が向いている私に、大きな示唆を与えてくれた。その内容は、非西欧諸国の観点に基づく独自の国際政治理論の発展を、期待させてくれるものだった。
国際関係論の「系譜」という以上、学問の発展過程を丹念に辿る書籍だと思っていたが、前半は必ずしもそうではなく、それが残念ではあった。また、本書の大部分が書き下ろしではなかった点も残念だった。それでも、第6章や第7章は、日本語で読める数少ない論文といえ、この章を読むだけでも大きな意味があるといえるだろう。
私にとって、最も興味深かった内容は第6章と第7章である。
一般に国際関係論(思想)は、欧米(特に英米)で発達した学問体系である。多くの論者が指摘するように、日本は欧米(特に米国)から多くの理論を援用し、基本的には欧米の視座に基づいて世界政治を分析している。現状、日本独自の観点に基づいた国際政治理論は存在しない。では、「体系化に繋がる思想的視座は、日本には存在しないのか」。猪口が第6章で指摘するように、必ずしもそのようなことはない。第6章の内容は、日本の国際政治理論を体系化していく上で、大きな示唆を与えるように思われる。第7章でのアジア諸国(中国・韓国)を交えた分析は、たとえわずかな紙片しかそこに割いてないとはいえ、基本的には西欧諸国の学問体系に目が向いている私に、大きな示唆を与えてくれた。その内容は、非西欧諸国の観点に基づく独自の国際政治理論の発展を、期待させてくれるものだった。
国際関係論の「系譜」という以上、学問の発展過程を丹念に辿る書籍だと思っていたが、前半は必ずしもそうではなく、それが残念ではあった。また、本書の大部分が書き下ろしではなかった点も残念だった。それでも、第6章や第7章は、日本語で読める数少ない論文といえ、この章を読むだけでも大きな意味があるといえるだろう。