人類の進化に関するよい概説書です。
当方は人類生態学を主専攻、文化人類学を副専攻とする者ですが、
前者はむしろ自然人類学（人類生物学）【理学系研究科・理学部】、
後者は社会人類学【総合文化研究科・教養学部】ともいいます。
当方の仮説は2段階適応論です。人類は進化の過程で、まずは地域環境に対して、
生物学的適応を遂げ、ついで文化的適応を遂げてきたのです。
その関係は人類と環境の作用反作用で、人類は生態環境に規定されると同時に、
文化・社会をつうじて生態環境を形成しもし、いわば両者の相互系として把握されるのです。
ここで、人類生態学に関しておもな研究領域を挙げておきます。
Ⅰ．生態系の中の人間、
1.生態系と人類の特性、
2.人類の起源と進化、
3.生存様式の変化と多様化、
4.生業と社会、
Ⅱ．人間の生存と健康、
5.身体とその機能、
6.行動の生態学、
7.栄養と健康…◎当方がかつて東大駒場で行った食文化研究に関連、
8.病気の生態学、
Ⅲ．人口からみた人間、
9.長期的な人口変化、
10.人口指標と集団の適応、
11.現代の人口問題、
Ⅳ．環境問題と人間、
12.エネルギーと資源、
13.ライフスタイルと環境、
14.人為的環境の健康影響、
15.地球環境問題と人類。
生物学的適応とは現地環境（locality）への遺伝子レベルでの適応的進化、
文化的適応とは住居や種々の道具類（文明の利器）、
歴史認識や社会構造を編み出しての適応的進化を指すでしょう。
その際に人類集団へは生態環境の側からの選抜（淘汰）が作用します。
以上のことに留意しつつ、本書を読み進めてゆかれるとよいでしょう。
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