東大出版会のPR誌『UP』に掲載されていた連載を元に加筆した一冊。
取り上げたトピックは全部で29本。あとがきの言葉を借用すると、先のトピック
は「技術の活動」「技術と科学が交錯する機械論的自然観（換言すると、科学と
現実の交わりか？）」「科学研究の内容と活動」という大きな括りで分けること
が出来ます。
どんなものを取り上げているのか、一部を抜き出してみると・・・
・鉱山の仕組み
→どうやって掘り出して、それをどう精製するのか？
なんてことを親切丁寧に解説した本が、500年前に登場していたのです。
・船大工の製図室
→幾何学を代表とする数学が現実世界にどう取り入れられているか？が
分かります。
・宇宙のネジ
→科学と哲学がリンクしていたことを、デカルトの『哲学の原理』から
解き明かします。
・青の細菌
→コッホによる病原菌探究の道のりを紹介。菌を染め上げるという手法は
彼のアイディア。
・天の城
→ティコ・ブラーエによる天文学への取り組みを紹介。
字だけでは無く、絵を活用することによって、或る理論の分かりやすさ・伝える
力というのは大幅に改善されました。それは知識が、そしてそれを伝えるための
手段である書物が限られた人から−徐々にとは言え−そうでない人へと広がって
いったことと無縁では無いでしょう。言い換えると知識が、知恵となり実用化
されていったということでしょう。
科学の進歩とともに、それがどう当時の世界で広がり、使われていたのか、と
いうことを今に伝える一冊です。物理や数学の素養があれば、尚楽しめますが
それが無い人でも（含む私）大丈夫です。
理科の教科書に載っていた図に心ときめかせた方は、特に楽しめるのでは
ないかと考える次第です。
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