江戸時代の出版事情についてまとめられている。
なかでも、『解体新書』を含め多数の蘭学にかかわる書物を刊行した書肆・須原屋市兵衞について詳しいのが嬉しい。解説では、その問題点を指摘されているが、同時期の書肆・蔦屋重三郎に比べて知る人が圧倒的に少ない須原屋市兵衞について、多くの人が知るきっかけになればと思う。
近年、江戸の出版・読書事情について『江戸時代の読書熱』など、多様な研究が発表されているが、その基本として本書を欠かすことはできないだろう。
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江戸の本屋さん: 近世文化史の側面 (NHKブックス 299) 単行本 – 1977/1/1
今田 洋三
(著)
ダブルポイント 詳細
- 本の長さ206ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日1977/1/1
- ISBN-104140012994
- ISBN-13978-4140012994
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (1977/1/1)
- 発売日 : 1977/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 206ページ
- ISBN-10 : 4140012994
- ISBN-13 : 978-4140012994
- Amazon 売れ筋ランキング: - 670,052位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年5月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
初刊はNHKブックスで1977だそうですから、時代の制約もあるのでしょうが(江戸時代の研究は始まったばかりのころ)、出版社と古本屋の関係という視点が欠けているのはちょっと残念ですが、いかにも一昔前の日本人が書いた本らしい、詳細な江戸時代の本屋や人物のレポートです。
この本はそのオンデマンド版で、アマゾンが文庫版で印刷してくれたものです。文庫版ありがたいです。
ついでに以下の情報も入っていたらもっとよかった。いつの時代に、どんな人が書いたのかわからない本は困りますので。
初刊 NHK出版 (1977/01)
(著者)1933年、山形県生まれ。東京教育大学文学部史学科日本史学専攻卒業、
同大学大学院修士課程修了。都立上野高校教諭、近畿大学教授などを務める。
専攻、近世文化史・コミュニケーション史。1998年没
この本はそのオンデマンド版で、アマゾンが文庫版で印刷してくれたものです。文庫版ありがたいです。
ついでに以下の情報も入っていたらもっとよかった。いつの時代に、どんな人が書いたのかわからない本は困りますので。
初刊 NHK出版 (1977/01)
(著者)1933年、山形県生まれ。東京教育大学文学部史学科日本史学専攻卒業、
同大学大学院修士課程修了。都立上野高校教諭、近畿大学教授などを務める。
専攻、近世文化史・コミュニケーション史。1998年没
2020年4月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1977年刊行。いかにも初心者向けっぽい、やわらかなタイトルに油断して手を出したらギャフンとなること間違いなしであります。
江戸ならぬ江戸時代の出版文化と出版制度の移り変わりのガチな分析。何たって、江戸の出版の話題は60ぺージを過ぎないことには出てこないんだから。近世文芸なり、学問書なりである程度の予備知識がないことには難しい内容なので御注意を。
出版文化の広まりに対して幕府が規制を加えるという繰り返しの二百年間。「知らしむべからず依らしむべからず」の方針に従って、これでもか!といわんばかりの出版弾圧が凄まじい限りであります。
興味深く読めたのは地方出版と貸本屋の話題。地下出版や発禁書がどうやって出まわっていたのかよく分からなかったのですが、貸本屋さんが担い手だったんですね! また、地方出版の隆盛ぶりは意外なばかりで、このテーマで一冊作ってほしかったくらい。江戸後期に出版業が盛んになったのは飢饉や不況で、救荒書の需要が増大したから!という見解は盲点でしたのでびっくり。そういえば日本スゴイ論のトンデモ歴史家で、浮世絵は社会の悪い面を描いていないから素晴らしい!とむちゃくちゃな主張をしていた方がいらっしゃいましたっけ…。
四十年前の本ですから、まるっきり暴君(暗君)扱いの綱吉評に時代の流れを感じさせられます。
江戸ならぬ江戸時代の出版文化と出版制度の移り変わりのガチな分析。何たって、江戸の出版の話題は60ぺージを過ぎないことには出てこないんだから。近世文芸なり、学問書なりである程度の予備知識がないことには難しい内容なので御注意を。
出版文化の広まりに対して幕府が規制を加えるという繰り返しの二百年間。「知らしむべからず依らしむべからず」の方針に従って、これでもか!といわんばかりの出版弾圧が凄まじい限りであります。
興味深く読めたのは地方出版と貸本屋の話題。地下出版や発禁書がどうやって出まわっていたのかよく分からなかったのですが、貸本屋さんが担い手だったんですね! また、地方出版の隆盛ぶりは意外なばかりで、このテーマで一冊作ってほしかったくらい。江戸後期に出版業が盛んになったのは飢饉や不況で、救荒書の需要が増大したから!という見解は盲点でしたのでびっくり。そういえば日本スゴイ論のトンデモ歴史家で、浮世絵は社会の悪い面を描いていないから素晴らしい!とむちゃくちゃな主張をしていた方がいらっしゃいましたっけ…。
四十年前の本ですから、まるっきり暴君(暗君)扱いの綱吉評に時代の流れを感じさせられます。
2010年1月14日に日本でレビュー済み
日本の江戸文化の重要な要素として本があるが、出版事情から江戸文化と政治を読み解こうとするものである。著作権のような権利や、一方では貸し本屋と地方の娯楽、発禁処分本、外交秘に関わる本の出版など、江戸時代はかなり自由に情報がいきわたっていたようだ。
明治政府以降、教科書で江戸時代の暗い側面が強調されてきたが、実際にはかなり違う事が良く分かる。
明治政府以降、教科書で江戸時代の暗い側面が強調されてきたが、実際にはかなり違う事が良く分かる。
2012年6月28日に日本でレビュー済み
江戸時代の出版業者の盛衰を描いた興味深い江戸文化史である。出版業者たちの経営者としての才覚だけでなく、学者や文人との交流を通じて、文化の担い手としての役割もあったことが指摘される。また、社会の変化とそれに大きく関わっていく出版業者の姿も描かれる。
30年以上も前に出版された本なので、最後にある解説を参照して、この本の時代的な制約を理解しつつ読んでいく必要があるが、知的刺激に満ちた出版文化史であることに間違いはない。
特に興味深く思ったのは、江戸時代の版本は規制されるので、時事的な内容の禁書は、写本のかたちで貸本屋を通じて読まれたというところである。
30年以上も前に出版された本なので、最後にある解説を参照して、この本の時代的な制約を理解しつつ読んでいく必要があるが、知的刺激に満ちた出版文化史であることに間違いはない。
特に興味深く思ったのは、江戸時代の版本は規制されるので、時事的な内容の禁書は、写本のかたちで貸本屋を通じて読まれたというところである。
2020年4月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以前読んだ『江戸の農民生活史』の参考文献に挙がっていたものを購入。近世の出版については不案内ながら、どのような人がどのようにして本を作り、流通させていたのかに興味があり、読んでみました。上記疑問にはどこから発生し、どこで発展していくのかも含め、詳細に記されてあり、大変勉強になりました。
2009年12月14日に日本でレビュー済み
本書は、1977年にNHKブックスとして刊行されたものを平凡社ライブラリーで再刊されたものである。興味はあったものの、入手が難しかったので、今回の再刊は喜ばしい限りである。寛文から元禄にいたる二十年間に出版物が激増し、元禄時代の流通冊数はおよそ一千万冊に及び、その後も増加していったという。その原因を十七世紀初頭以来、日本の社会的コミュニケーションの特質が大きく変化したとみている。そこで、それを考えるには当時の出版を担った書物屋の様子を明らかにすること(本書6‐7頁)が本書の目的である。
最初に京都の出版情勢について述べられており、概して学術中心の本を扱い、幕府、大寺院や大名・上級文化人のような社会的地位の高い人々を主に販売対象としていた。しかし、元禄時代の大阪では、「庶民」の中では上層であるが、世間一般の読書層を得意先としたのである。そして舞台は江戸に移り、その時代では「元禄時代」「田沼時代」、「化政時代」と「幕末」の出版状況について触れられている。
特に印象的だったのが、貸本屋の活動である。江戸時代にたくさんの書物が売り出されたものの、当時の本は高価なため普通の庶民にとっては高嶺の花であった。そこに、貸本屋としての生業が成立したのである。貸本屋は店に座って客を待つのではなく、大風呂敷に包んだ書物を背負って得意先を回って営業をしていたようだ。また、普通の貸本屋でお得意先が百七八軒ほど、江戸だけで十万軒に及ぶ大勢の貸本読者がいたそうだ(192頁)。さらに、後には貸本屋にも出版・言論統制による「規制」がかかるものの、その中でしぶとく活動した貸本屋の存在によって、庶民レベルにおける社会的コミュニケーションが確保された。つまり、正式出版業を出版コミュニケーションの表街道だとすれば、貸本業を「裏道コミュニケーション」と本書では表現されている(202頁)ところは、興味深かった。
最初に京都の出版情勢について述べられており、概して学術中心の本を扱い、幕府、大寺院や大名・上級文化人のような社会的地位の高い人々を主に販売対象としていた。しかし、元禄時代の大阪では、「庶民」の中では上層であるが、世間一般の読書層を得意先としたのである。そして舞台は江戸に移り、その時代では「元禄時代」「田沼時代」、「化政時代」と「幕末」の出版状況について触れられている。
特に印象的だったのが、貸本屋の活動である。江戸時代にたくさんの書物が売り出されたものの、当時の本は高価なため普通の庶民にとっては高嶺の花であった。そこに、貸本屋としての生業が成立したのである。貸本屋は店に座って客を待つのではなく、大風呂敷に包んだ書物を背負って得意先を回って営業をしていたようだ。また、普通の貸本屋でお得意先が百七八軒ほど、江戸だけで十万軒に及ぶ大勢の貸本読者がいたそうだ(192頁)。さらに、後には貸本屋にも出版・言論統制による「規制」がかかるものの、その中でしぶとく活動した貸本屋の存在によって、庶民レベルにおける社会的コミュニケーションが確保された。つまり、正式出版業を出版コミュニケーションの表街道だとすれば、貸本業を「裏道コミュニケーション」と本書では表現されている(202頁)ところは、興味深かった。
2017年7月18日に日本でレビュー済み
著者は江戸の出版文化の研究家。
本書は、江戸の出版事情について、京都での草創期、大坂での発達、田沼時代の江戸での革命的な進展、禁書と貸本、幕末の爆発的な拡大と、時代順に通観している。多くの出版業者を個別的にとりあげつつ、時代ごとの特徴が示されているので、わかりやすい。
ただ、1977年の出版であり、古くなってしまっている部分が多いのは認めざるを得ない。現在の研究状況についてちゃんと知りたいのなら、もう少し新しい本を手に取るべきだろう。
本書は、江戸の出版事情について、京都での草創期、大坂での発達、田沼時代の江戸での革命的な進展、禁書と貸本、幕末の爆発的な拡大と、時代順に通観している。多くの出版業者を個別的にとりあげつつ、時代ごとの特徴が示されているので、わかりやすい。
ただ、1977年の出版であり、古くなってしまっている部分が多いのは認めざるを得ない。現在の研究状況についてちゃんと知りたいのなら、もう少し新しい本を手に取るべきだろう。