カント哲学のエッセンスを抽出し提示する本です。冒頭は宮澤賢治の詩の引用で始まり、最後の章は文章が詩的です。哲学書ですが、何だかポエムを感じる本でした。
序章は「青ぞらのはてのはて」です。青空や宇宙の果てはどうなっているのだろうかという問いから始まります。そして、人間の理性は推論を進め、解答不可能な問いに悩まされるというお話に進みます。
第一章は「世界は始まりをもつか?」です。いきなり『純粋理性批判』のアンチノミー論が解説されます。特に、世界の限界に関係する第一アンチノミーが重点的に検討されていました。「カントによるアンティノミーの解決は、『物自体』と『現象』の区別という、カントの哲学的な立場の根にかかわっている」というのはその通りだと思いました。
第二章は「神は世界のそとにある?」です。まず、カントの超越論的観念論が再考されています。そして、思考可能だが直観の対象にならない神について考察されます。『純粋理性批判』では神は世界の外部に位置しており、神の存在を証明することは不可能だということが書いてありました。前批判期のカントが神を遍在するものだと考えていたことは私には初耳でした。
第三章は「〈不可能なもの〉をめぐる経験」です。主に『判断力批判』における「崇高なもの」について書いてありました。この章は文章が詩的な感じがして、人によって解釈が変わりそうな気がしました。カントは境界上に身をおく思考をしており、すぐれて哲学的な思索者だったと評されていました。
本の末尾には、カントの年譜と読書案内が添えられていました。
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カント 世界の限界を経験することは可能か (シリーズ・哲学のエッセンス) 単行本(ソフトカバー) – 2002/11/22
熊野 純彦
(著)
- 本の長さ125ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2002/11/22
- ISBN-10414009303X
- ISBN-13978-4140093030
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2002/11/22)
- 発売日 : 2002/11/22
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 125ページ
- ISBN-10 : 414009303X
- ISBN-13 : 978-4140093030
- Amazon 売れ筋ランキング: - 480,582位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 448位ドイツ・オーストリアの思想
- - 861位西洋哲学入門
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年7月25日に日本でレビュー済み
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タイトルに同じ。しかも安く手に入ってとても満足。とても感謝です。
2008年1月7日に日本でレビュー済み
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熊野がカントを書いたのは、今から振り返ってみると、哲学史のための準備であったように思う。そのためか、可もなく不可もなくごく普通のカント解釈に終始している。それにしてもカントの解説にこれほどの小著が書かれるのは、哲学史の一節としてはふさわしくても、一冊の書物としてみるとなにかさびしいかぎりである。逆に言えば、このほどの小著にしなければ読者の購買意欲がわかない時代に入ったことを示している。ある意味では、哲学がコミックになったということであろうか。
2003年8月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アンティノミー、感性論、崇高論をうまく繋いで、「限界をめぐるカントの思考」を明晰に浮かび上がらせる。議論のポイントを切れ味の良い日本語に巧みに置き換えてゆく著者の力量はすごい。著者はカント哲学の核心を神との緊張に見る。神は経験の限界を超えたところにある「ほんとうの深淵」であり、その無限なものの「影」が、「構想力にとっての深淵」、すなわち不可能なものの経験としての「崇高」の感情であると捉える。かつてパスカルは、不可知の神という「深淵の前に立ちすくむ」人間を、誰よりも先鋭に提示した。本書は、カントをパスカル的に純化する試みである。
だがこれは、カントの「限界をめぐる思考」を本当に生かす道だろうか。彼はなぜ三批判書を書いたのか。それは、真理、自由、美いう三つの領域は、互いに他に還元できない固有の価値をもつ領域であることを示すためである。価値は、神という超越的なものに由来するのではなく、人間の生の内部から立ち上がってくる内在的なものだ。「構想力の自由な遊び=美」というカントの理説はまさにそれである。「限界をめぐる思考」は、三つの批判書の分岐関係をふまえて解釈されるべきであろう。「深淵の前に立ちすくむ」人間にのみ焦点が向くと、「近代」のために「神」と戦ったカントが背景に退いてしまう。
だがこれは、カントの「限界をめぐる思考」を本当に生かす道だろうか。彼はなぜ三批判書を書いたのか。それは、真理、自由、美いう三つの領域は、互いに他に還元できない固有の価値をもつ領域であることを示すためである。価値は、神という超越的なものに由来するのではなく、人間の生の内部から立ち上がってくる内在的なものだ。「構想力の自由な遊び=美」というカントの理説はまさにそれである。「限界をめぐる思考」は、三つの批判書の分岐関係をふまえて解釈されるべきであろう。「深淵の前に立ちすくむ」人間にのみ焦点が向くと、「近代」のために「神」と戦ったカントが背景に退いてしまう。
2009年12月17日に日本でレビュー済み
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この本は、入門書でありうるのか私にはわからない。十分むずかしい。私は三批判書、プロレゴメナ、道徳形而上学原論を読んだが一読して時が経ち輪郭がぼやけてきたのでこの本を取った次第である。文章は一見分かりやすい。しかし、この学者さんはさすがに理解が深いらしく自分の頭の中でよくかみくだいて、わかりやすいようにアドリブめいたレトリックを入れている。
頭の整理が出来る。小さいが本格的でまさに哲学のエッセンスである。
頭の整理が出来る。小さいが本格的でまさに哲学のエッセンスである。
2004年10月28日に日本でレビュー済み
有力な哲学者もほめていたこの本。現在でもカント抜きに哲学は語れないなどという人がけっこういるので読んでみたが,やはりカントのすごさがわからない。
近代のために神と闘ったカント云々というひともいる。存在の現実態と人間と,どうやって闘うのだろうか。近代のためというなら,近代とはカントにおいて何か。あえて決めつければ,自我の普遍化が近代である。その自我は神以上の何かなのか。
私見によれば,カントは,トマス・アクィナスなどによって神の内在と超越とが把握されていた,そのうちの内在を捨てた宗教改革者の末裔そのものだ。神はもっぱら超越性のみが語られる。神を世界の外にほっぽり出して,空間や時間や判断形式について,その超越性を主張する。神の内在の切り捨てを肯定できるか否かが,カントに興味をもてるか否かのわかれめではないか。
近代のために神と闘ったカント云々というひともいる。存在の現実態と人間と,どうやって闘うのだろうか。近代のためというなら,近代とはカントにおいて何か。あえて決めつければ,自我の普遍化が近代である。その自我は神以上の何かなのか。
私見によれば,カントは,トマス・アクィナスなどによって神の内在と超越とが把握されていた,そのうちの内在を捨てた宗教改革者の末裔そのものだ。神はもっぱら超越性のみが語られる。神を世界の外にほっぽり出して,空間や時間や判断形式について,その超越性を主張する。神の内在の切り捨てを肯定できるか否かが,カントに興味をもてるか否かのわかれめではないか。
2003年7月19日に日本でレビュー済み
私はカント哲学の本を始めて読んだ。カントに限らず哲学関連の本は今までろくに読んだ事がなかったのだが、そんな俺でもすらすら(?)読むことができた。この本を読んで世界の果てについての認識や時間や空間についての認識が変わった。そして、こんなことを考えたカントの偉大さを実感した。
2023年4月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いろいろな本にカントが頻出するので、そろそろちゃんと知りたいと思って読んだ。世界の限界や神といった、考えようとすると無限後退に陥るような対象の実態に、二律背反の解決という手法で迫る筋道が美しい。漢字をひらがなにひらいた文章が味わい深い。