子ども兵の存在自体は国連やNGOのパンフレット以外にも様々な書籍や雑誌に記され、「イノセント・ボイス」や「ブラッド・ダイヤモンド」等の映画にも描かれることで、人類史上最悪の戦争犯罪として広く知られ始めました。しかし本書は米国のシンクタンクで主に民間軍事産業研究に携わってきた軍事専門家の著書ということもあり、紛争の現状に関する記述の詳細さは他著を圧倒しています。組織が子どもを兵士にするプロセス(徴集、教化、訓練、実戦、戦術)、子ども兵によってもたらされる影響(戦争犯罪の増加と残虐化、紛争の長期化、自爆や人海戦術での使い捨て、紛争終結後の後遺症)、さらにはテロ組織に利用される子どもたちによる、中東和平への障害まで詳述した書籍は少ないと思います。
しかし本書が他著よりも優れているのは、現状の詳述にとどまらず、子ども兵に関する対処法が様々な側面から考察されている点です。子どもを兵士にさせないようにするために、子ども兵を利用する組織に刑罰を課し、組織の取引相手に経済的圧力をかける。戦場で子ども兵と遭遇した場合に、非致死性兵器や衝撃効果を利用し、組織が新たな子ども兵を徴集する区域を防衛する。武装解除と動員解除、心身両面の更正を経て、子どもたちを家族や社会に復帰させる。他著では見られないこれらの考察はいずれも紛争地の現状を知り尽くした人間のものであるだけに、取り入れさらに深化させる価値が十分あります。
政府側、反政府側を問わず、様々な戦争犯罪組織が子どもたちを利用するのは、子どもを利用するメリットが大きい一方で、追及される恐れが殆どないからです。逆に言えば、政治、経済、軍事等のあらゆる面で圧力をかけて追及すれば、犯罪組織を倒す事ができる。本書は重い内容ながらも、子ども兵の廃絶に貢献し、子どもたちが平和に安全に暮らす国や社会を築いていく上で、最後に希望をも感じさせてくれる秀逸さを持っています。
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子ども兵の戦争 単行本 – 2006/6/1
- 本の長さ315ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2006/6/1
- ISBN-104140811161
- ISBN-13978-4140811160
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2006/6/1)
- 発売日 : 2006/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 315ページ
- ISBN-10 : 4140811161
- ISBN-13 : 978-4140811160
- Amazon 売れ筋ランキング: - 696,623位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2009年11月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年8月19日に日本でレビュー済み
著者の三部作、「戦争請負会社」、「子ども兵の戦争」、「ロボット兵の戦争」の第三作目を読んだ後で、この二作目を読んだ。
子供兵については、映画「ブラッド・ダイアモンド」などに出てくるが、詳しくは知らなかった。
本書では、子供兵が、なぜ出現したか、どのように強制・洗脳されているか、なぜ非武装化が難しいかが、詳しく記述されている。
出現については、銃の進化で、銃が安価で、子供にも扱える武器になったことから、
子供に銃を持たせれば、簡単に大量の兵隊を作れるようになったとあり、驚く。
また、イラン・イラク戦争で、イランが子供兵を、イラクが仕掛けた地雷原を歩かせて、爆発させて、その後に大人の兵を進ませたとあり、
現実の無残さに驚く。
本書では、子供兵をなくす・作らない方策を述べているが、いずれも実現には厳しいものがあり、現実の前に暗い気持ちになる。
私のように、日本で呑気に暮らしている者にとっては、考えさせられる、しかし無力を感じる書である。
子供兵については、映画「ブラッド・ダイアモンド」などに出てくるが、詳しくは知らなかった。
本書では、子供兵が、なぜ出現したか、どのように強制・洗脳されているか、なぜ非武装化が難しいかが、詳しく記述されている。
出現については、銃の進化で、銃が安価で、子供にも扱える武器になったことから、
子供に銃を持たせれば、簡単に大量の兵隊を作れるようになったとあり、驚く。
また、イラン・イラク戦争で、イランが子供兵を、イラクが仕掛けた地雷原を歩かせて、爆発させて、その後に大人の兵を進ませたとあり、
現実の無残さに驚く。
本書では、子供兵をなくす・作らない方策を述べているが、いずれも実現には厳しいものがあり、現実の前に暗い気持ちになる。
私のように、日本で呑気に暮らしている者にとっては、考えさせられる、しかし無力を感じる書である。
2008年9月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦争に子供がどう巻き込まれるか。
こうしたテーマは、なかなか取材できない。
著者はその専門家として世界各国を舞台に丁寧に例をだし、いかにして子供が戦争にまきこまれるかを描く。
これは単なる理屈ばかりの話でなく、ふんだんな事例が記されているからこそ、説得力がある。
学者や研究者の立場からかけるノンフィクションの中でも、もっとも効果的かつすぐれた作品だと思う。
こうしたテーマは、なかなか取材できない。
著者はその専門家として世界各国を舞台に丁寧に例をだし、いかにして子供が戦争にまきこまれるかを描く。
これは単なる理屈ばかりの話でなく、ふんだんな事例が記されているからこそ、説得力がある。
学者や研究者の立場からかけるノンフィクションの中でも、もっとも効果的かつすぐれた作品だと思う。
2013年5月6日に日本でレビュー済み
「戦争請負会社」のピーター・シンガーが現代の戦争の暗部、子ども兵士についてその全容をまとめあげる。
この本は今まで私が読んできた本の中で最も読み進めるのが難しい本だった。それほどにこの本に書かれている内容は目を覆いたくなる。
世界中に30万人いる子ども兵達はほとんどが無理やり軍に組み込まれ、残虐行為の加害者と被害者になり、麻薬にまみれ最前線で捨て駒の様に使われ、死ぬか心身に重症を負っている。子ども兵達を使うことで安く兵力を動員でき、結果として戦争が長引き、さらに多くの子ども兵を出すことになってしまっている。
何より驚くのはこの子ども兵というものがつい最近までほとんどなかったのに、ここ20年で爆発的に増えている点だ。地域紛争は泥沼化し、理念から利益を争う様になっている。
地域紛争を止めに入る国連や先進国の軍隊は子ども兵と対峙することを覚悟しなければならない。この本では具体的に子ども兵と対峙した時どうするべきか、子ども兵をなくす為にどうするべきかについてもまとめられている。
よく「人類は戦争を克服できない、仕方ないことだ」という声を聞かれるが、現代に近づけば近づくほど戦争が残虐化している点を見逃してはならない。
現代の戦争の姿とその対策を描いた大作。前著「戦争請負会社」、最新作「ロボット兵士の戦争」と合わせて読みたい。
この本は今まで私が読んできた本の中で最も読み進めるのが難しい本だった。それほどにこの本に書かれている内容は目を覆いたくなる。
世界中に30万人いる子ども兵達はほとんどが無理やり軍に組み込まれ、残虐行為の加害者と被害者になり、麻薬にまみれ最前線で捨て駒の様に使われ、死ぬか心身に重症を負っている。子ども兵達を使うことで安く兵力を動員でき、結果として戦争が長引き、さらに多くの子ども兵を出すことになってしまっている。
何より驚くのはこの子ども兵というものがつい最近までほとんどなかったのに、ここ20年で爆発的に増えている点だ。地域紛争は泥沼化し、理念から利益を争う様になっている。
地域紛争を止めに入る国連や先進国の軍隊は子ども兵と対峙することを覚悟しなければならない。この本では具体的に子ども兵と対峙した時どうするべきか、子ども兵をなくす為にどうするべきかについてもまとめられている。
よく「人類は戦争を克服できない、仕方ないことだ」という声を聞かれるが、現代に近づけば近づくほど戦争が残虐化している点を見逃してはならない。
現代の戦争の姿とその対策を描いた大作。前著「戦争請負会社」、最新作「ロボット兵士の戦争」と合わせて読みたい。
2013年5月27日に日本でレビュー済み
多くの読者は、「子ども兵」イコール悪であり、根絶すべき悪魔の所業と見る。
著者の視点は「表層としての子ども兵」として、その根底にある「経済格差」「私利私欲の政治体制」「無教育」「閉鎖社会」に切り込み、「安価で効率的な兵士」と指摘する。決して感情的な反発に陥らない。
最終章では、結局のところ「政治・経済」体制を変革しなければ事態は変わらないとも指摘する。
著者は、これ以外にも「戦争請負会社」「ロボット兵士」を出版しているが、いずれも「戦争の効率性」という視点で俯瞰するとそこに底通するのは「いかにして安価に効率的に戦争に勝つか」という当事国の思想だ。
大変面白い。
なお、「子ども兵」に関しては類書が沢山出ているが、表層面にこだわり「平和運動」的「理想論」的な論調が多いのは残念だ。
著者の視点は「表層としての子ども兵」として、その根底にある「経済格差」「私利私欲の政治体制」「無教育」「閉鎖社会」に切り込み、「安価で効率的な兵士」と指摘する。決して感情的な反発に陥らない。
最終章では、結局のところ「政治・経済」体制を変革しなければ事態は変わらないとも指摘する。
著者は、これ以外にも「戦争請負会社」「ロボット兵士」を出版しているが、いずれも「戦争の効率性」という視点で俯瞰するとそこに底通するのは「いかにして安価に効率的に戦争に勝つか」という当事国の思想だ。
大変面白い。
なお、「子ども兵」に関しては類書が沢山出ているが、表層面にこだわり「平和運動」的「理想論」的な論調が多いのは残念だ。
2006年11月13日に日本でレビュー済み
世界各地で戦争してるなんてテレビ画面の向こうの話。現実感なんてちっともない。
大半の日本人は、戦争に対してその程度の認識しかもってないんじゃなかろうか。私はそうなのだけど…。
日本に住んでいると死ぬまで戦争と無縁の人だっているだろう。それは幸せな事だと、能天気な事だと、こういう本を読んだ後は思う。
全世界的に18歳未満の『子ども兵』が存在する。現役兵は30万人以上。彼ら彼女らは誘拐されたり、強制的に徴兵されている。単なる数合わせのためではない。「従順」「大人に比べ見返りを求めない」「敵が躊躇する場合がある」など、『子ども兵』が有用だからだ。
本著には『子ども兵』の体験談がいくつも掲載されているが、どれもこれも目を覆いたくなるような内容だ。「チェチェン やめられない戦争」を読んだ時もそうだったが、私は戦争を知らなさ過ぎる。
大半の日本人は、戦争に対してその程度の認識しかもってないんじゃなかろうか。私はそうなのだけど…。
日本に住んでいると死ぬまで戦争と無縁の人だっているだろう。それは幸せな事だと、能天気な事だと、こういう本を読んだ後は思う。
全世界的に18歳未満の『子ども兵』が存在する。現役兵は30万人以上。彼ら彼女らは誘拐されたり、強制的に徴兵されている。単なる数合わせのためではない。「従順」「大人に比べ見返りを求めない」「敵が躊躇する場合がある」など、『子ども兵』が有用だからだ。
本著には『子ども兵』の体験談がいくつも掲載されているが、どれもこれも目を覆いたくなるような内容だ。「チェチェン やめられない戦争」を読んだ時もそうだったが、私は戦争を知らなさ過ぎる。
2007年1月10日に日本でレビュー済み
前著『戦争請負会社』と共に本書も、広く報道されていないが重大な事実の優れた報告である。
この20年程の間に子ども兵は使われ始め、国連の試算では、50を超える国で少なくとも80万人はいると見られている。 子どもらは、誘拐・親に売られる・飯に飢えて・虐殺や家屋の破壊の復讐等の理由で、小学生低学年程度の年齢からいくらでも代わりのいる安上がりの兵として入隊する。 そして作戦行動をミスした者や脱走者を顔見知りの新兵に殺させるような恐怖・攻撃した町に対するレイプや食料の略奪による報酬・組織内での昇進や仲間に認められるといった動機付けと、アルコールや麻薬により死を恐れず、組織の命令に疑問を持たずに作戦を遂行する殺人マシンにさせられ、米軍特殊部隊も認めるほどの破壊力を、例えばウガンダの神の抵抗軍が200人から1万4千人の軍隊になったように強大にし、紛争の件数を増やし、長期化させ、何百万人もの死者や難民を生み出す温床となっている。
また、せんそうほうもルールも無視するのが常態化している為、シアラレオネの革命統一戦線に見るように、軍閥がダイヤモンド鉱山を勝ち取るといったギャングとかわらない目的で攻撃を仕掛けるので、タクシーの運転手から政府関係者まで誰一人反体制派が何を求めているか分からない紛争となり、解決を困難にしている。
更には、子ども兵を動員解除し保護しても、健康被害やPTSDなどの心理的被害を治癒させ、再徴収されないように隔離し、教育や職業訓練を持続的な補修指導を伴って行い、事業を始めるための小口融資に至るまで援助しなければ、再び武装グループに加入したり犯罪者となる可能性が残る。
勿論、子ども兵に反対する国連や地域での様々な協定が採択されているが、ようやく‘06年になって初めて軍事指導者が国際刑事裁判所に移送されたところであり、日本でも本書が幅広く人々に知られ、シアラレオネやアンゴラの「血のダイヤモンド」等、軍事指導者・グローバル経済と結びついた商品の不買運動のような行動をとり、扮装も子ども兵も根絶させねばならない。
この20年程の間に子ども兵は使われ始め、国連の試算では、50を超える国で少なくとも80万人はいると見られている。 子どもらは、誘拐・親に売られる・飯に飢えて・虐殺や家屋の破壊の復讐等の理由で、小学生低学年程度の年齢からいくらでも代わりのいる安上がりの兵として入隊する。 そして作戦行動をミスした者や脱走者を顔見知りの新兵に殺させるような恐怖・攻撃した町に対するレイプや食料の略奪による報酬・組織内での昇進や仲間に認められるといった動機付けと、アルコールや麻薬により死を恐れず、組織の命令に疑問を持たずに作戦を遂行する殺人マシンにさせられ、米軍特殊部隊も認めるほどの破壊力を、例えばウガンダの神の抵抗軍が200人から1万4千人の軍隊になったように強大にし、紛争の件数を増やし、長期化させ、何百万人もの死者や難民を生み出す温床となっている。
また、せんそうほうもルールも無視するのが常態化している為、シアラレオネの革命統一戦線に見るように、軍閥がダイヤモンド鉱山を勝ち取るといったギャングとかわらない目的で攻撃を仕掛けるので、タクシーの運転手から政府関係者まで誰一人反体制派が何を求めているか分からない紛争となり、解決を困難にしている。
更には、子ども兵を動員解除し保護しても、健康被害やPTSDなどの心理的被害を治癒させ、再徴収されないように隔離し、教育や職業訓練を持続的な補修指導を伴って行い、事業を始めるための小口融資に至るまで援助しなければ、再び武装グループに加入したり犯罪者となる可能性が残る。
勿論、子ども兵に反対する国連や地域での様々な協定が採択されているが、ようやく‘06年になって初めて軍事指導者が国際刑事裁判所に移送されたところであり、日本でも本書が幅広く人々に知られ、シアラレオネやアンゴラの「血のダイヤモンド」等、軍事指導者・グローバル経済と結びついた商品の不買運動のような行動をとり、扮装も子ども兵も根絶させねばならない。