休日の午前中に2時間程度で読み終えた。読みやすい本である。題名にマグロを謳っているが話としてはマグロに留まらない「水産物」であり 扱われている食材もエビ、カニ、ギンダラが挙げられる。
本書のポイントは2点である。
一点目としては 日本の第一次産業である水産業の衰退だ。気仙沼のマグロ漁船経営が立ち行かなくなり会社を閉める傾向が顕著である点の指摘である。これは 水産業に限らず 日本の第一次産業全体の問題である。気仙沼という三陸海岸の港に 今の日本が抱える食料自給論にも連なる大きな国策課題を 上手に凝縮している。
二点目としては 日本の「買い負け」である。欧米での水産ブームのみならず 中国や東欧での水産物需要は高まった。その結果、日本が価格で負けて 輸入水産物を買えなくなったという姿を 大手商社の「苦労」を通じて浮き彫りにしている。
上記一点目と二点目を重ねて読むと 中々恐ろしい話になる。非常に平たく言うと「食料に関しては 日本は自給も出来なければ 海外から買うことも出来ない」という話になるからだ。国民をどうやって食わせていくかという事は ローマ帝国の時代からの国家の課題である。
日本の消費者には まだそんな危機感は無い。販売店も 価格競争に明け暮れてきた。消費者が品質だけではなく 価格に厳しいからである。
但しその舞台裏では 全く違う話が進んでいる。既に日本は他国に対して「価格が払えない」という状態になりつつある。これは「日本の競争力が無い」という事を意味しているのだ。かつ自給も難しい。
「全く違う話」が 舞台裏から 舞台表に出てくる日も近いと僕は考える。
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日本の食卓からマグロが消える日―世界の魚争奪戦 単行本 – 2007/1/1
星野 真澄
(著)
ダブルポイント 詳細
- 本の長さ254ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2007/1/1
- ISBN-104140811609
- ISBN-13978-4140811603
登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2007/1/1)
- 発売日 : 2007/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 254ページ
- ISBN-10 : 4140811609
- ISBN-13 : 978-4140811603
- Amazon 売れ筋ランキング: - 2,105,669位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 206位水産業
- - 127,062位科学・テクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
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2007年3月11日に日本でレビュー済み
水産業界にはとんと無縁の私だが、一気に読めた。これだけ専門的な内容を素人に読ませる著者の筆力にも脱帽する。
さて、本書の骨子を私なりに再構成すると以下のようになろう。
1)日本人の食生活が豊かになるにつれ、魚の消費量が低迷していった。消費量低迷を補うべく、出荷規格が非常に厳しくなった。例えば、400g以下の小型のサバ(業界用語でローソクサバという)は単価が1/8にしかならず、養殖魚の餌にしかならない。
2)反面、中国ではローソクサバでも喜んで買っていき、平戸などでは中国人バイヤーでごった返している。
3)一方、国内市場では出荷規格が厳しくなるにつれて、燃料高騰もあいまって漁業者が暮らしていけなくなり、廃業や倒産が相次いでいる。その結果、漁場も中国船に圧倒されるようになっており、悪循環が止まらない。
4)それでは輸入物に頼ればよいのか? 否。BSEや鳥インフルエンザが世界的に流行する中、水産物の需要は世界的に高まっている。世界最大の水産物輸入国である日本が他国に買い負けることも国際市場では珍しいことではない。もちろん、買い勝った国は中国である(詳細は省くが、金に糸目をつけずにロブスターをまとめ買いしていく様子が生き生きと描かれている)。
この本は、水産業界でいま起こっているグローバル化(それは野菜や畜産物でも基本構造は全く同じ)の現状を鋭くとらえ、それを個々人のミクロなレベルで活写している。我が国の水産業、そして日本の食の「いま」を知るためには絶好の本であると思われる。
さて、本書の骨子を私なりに再構成すると以下のようになろう。
1)日本人の食生活が豊かになるにつれ、魚の消費量が低迷していった。消費量低迷を補うべく、出荷規格が非常に厳しくなった。例えば、400g以下の小型のサバ(業界用語でローソクサバという)は単価が1/8にしかならず、養殖魚の餌にしかならない。
2)反面、中国ではローソクサバでも喜んで買っていき、平戸などでは中国人バイヤーでごった返している。
3)一方、国内市場では出荷規格が厳しくなるにつれて、燃料高騰もあいまって漁業者が暮らしていけなくなり、廃業や倒産が相次いでいる。その結果、漁場も中国船に圧倒されるようになっており、悪循環が止まらない。
4)それでは輸入物に頼ればよいのか? 否。BSEや鳥インフルエンザが世界的に流行する中、水産物の需要は世界的に高まっている。世界最大の水産物輸入国である日本が他国に買い負けることも国際市場では珍しいことではない。もちろん、買い勝った国は中国である(詳細は省くが、金に糸目をつけずにロブスターをまとめ買いしていく様子が生き生きと描かれている)。
この本は、水産業界でいま起こっているグローバル化(それは野菜や畜産物でも基本構造は全く同じ)の現状を鋭くとらえ、それを個々人のミクロなレベルで活写している。我が国の水産業、そして日本の食の「いま」を知るためには絶好の本であると思われる。
2007年2月14日に日本でレビュー済み
マグロを通して、輸入に依存する日本人の食卓に強烈な警鐘を鳴らす作品だった。
日本人が普段、当たり前のように食べている魚が食べられなくなる日が来る。信じられない話だが、欧米は、BSE、鳥インフルエンザの影響で水産物の消費を拡大しており、中国13億人は贅沢の極みは海鮮料理を食べることだと急速に魚を食べ始めている。その一方で日本は、魚料理が苦手な家庭が増え、骨抜き魚など食べやすく加工した魚や、マグロを中心に刺身以外は食べなくなっている。世界中から魚を買いあさり、自給率は50%代に落ちている。
そんな中、魚価の低迷に苦しむ日本の漁師は、もはや日本の市場に見切りをつけ、中国を筆頭に海外の国々に、日本の魚を輸出しようとしている恐るべき事実。
この本は、日本の食料の安全保障に大きな問題提起をしている意義のある作品である。
日本人が普段、当たり前のように食べている魚が食べられなくなる日が来る。信じられない話だが、欧米は、BSE、鳥インフルエンザの影響で水産物の消費を拡大しており、中国13億人は贅沢の極みは海鮮料理を食べることだと急速に魚を食べ始めている。その一方で日本は、魚料理が苦手な家庭が増え、骨抜き魚など食べやすく加工した魚や、マグロを中心に刺身以外は食べなくなっている。世界中から魚を買いあさり、自給率は50%代に落ちている。
そんな中、魚価の低迷に苦しむ日本の漁師は、もはや日本の市場に見切りをつけ、中国を筆頭に海外の国々に、日本の魚を輸出しようとしている恐るべき事実。
この本は、日本の食料の安全保障に大きな問題提起をしている意義のある作品である。