著者は1975年生まれの政治思想研究者であり、インドやナショナリズムに関する多数の著書がある。本書は非暴力主義を徹底して、インドをイギリスの植民地から独立させることを主導したガンディー(1869 - 1948年)が提起した「問い」について論じたものである。
ガンディーはインドのグジャラート州出身でイギリスに留学し、弁護士となった。ガンディーは赴任した南アフリカで、インド人など有色人種に対する白人の差別に憤りを覚え、反差別運動を主導した。インドに帰ってからはイギリスからの独立運動に参加した。そのとき取った手法が極めてユニークである。それはひたすら「歩く」、「食べない」、(糸車を)「回す」ことでイギリスへの抗議の意思を示そう、というものだった。このガンディーの(特定の宗教を超えた)汎宗教的ともいうべき運動は、紆余曲折を経て、第二次大戦終結後にインドを独立に導くのである。ガンディーの非暴力主義の背後には、「欲望」こそが争いの根源にあるという思想があった。
本書によれば、ガンディーにとって「真の自由」とは、すべての欲望から解放されることにあった。ガンディーは、「人間よ、自己の欲望と向き合え。そして反省し、真理に従って行動せよ」と述べている。欲望に塗れてアクセク生きている現代のわれわれへの、何という鋭く痛切な言葉だろうか。考えてみれば確かに、人々の間の争いも、そして大きく国家間の争いもすべてが人間の欲望の衝突から始まっているのである。古く、ブッダをはじめとするインドの聖者たちがこのことを見抜き、「欲望を捨てること」を教えの中核に置いたのである。
ガンディーを巡っての著者と禅僧・南直哉師との対談(終章)が興味深い。頭でっかちを避け、行動することでガンディーに一歩近づけるのではないか、というヒントが議論されている。ガンディーのような「聖人」になることは凡人には不可能に近い。ガンディーの教えが今日的な意義を持つとすれば、「普通の人間」であっても、少しでも欲望を抑えることで「争いの連鎖」を断ち切ることに繋がるのでは、というヒントと受け止めた。
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ガンディーからの<問い> 君は「欲望」を捨てられるか 単行本 – 2009/11/21
中島 岳志
(著)
- 本の長さ229ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2009/11/21
- ISBN-104140814004
- ISBN-13978-4140814000
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2009/11/21)
- 発売日 : 2009/11/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 229ページ
- ISBN-10 : 4140814004
- ISBN-13 : 978-4140814000
- Amazon 売れ筋ランキング: - 722,336位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 17,799位宗教 (本)
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2010年3月13日に日本でレビュー済み
私のこだわり人物伝 (2008年12月-2009年1月) (NHK知るを楽しむ (火))
が大変
面白かったので読んでみたところ、ほぼ似たような内容でした。「こだわり人物伝」を
基に加筆したものだということですが、放送のときよりも「なぜ日本人である私たちが
ガンジーに今心揺すぶられるのか」という風につなげていっているところが、より興味を
ひかれるように思いました。
僧侶である南直哉氏との対談も、なるほどと思わせる部分が多くありました。
ガンジーの行動や言葉を自分なりに考えてみるきっかけになりそうです。
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