売れっ子作家の橘玲さんが、文藝春秋や朝日の『論座』や週刊現代など、あちこちのメディアで「進化心理学を学ぶ最良のガイド」などと紹介しまくったために品切となり、にも関わらず版元のNHK出版がいっこうに増刷せぬため古書で長らく法外な高値が付いている。ぼくが最後に「版元品切」を確認してからもう2年近く経つが、NHK出版、どうするつもりなんだろう。このまま絶版扱いにする気か。
仮に絶版となっても何年か待てば『心の仕組み』のようにちくま学芸文庫で蘇るのかもしれないが、2002年に原著、2年後の04年に早くも翻訳(すこぶる良訳)が出たこの本は、今でもたしかに『心の仕組み』と並んで「進化心理学を学ぶ最良のガイド」だと思うし、こういう重要な本が読みたい時に適正価格でさっと入手できない現状ってものが腹立たしくて、それで少々キレ気味にレビューを書いてる次第である。
とはいえ、読者のほうにも問題があって、この本、長期品切れは上巻だけで、中巻・下巻はふつうに買えるのである。「進化心理学のガイド」としてはむしろ中巻以降が本番であり、上巻はいわば序論というか、イデオロギー論争的な「露払い」みたいなものであって、そこだけ読んでも、はっきりいって、しょうがない。売れるんなら、3冊セットでどかどか売れなきゃ嘘なのだ。そうなれば増刷も掛けやすいはずで、だから版元ばかりを責められない。
著者の主張は、ようするに、「近代この方、『人間とは理性的な動物である。』なるテーゼが唱えられてきたけれど、ヒトの心ってのは積年の進化の過程で形成されてきたものであり、先天的な資質にこそ強く規定されている。」といったものだ。この主張が多大な反発を買いやすいってことは誰しもが納得されるであろう。だからこそピンカー氏も、上巻まるごと紙幅を費やして反論を試みたわけだ。
ぶじに重版されて新刊で買えるようになったら3冊まとめて買って読めばいいが、上巻だけ定価の3倍以上もの値を付けてるんなら無理に買う必要はない。中巻と下巻、およびちくま学芸文庫の『心の仕組み』上下を買って精読すればいい。「進化心理学」の要諦はそれで充分体得できます。
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人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス) 単行本(ソフトカバー) – 2004/8/31
スティーブン・ピンカー
(著),
山下 篤子
(翻訳)
- 本の長さ301ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2004/8/31
- ISBN-104140910100
- ISBN-13978-4140910108
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登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2004/8/31)
- 発売日 : 2004/8/31
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 301ページ
- ISBN-10 : 4140910100
- ISBN-13 : 978-4140910108
- Amazon 売れ筋ランキング: - 320,893位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2019年6月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年8月2日に日本でレビュー済み
文章も内容も難解で、タイトルの意味を体感するに至りませんでした。
ただ、高評価者のレビューもあり、腰を据えて格闘するか、ピンカーに通じる易しい本からステップアップするのがいいかと思いました。
……タイトルは、とても食指を動かすものなんだけどなあ。
ただ、高評価者のレビューもあり、腰を据えて格闘するか、ピンカーに通じる易しい本からステップアップするのがいいかと思いました。
……タイトルは、とても食指を動かすものなんだけどなあ。
2022年9月11日に日本でレビュー済み
「ブランクスレート」「高貴な野蛮人」「機械のなかの幽霊」という
育ち論者、環境論者、行動主義者らの社会科学系からでてきた人についての
妄想を木端微塵にしてくれています。
しかし、これほどの科学者が、上記の妄想を論破するために本書を書くという
労力をかけなければならない状況とは一体なんなんだろうか。
昨日の新聞でも、「インテリジェント・デザイン」という、
人は何らかの知的な存在によって作られたという説を
学校の教科書に載せる・載せないで議論しているようです。
どんな宗教を信じる・信じないは個人の自由ですが、
それを科学の世界に持ってくる事の危険性を感じます。
宗教は偉大な文化だと思いますが、
科学はそれからは完全に守られた状況で事実を解明することに集中すべきだと思います。
当然、科学の力を利用する際には、善悪を含めて様々な観点から慎重を期すべきですが、
それは科学が新たな領域を見つけたあとに行うべきでしょう。
上中下3巻セットあわせて必読書です。
なお、進化理論について興味を持たれた方には以下の書籍がお薦めです。
リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」「延長された表現型」「盲目の時計職人」
マット・リドレー「やわらかな遺伝子」「ゲノムが語る23の物語」「徳の起源」「赤の女王」
ニコラス・ハンフリー「喪失と獲得」
2008/3/8読了(上中下巻)
育ち論者、環境論者、行動主義者らの社会科学系からでてきた人についての
妄想を木端微塵にしてくれています。
しかし、これほどの科学者が、上記の妄想を論破するために本書を書くという
労力をかけなければならない状況とは一体なんなんだろうか。
昨日の新聞でも、「インテリジェント・デザイン」という、
人は何らかの知的な存在によって作られたという説を
学校の教科書に載せる・載せないで議論しているようです。
どんな宗教を信じる・信じないは個人の自由ですが、
それを科学の世界に持ってくる事の危険性を感じます。
宗教は偉大な文化だと思いますが、
科学はそれからは完全に守られた状況で事実を解明することに集中すべきだと思います。
当然、科学の力を利用する際には、善悪を含めて様々な観点から慎重を期すべきですが、
それは科学が新たな領域を見つけたあとに行うべきでしょう。
上中下3巻セットあわせて必読書です。
なお、進化理論について興味を持たれた方には以下の書籍がお薦めです。
リチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」「延長された表現型」「盲目の時計職人」
マット・リドレー「やわらかな遺伝子」「ゲノムが語る23の物語」「徳の起源」「赤の女王」
ニコラス・ハンフリー「喪失と獲得」
2008/3/8読了(上中下巻)
2012年2月28日に日本でレビュー済み
他の人のレヴューの評価があまりにも高いので一言。正直、素人には読みこなすのは難しい。認知科学、コンピューター工学、脳科学、遺伝学
進化論、ゲームの理論といった多岐にわたる分野を網羅するため、これらの知識が一定程度ないと読むことはできない。おそらくレヴュー
を書いて5星を付けている人は、これらの分野の専門家や研究者であるか、自分がどれだけ知性をもった人間であるのかを誇示したいのか、どちらかだろう。ドォーキンスの『利己的遺伝子』もそうだが、レヴューには「わかりやすく解説」だとか、「中学のとき読んで感動した」とか書いてありながら、どうみても素人が手を出して咀嚼できる類のものではないことが多い。ジョン・ロールズの『正義論』を読んで「高校のとき読んで感動した」なんてレヴューがあったら、憤懣ものだ。どうも自然科学系の書物のレヴューには、こういった知的ディレッタントに耽るものが多すぎる。
たしかに、勉強になる部分も多いし、ピンカー特有の興味深い記述も多いのだが、決して簡単に読める本ではない。残念ながら、訳もこなれているとは思えない。英語ができる人は、むしろピンカーのホームページにいって、彼のエッセーや論文をダウンロードして読んだほうがよい。
進化論、ゲームの理論といった多岐にわたる分野を網羅するため、これらの知識が一定程度ないと読むことはできない。おそらくレヴュー
を書いて5星を付けている人は、これらの分野の専門家や研究者であるか、自分がどれだけ知性をもった人間であるのかを誇示したいのか、どちらかだろう。ドォーキンスの『利己的遺伝子』もそうだが、レヴューには「わかりやすく解説」だとか、「中学のとき読んで感動した」とか書いてありながら、どうみても素人が手を出して咀嚼できる類のものではないことが多い。ジョン・ロールズの『正義論』を読んで「高校のとき読んで感動した」なんてレヴューがあったら、憤懣ものだ。どうも自然科学系の書物のレヴューには、こういった知的ディレッタントに耽るものが多すぎる。
たしかに、勉強になる部分も多いし、ピンカー特有の興味深い記述も多いのだが、決して簡単に読める本ではない。残念ながら、訳もこなれているとは思えない。英語ができる人は、むしろピンカーのホームページにいって、彼のエッセーや論文をダウンロードして読んだほうがよい。
2017年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
上、中、下の三巻のうち上の部だけ行方不明になっていたので買いなおしました。
山下篤子さんの翻訳もよかったと思います。
三部の大作ですがテンポが小気味よくて一気に読ませてもらいました。
初見から何年もたちますが未だに古くはならず、
視野を広げるという意味だけでもこれは良書です。
山下篤子さんの翻訳もよかったと思います。
三部の大作ですがテンポが小気味よくて一気に読ませてもらいました。
初見から何年もたちますが未だに古くはならず、
視野を広げるという意味だけでもこれは良書です。
2004年11月12日に日本でレビュー済み
確かに読み出したら止まらない部分もあった。70年代の「社会生物学」を巡る論争は面白かった。「人間の行動が遺伝する」と発言しただけで、「反動」「ナチス」と決め付けられて糾弾される様子は、いかに政治の時代のできごとであったとはいえ、アメリカで起きたことだとは信じがたい。ピンカーの洒脱で辛らつな文章とあいまって、良質の科学史研究として読めた。
でも私が本書に期待していたのは、客観的で、しかも驚くべき事実の積み重ねによって「空白の石版」派を論破すること。人間と進化に関する最新の科学的発見をたくさん盛り込んで、「へーっ」と言わせてほしかった。でもこれでは「人間って空白の状態で生まれてきていなければならない」とする道徳派に対して、「科学的にはこうなっていなければならない」と諭しあっている感じ。
『言語を生み出す本能』は、脳と言語の関係ってこうだったのか!という感動を、ほんとに笑えるアメリカンジョーク連発で伝えてくれた。本書にその妙が少なかったのは残念。そして誤解を避けるためだとは分かっているけれど、「私は遺伝だったら何をしてもいいと言っているわけではない」という繰り返しにちょっとうんざりした。
ピンカーの未訳の本が何冊かあるみたいなので、その出版に期待したい。
でも私が本書に期待していたのは、客観的で、しかも驚くべき事実の積み重ねによって「空白の石版」派を論破すること。人間と進化に関する最新の科学的発見をたくさん盛り込んで、「へーっ」と言わせてほしかった。でもこれでは「人間って空白の状態で生まれてきていなければならない」とする道徳派に対して、「科学的にはこうなっていなければならない」と諭しあっている感じ。
『言語を生み出す本能』は、脳と言語の関係ってこうだったのか!という感動を、ほんとに笑えるアメリカンジョーク連発で伝えてくれた。本書にその妙が少なかったのは残念。そして誤解を避けるためだとは分かっているけれど、「私は遺伝だったら何をしてもいいと言っているわけではない」という繰り返しにちょっとうんざりした。
ピンカーの未訳の本が何冊かあるみたいなので、その出版に期待したい。
2014年11月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とても良い。気に入ってます。
もし機会があれば、再度購入を検討してみたい。
もし機会があれば、再度購入を検討してみたい。
2009年1月18日に日本でレビュー済み
人類の進化のスピードは、社会の変化よりずっと緩やかだ。
だから、私達は原始時代の生活に適応した脳で、この複雑な現代社会を
生きていかなくてはならない。
そんな中、私達は、人間を理性的な存在としてとらえるあまり、
高い期待を抱き過ぎて、かえって失望することが多いように思う。
本書を読むことで、人類が進化の過程で獲得してきた性質を
ありのままにとらえ、人に対してもっと現実的な期待を抱けるはずだ。
一部の科学好きの人のための学術書ではなく、現代社会に生きる多くの
社会人に読んで欲しい良書。
だから、私達は原始時代の生活に適応した脳で、この複雑な現代社会を
生きていかなくてはならない。
そんな中、私達は、人間を理性的な存在としてとらえるあまり、
高い期待を抱き過ぎて、かえって失望することが多いように思う。
本書を読むことで、人類が進化の過程で獲得してきた性質を
ありのままにとらえ、人に対してもっと現実的な期待を抱けるはずだ。
一部の科学好きの人のための学術書ではなく、現代社会に生きる多くの
社会人に読んで欲しい良書。