多くの文化には小人・巨人伝説がある。
著者は、２００３年にフローレス島でフロレシエンシスを発掘する。
身長一ｍ程で脳は小さいがその頭蓋から増大した前頭葉・側頭葉を持っていたことが分かり、火と石器を使用していた。
身体各部は、原始的でアウストラロピテクス（いわゆる猿人）の特異な特徴を持っているが、ホモ属の特徴も併せ持っている。
このことは、通説と矛盾する。
このため、人類の進化史のどこに位置付けるかという問題がある。
この発掘された小人は、僅か１万８０００年前に亡くなっている。この島に８万年は生息し１万２０００年前に絶滅した。
そして、同時期に現生人類が２０万年に亘り生息していたのだ。つまり、併存していた。
今日、殆んどの古人類学者は最初の人類（ホモ属）は、アフリカを出てアジアに向かったと考えているが絶対で確固たる理由があってのことではない。（検察のストーリー捜査とよく似ている）
草原の拡がりの中心がアジアでアフリカは周辺であったこともあり、双方向の移動があったことは、他の動物で証明されている。
私たちは、未だ表面を削っているに過ぎない。（この考えは、真っ当だろう）
現在、ホモ・ハビリス（いわゆる原始ホモ属）から進化した（なぜ、現生人類と併存していたのであろう）、ホモ・エレクトス（いわゆる原人）が矮小化した（著者の説）、発達障害を持った骨である（なぜ、８万年も続いたのであろうか）等の説があり
今後の、発掘が待たれる。
著者は、「島の法則」という進化の不思議（矮小化・巨大化、独自進化）について興味津々の数々の実例をあげている。
又、他の生物の絶滅が石器が出土する地層と重なることも明らかにしている。
古人類学会も世間の常として科学ではなく思想とエゴの泥仕合であることも。
サイエンスライターが入っているが編集に冴えがみられず、かなり読みづらい。翻訳者も困ったのではないだろうか。
けれども、「小人」というのは、どこか魅かれるところがある。
小人伝説については、「闇の奥」辻原登という優れた小説があるが、そこにもフローレス島の近くのボルネオ島が出てくる。奇妙な符合の一致である。
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