先ず、「細胞が私たち人間と同じように、思い、悩み、予測し、相談し、決意し、決行する生き物だということ」つまり、「細胞が意志を持っている」というのが、本書での著者の一貫した主張だ。
次に、こういった主張には、直ちに擬人的、情緒的、非科学的といった非難が浴びせられることになる。
そうして、ウニ、ヒトデといった棘皮動物の大食細胞、マウス、ヒトの始原生殖細胞やヒト、ヒトデ胚細胞の振る舞いを振り返りながら、従来の生物学の壁を十分に意識しつつ、「細胞の意志」を記述してゆくという構成になっている。
結局、著者の主張する「細胞が意志を持つ」生物学が、「分子生物学」のように体系を備えたパラダイムになるかどうかは疑問だ。しかし、前者が擬人化というなら、後者も偽物化という、もう一つのメタファーと言えなくもない。そうして「生物の最大の特徴が自発性であるとするなら、その根源である細胞を理解せずに、人間全体を理解できない」という著者の主張も、本書を通じて腑に落ちるところとなった。そしてなにより、門外漢にとって、細胞の構造やその振る舞いを身近に感じさせてくれることに本書は成功している。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥2,000以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
細胞の意思 〈自発性の源〉を見つめる (NHKブックス) 単行本(ソフトカバー) – 2008/7/26
団 まりな
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,067","priceAmount":1067.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,067","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"Mi%2FA6usreBERBYSfprI2NAnRf1MZxGhQLaI56YFr4ypQNJBQeXqKXeMtGgVzODP73kpfgKwjbpKElWv%2Fk808pihmt4RNvyyduIi%2BhTBDbIuogxcw3U9CJXIb2jb6K0lH","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}]}
購入オプションとあわせ買い
思い、悩み、決断する細胞たち!
細胞をベースにして生命の本質を解き明かす、新しい生物学の登場!
- 本の長さ219ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2008/7/26
- ISBN-104140911166
- ISBN-13978-4140911167
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
出版社からのコメント
「小さな生命」の豊かな世界。
体内に異物が侵入すると、自らをカーペットのように広げ、仲間たちと協力し合いこれを覆ってしまう大食細胞。
目的地である生殖巣に向かって、さまざまな困難を乗り越え胚の体内を移動する始原生細胞。
外的変化にしなやかに対応しながら、的確に行動する細胞たちのけなげな姿を生き生きと描き、生命を分子メカニズムの総体ととらえる硬直した発想を超えて、細胞こそが自発性の根源であることを力強く打ち出す。
生命という複雑な現象の本質に迫る野心作!
著者について
● 団まりな(だん・まりな)
1940年、東京生まれ。階層生物学研究ラボ責任研究者。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。専攻は発生生物学、理論生物学。大阪市立大学理学部助手、同大学教授を経て退官後現職。
登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2008/7/26)
- 発売日 : 2008/7/26
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 219ページ
- ISBN-10 : 4140911166
- ISBN-13 : 978-4140911167
- Amazon 売れ筋ランキング: - 172,092位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 284位生物学 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2008年11月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年2月21日に日本でレビュー済み
かねがねDNAに意志があり、粘菌や木々にも意志があると考えていますので、細胞に意志があるのは当然のことと思います。最近、「量子力学が明らかにする存在、意志、生命の意味」(Amazonで発売)において、電子には意志があることが述べられています。是非、合わせてお読みになると納得されると思います。
細胞の意思―“自発性の源”を見つめる (NHKブックス)
2014年4月26日に日本でレビュー済み
多くの精密な観察から、細胞の行動を分析しその意味を読みとって紹介されている。
著者は細胞の行動を擬人化して解釈する事について、非科学的という批判を予想し、たくさん実例を挙げて説明している。
しかし、私見ではその懸念は全く不要ではないかと思う。
というのは、多細胞生物が進化発展して複雑化し、道具を使い、言葉でコミュニケーションを取り、文字で他の個体や将来に残して行くと云う手段を獲得したものが・・まさに我々人間だから。
我々が行い、語り、記しているのは、細胞の意思そのものである。
ただ、その細胞の意思の上に、弱小哺乳類であった人類の祖先の記憶が重なって、修飾されているとは思う。ドラッカーが述べたgreed and fear(強欲と恐怖)といったところだろう。
更に言えば、50兆とも60兆とも言われる人体の細胞が、個々の細胞が判断しながら全体として整然と役目を果たしている(中には逸脱して癌化したり間違ったりする細胞もあるが・・そのチェック機構もある)。
今は地球上の何十億の人間が、常にどこかで激しくいがみ合っている。通信や情報の技術は発展しても搾取や情報操作も逆に進化。まだまだ人間は、細胞の共助の智慧に遥かに遠く及ばない。
マトリックスのセリフの様に、
「哺乳類は周囲との共存を図るが、人類は宿主(地球)が滅びるまで増殖し収奪しつくす、ウイルスと同じだ」という面も残念ながら有る。
iPS細胞などにより急速に個々の細胞の解明は進むだろうが、「細胞社会」のメカニズムの解明やその根本的な意味を知れるのはいつだろうか?
解明されるにつれ、社会や個人に有益なものもきっとあるだろう。
一方、個体としての人間には個々の細胞より有利な面もある。
人間の可塑性・・ヒトは教育や環境によって様々な能力を得られる。
細胞でなら、iPS細胞の様な能力と言えるだろうか。
本書に戻ると、記載が正確を期され慎重なのと、その分析も多面的に考察されているので、
読むのにやや根気が要る。
著者は細胞の行動を擬人化して解釈する事について、非科学的という批判を予想し、たくさん実例を挙げて説明している。
しかし、私見ではその懸念は全く不要ではないかと思う。
というのは、多細胞生物が進化発展して複雑化し、道具を使い、言葉でコミュニケーションを取り、文字で他の個体や将来に残して行くと云う手段を獲得したものが・・まさに我々人間だから。
我々が行い、語り、記しているのは、細胞の意思そのものである。
ただ、その細胞の意思の上に、弱小哺乳類であった人類の祖先の記憶が重なって、修飾されているとは思う。ドラッカーが述べたgreed and fear(強欲と恐怖)といったところだろう。
更に言えば、50兆とも60兆とも言われる人体の細胞が、個々の細胞が判断しながら全体として整然と役目を果たしている(中には逸脱して癌化したり間違ったりする細胞もあるが・・そのチェック機構もある)。
今は地球上の何十億の人間が、常にどこかで激しくいがみ合っている。通信や情報の技術は発展しても搾取や情報操作も逆に進化。まだまだ人間は、細胞の共助の智慧に遥かに遠く及ばない。
マトリックスのセリフの様に、
「哺乳類は周囲との共存を図るが、人類は宿主(地球)が滅びるまで増殖し収奪しつくす、ウイルスと同じだ」という面も残念ながら有る。
iPS細胞などにより急速に個々の細胞の解明は進むだろうが、「細胞社会」のメカニズムの解明やその根本的な意味を知れるのはいつだろうか?
解明されるにつれ、社会や個人に有益なものもきっとあるだろう。
一方、個体としての人間には個々の細胞より有利な面もある。
人間の可塑性・・ヒトは教育や環境によって様々な能力を得られる。
細胞でなら、iPS細胞の様な能力と言えるだろうか。
本書に戻ると、記載が正確を期され慎重なのと、その分析も多面的に考察されているので、
読むのにやや根気が要る。
2008年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
生物の階層性を大胆に語ってきた団先生。ということで期待したのですが・・・
細胞を情緒的かつ科学的に語る試みは気合十分ですが、生物をかじっている人間に
とっては、物足りなく、また、平板。団先生の醍醐味が100分の1くらいしか
味わえない。編集者の方は、反省して欲しいです。団先生の本領は、こんなものでは
ないのですから・・・。
細胞を情緒的かつ科学的に語る試みは気合十分ですが、生物をかじっている人間に
とっては、物足りなく、また、平板。団先生の醍醐味が100分の1くらいしか
味わえない。編集者の方は、反省して欲しいです。団先生の本領は、こんなものでは
ないのですから・・・。