『特別料理』で得も言われぬ不気味な「奇妙な味」を味合わせてくれた、エリンの短編集。収録された掌品は結末の跡に、更なるドラマを感じさせる作品が多い。翻訳家も錚々たるメンバーが揃った、珠玉の短編集。気に入ったのは以下。
「エゼキエル・コーエンの犯罪」(訳:仁賀克雄)
休暇旅行でイタリアを訪れていたアメリカ人警官は、ナチと内通した裏切り者とされたレジスタンスの娘と出会い、二十年以上の歳月を超えて、真相究明に乗り出す。ほろ苦い結末ながらストレートに感動できる佳作。
「古風な女の死」(訳:永井淳)
画家の妻が夫のアトリエで、胸に深々とナイフを突き立てられて死んでいる冒頭から、その死の真相を探る本格推理。。。。にみせかけての意外な結末。ミステリとしてギリギリセーフかつ悪意の深さが伺えるアイデアが秀逸。
「12番目の彫像」(訳:永井淳)
舞台はイタリア。映画制作の現場と辣腕プロデューサーの思惑がぶつかり合って。。。という中篇ミステリ。長さゆえか、ミステリとしては凡作であるが、映画好きにはある種堪えられない構図の「対決もの」として楽しめる。
「最後の一壜」(訳:矢野浩三郎)
この世に一本しかないワインを巡る、愛憎渦巻く復讐譚。鮮烈にしてなんとも言えない余韻を残す、傑作。
「画商の女」(訳:深町眞理子)
「127番地の雪どけ」と同じく、持つ者とと持たざる者の対決編。因業な画商をやり込めるアバズレの冴えたやり口が極めて痛快。
「清算」(訳:永井淳)
結末から更なるドラマの広がりを感じさせる。時代が生んだアイデアは、デヴィッド・マレルのアレと同じテーマを鮮やかに、しみじみ怖く料理している。
「天国の片隅で」(訳:丸本聰明)
短編にしておくのは勿体無いようなアイデアだが、長編だとダレるんだろうなぁと。個人的に、俺自身の持っている闇の琴線に触れる、大変に怖くも爽快感のある傑作。
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最後の一壜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (ハヤカワ・ミステリ 1765) 新書 – 2005/1/14
- 本の長さ363ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2005/1/14
- ISBN-104150017654
- ISBN-13978-4150017651
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2005/1/14)
- 発売日 : 2005/1/14
- 言語 : 日本語
- 新書 : 363ページ
- ISBN-10 : 4150017654
- ISBN-13 : 978-4150017651
- Amazon 売れ筋ランキング: - 841,923位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年4月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
スタンリイ・エリンの3冊目にして最後の短編集。
『特別料理』、『九時から五時までの男』に比べると格段に落ちる。以前と同様に、年にほぼ1篇というペースは守って書かれたようだが、アイデアが枯渇してしまったのか。丁寧なつくり、磨き込まれた完成度はうかがえるのだが、基本となる物語にきらめきを感じない。
本書には15篇が収められているが、テーマ、舞台、長短はさまざま。物語としての完成度は高いので、『特別料理』のようなエリンを期待しなければ充分に楽しめるだろう。
とはいえ、光る作品もある。標題になっている「最後の一壜」だけは傑作と呼べるかも知れない。
『特別料理』、『九時から五時までの男』に比べると格段に落ちる。以前と同様に、年にほぼ1篇というペースは守って書かれたようだが、アイデアが枯渇してしまったのか。丁寧なつくり、磨き込まれた完成度はうかがえるのだが、基本となる物語にきらめきを感じない。
本書には15篇が収められているが、テーマ、舞台、長短はさまざま。物語としての完成度は高いので、『特別料理』のようなエリンを期待しなければ充分に楽しめるだろう。
とはいえ、光る作品もある。標題になっている「最後の一壜」だけは傑作と呼べるかも知れない。
2005年2月12日に日本でレビュー済み
一年一作発表の短編だけに、味わいもあるが、いずれの作品にも共通する
ものは人間の残酷と悪である。軽妙なハッピーエンドの中にもそれはある。
読むにつれ癖になっていく。熟成した味の短編に満ちた本書こそ「最後の
一瓶」ではないか。
ものは人間の残酷と悪である。軽妙なハッピーエンドの中にもそれはある。
読むにつれ癖になっていく。熟成した味の短編に満ちた本書こそ「最後の
一瓶」ではないか。