きょうから寝るまえの読書は、ワールズ・ベスト1968『ホークスビル収容所』だ。収録されている16作品中、サミュエル・R・ディレーニイの『ドリフトグラス』、ロバート・シルヴァーバーグの『ホークスビル収容所』、ハーラン・エリスンの『おれには口がない、それでもおれは叫ぶ』が既読のものだ。
1作目は、リチャード・ウィルソンの「見えない男」ある朝、目が覚めると男は自分が透明であることに気がついた。妻を脅かさないようにして説明した。子どもたちにも説明した。それからドタバタ劇が起こり、研究所の人間がきた。妻もまた透明人間になっていた。研究所の実験のせいだった。元に戻れた。研究所の実験のために、主人公がのんだ丸薬のせいで透明になっていたのだ。その実験について秘密にするということで、主人公は研究所の所長に100万ドルを要求した。所長は仕方ないとあきらめた。めでたしめでたしの物語だった。読んでて楽しい短篇だった。おもしろかった。
2作目は、サミュエル・R・ディレーニイの「ドリフトグラス」肉体改造されて水陸で生きられる身体に改造された主人公は、以前に海底ケーブルをかける仕事で事故に遭った。両棲人間である若者が主人公と同じ仕事につくことになった。結果はまたしても事故。若者は死んだ。抒情的な叙述でよかった。ちなみに、ドリフトグラスとは、コカ・コーラの壜などガラス材が割れて、それが海底で水流によって摩滅して角がとれて、月の光に照らしてみたりしたら、すごくきれいに見えるというしろもの。それは海辺でとれる。ガラスが材質のもの。主人公はそれを集めている。
3作目は、コリン・キャップの「ヴァーダムトへの使節」まったく異質の異星人とのコミュニケーションはどうしたらよいか。地球人側は、赤ん坊を使節にして送り出した。相手の異星人も異星人の赤ん坊らしきものを地球側に送り出した。変質する金属棒だ。
4作目は、R・A・ラファティの「いなかった男」未来人だと称する男が町のひとりの男を消した。みんなの見ているまえで輪郭が薄れていき消えたのである。町のひとたちは、怒って未来人を吊るした。未来人がいた痕跡を町じゅうから失くした。
5作目は、アイザック・アシモフの「反重力ビリヤード」反重力の公開実験をした男が死んだ。原因は反重力の場にビリヤードの玉を突き入れたために、それが男の胸を貫いてしまったからである。ビリヤードの玉を突き入れたのは男の古くからの知り合いだった。事故? 偶然? 殺人? それはわからない。
6作目は、ロバート・シルヴァーバーグの「ホークスビル収容所」これは、サンリオSF文庫の『ベストSF1』に収められて読んだもので、傑作だった。政府が、反政府活動をしていた140人あまりの人間を、後期カンブリア紀の三葉虫のいる時代に送って、収容所に入れていたという設定のもの。
7作目は、トーマス・M・ディッシュの「われらの数字」階段の数を数えることからはじまって、数字について思いをめぐらす主人公。中性子爆弾で人々は死んだ。生き残った彼は数字について思いをめぐらしながら生きていた。そこへ女から電話がある。つぎには部屋の外にまでくる。男は飛び降りて死んだ。
8作目は、ロジャー・ゼラズニイの「ファイオリを愛した男」永遠の命をもった男がファイオリという種族の女と出合って愛し合う。しかしファイオリは相手の死ぬ1か月前にしか現われない。男はしかし永遠の命をもっていた。男はファイオリと別れる。男は墓守としての仕事をつづける。
9作目は、アンドリュウ・J・オファットの「人口爆縮」全世界の人間がある齢になると死亡した。はじめは80歳代だったが、78歳になると死亡した。それから年代が下がっていって、主人公は45歳なのだが、主人公が45歳のときの人間は57歳で死ぬことになっている。世界から老人がいなくなった。
10作目は、ハーラン・エリスンの「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」万能コンピューターが開発されて、人類はそれに滅ぼされた、5人の人間を残して。5人はコンピューターに憎まれて、永遠の命を与えられながら苦しめられていた。主人公の男は、コンピューターに復讐するために4人を殺した。この短篇は、短篇集『死の鳥』の中にも入っているもので、その短篇集を読んだときにも、わかりにくい作品だなと思った。作品の内容は、わかるのだが、なぜこういうふうな作品設定のものが評価が高いのか、わからないのだった。ハーラン・エリスンのものはすべて買い求めて、いまも本棚にあるけれど、評判ほどすぐれているものとは思われない。なぜにあれほど評価が高いのか、ぼくには理解できない。たしかに、どの短篇も発想は奇抜で、独特のものではあるが。
11作目は、ロン・グーラートの「カメレオン部隊」変幻自在のカメレオン部隊の一員がある男を捕まえに惑星に行く話。ある男とは、今後いっさい戦争がない世界をつくるという男。会って話してみると、戦争はなくならないという。主人公は気落ちする。退屈な読み物だった。読むのに4、5日かかった。
12作目は、キース・ロバーツの「コランダ」未来の地球で氷河期である設定。美女のコランダは部族のもののなかでもっとも美しい女性だった。コランダは婿選びに、一角獣を捕まえてくることとした。部族の男たちは船に乗り、一角獣を求めて氷の上を走った。一角獣は捕まえられた。多大な犠牲の上に。
うかつにもメモしなかったので、この短篇集のどこにある言葉か言えないのだけれど、「二十八歳はまだ若い」みたいな言葉があって、以前に書いたことだけど、西洋文学では二十八歳ってよく出てくる年齢で、「もう二十八歳にもなって」とかの表現が多かったので、ここでは意外だった。大人というものの分水嶺かな。
探してる言葉が見つかった。ロン・グーラートの「カメレオン部隊」360ページに、「(…)ギャプニーさん、わたしがよく二十八歳の青年にまちがわれるのは、十分に走ったり跳んだりしているからだと思いますね」(浅倉久志訳)正確に引用するとこう。でもまあ、ぼくの記憶とそう違わないと思わない?
ロン・グーラートの「カメレオン部隊」には、つぎのような言葉もあった。351ページ。全行引用詩に使えるかも。「(…)詩の引用はやめたんですか?」(浅倉久志訳)
13作目は、R・A・ラファティの「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」世界最高の頭脳の持ち主10人と3台の機械が、過去に干渉して、現代がどう変わるかを試していた。というお話だが、ラファティの短篇特有の難解さがあり、明確な輪郭を見せてくれなかった。言葉を追うのだが意味が掴めない。悔しいから、もう一度読み直した。間違っていた。歴史に手を出すたびに、人間が8人と1台の機械だったのが、10人と3台の機械になり、さらに3人と1台の機械になり、さいごには、人間が7人と機械1台になってた。ということは、過去に干渉して現代を変えるという実験は成功したと言えるのだろう。
14作目は、ラリイ・ニーヴンの「恵(めぐ)まれざる者」ある惑星の生物が知的生命体であるかどうかを調査しにきた主人公。わかったことは、その生物がテレパシー能力のある知的生命体であったということ。古代には宇宙を支配していた種族であったが、退化したものたちであったということである。
15作目は、ブライアン・W・オールディスの「白夜」主人公は人間。狼男を追っている。いまのところ人間は機械と共存しているが、機械は人間を排除したがっている。人間の数は減り、狼男たちの数は増えている。未来は狼男たちのものか、機械のものか。というところで終わり。
さいごの16作目は、D・G・コンプトンの「イギリスに住むというのは」84歳のピアニストが旧友の作曲家の家に行く。友人は新しい機械を持っていた。機械は感覚を記録し再生するという。友人はその機械を使ってピアノを弾くことを望む。主人公は拒んだが、やがてピアノを前にして弾こうとするが、発作を起こす。友人は医師に聞く。死なないだろうかと。医師は言う。死なないだろうと。主人公はそれを聞いて笑う。顔では笑っていなくとも。519ページに、「四分の一ほどの真実をつげる。」(安田 均訳)という言葉が出てくる。この言葉は応用がきく。「いささかほどの真実を含んでいた。」とか。
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ホークスビル収容所 (ハヤカワ文庫 SF 375 ワールズ・ベスト 1968) 文庫 – 1980/1/1
- 本の長さ551ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1980/1/1
- ISBN-104150103755
- ISBN-13978-4150103750
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1980/1/1)
- 発売日 : 1980/1/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 551ページ
- ISBN-10 : 4150103755
- ISBN-13 : 978-4150103750
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