傑作が豊富に詰まった芳醇なる豊穣なる短編集でありますではその魅力の寸分の一でも伝わるようにいってみましょうレッツ個人的プレイバック。
「時の六本指」
時間の流れの適用を自分にだけ極端にゆっくりにさせるというのは、今からするとありがちに思えるかもしれませんがやはり羨ましい永遠の夢であります。この話の主人公、最初はのび太でも思いつかないようなかなり好き勝手ないたずらをやっておりましたが、やがて一瞬が万秒ともなる時間を活かして数分で仕事を終わらせたり一日で何百冊もの本を読んだりします。いやあ羨ましい。
「カミロイ人の初等教育」
地球人の能力を遥かに超越したカミロイ人が登場します。毎年その歳でどんなことを教わるのか、その羅列とジンバブエも青ざめるインフレーションが笑いを誘います。
「カミロイ人の行政組織と監修」
今度はカミロイ人の住む星にスポットライト。ユートピアなのかディストピアなのかよくわかりませんが、地球人の中でも相当に劣等であろうわたしに向かない場所であることは確かであります。
「うちの町内」
どうもヘンなことが起こっているらしく、それにやや気づいてはいるものの、それほど騒ぐわけでもなく流れていく日常。でも冷静に考えると、かなりとんでもないことをやってのけているのであります。その場で生成って何すか。
「ブタっぱらのかあちゃん」
不要なものを何でもさっぱり消してしまうという便利なマシーンがテーマとなる話。しかしまあ、sfのしかもこうした短編に出てくるそんなものがろくでもないということは広く知れ渡った真実でありまして……しかし笑える好短編であります。
「町かどの穴」
わけがわかりませんが、しかし笑わずにはいられない勢いに満ちたドタバタであります。首をひねりつつ笑いましょう。
「他人の目」
そうそうそうそうそうと読みながら百度もうなずいてしまいました。他人の目というのは人の眼を借りてその眼でもって世界を眺められるという機械が登場するがゆえの題名でありますが、それは視界ジャックなどという生易しいものではありません。ここで語られるのは、ひとりひとりの人間はまったく異なった宇宙を生きているということ。つまり地球はたった一つの宇宙にあるのではなく、地球に住んでいる人全員分の、今なら約80億人それぞれの宇宙と地球と世界があるというのです。これはまさしくわたしが思っていたことでありまして、光源氏が千年も前に突きつけられた現実でもありましたけれども、やはり人は究極的には全員孤独なのでありたとえ家族だろうとその空隙を埋めることは決して叶わないのだと改めて思った次第であります。だってもうひとりひとり別々の宇宙にいるのですから、これはもうトンボとコミュニケーションをとるようなものでありお互いの見方も意味も価値観も常識も前提も思いも気分も言葉も法則も何もかも違うのにまともに通じ合えるわけがないっ。というわけでやはりわたしは虚構の世界に生きようという覚悟をよりいっそう深めさせてくれた作品でありました。
「千客万来」
世界中に謎の場所から来た住人が増え続けるという話ですが、まあこれが面白い。やって来た人は決して乱暴だったり横暴だったりするわけではなく、しかしだからこそ理不尽度不条理感はいや増しにも増して、地球人が怒って帰れといってもニコニコして銃で撃っても無効化されるという始末でそれだけやってもやっぱり機嫌を損ねずむしろ憐れまれるという無敵のおかしさ! ひたすら人が増えるというのはイタロ・カルヴィーノの『見えない都市』にもあったモチーフでありますが、あちらがかなり不気味だったのに対し、こちらは不条理ではありますけれども、やっぱりユーモラスなのであります。
その他にも超個性的短編がぎっしり詰まった短編集! あなたの気に入る短編もきっとあるでしょうさあ読もう今すぐ読みましょう。
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九百人のお祖母さん (ハヤカワ文庫 SF 757) 文庫 – 1988/2/1
R.A. ラファティ
(著),
浅倉 久志
(翻訳)
- 本の長さ539ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1988/2/1
- ISBN-104150107572
- ISBN-13978-4150107574
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1988/2/1)
- 発売日 : 1988/2/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 539ページ
- ISBN-10 : 4150107572
- ISBN-13 : 978-4150107574
- Amazon 売れ筋ランキング: - 388,820位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年10月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最高に想像がつかない結末を迎えます。再読に再読を繰り返してもニヤッっと笑える結末をお約束します。
たいくつな時間をお過ごしの方、ラフな気持ちでお読みください。
たいくつな時間をお過ごしの方、ラフな気持ちでお読みください。
2014年11月8日に日本でレビュー済み
同じテイストを感じるのはわたしだけ? SFというジャンルが好きで、でも描く世界はちょっとはずれてて、とぼけていて、でも実は純粋なSFマインドを持っている... ふたりともわたしの一番好きなSF者です。サンリオSF文庫がもっと長生きしてくれてたら、もう少し多く翻訳されてたはずなんですが... (ちらほら翻訳が増えてきたようで期待してます)
2013年2月21日に日本でレビュー済み
中高生から読めるSFの短編集です。
読みにくさはないものの、個人的にはあまり面白くなかった。古い外国の短編集が大好物な人にはお勧めです。
私は、その手の短編集のオチがあまり好きではないので、評価が低くなっています。
表題作の九百人のお祖母さんは、コンセプトに意表を突かれたものの、落ちが好みではありませんでした。
次の巨馬の国は、コンセプトもオチも面白かった。はぁ〜なるほどね〜と思いました。
病院の待合室で、長時間診察待ちをしているときに、この本しかなければ読みますが、そうでなければ次々とこの短編を読み進めていく意欲がどうしても湧きません。しかし、決して難解であったり、読みづらいお話ではないですので、興味のある方はどうぞ。
読みにくさはないものの、個人的にはあまり面白くなかった。古い外国の短編集が大好物な人にはお勧めです。
私は、その手の短編集のオチがあまり好きではないので、評価が低くなっています。
表題作の九百人のお祖母さんは、コンセプトに意表を突かれたものの、落ちが好みではありませんでした。
次の巨馬の国は、コンセプトもオチも面白かった。はぁ〜なるほどね〜と思いました。
病院の待合室で、長時間診察待ちをしているときに、この本しかなければ読みますが、そうでなければ次々とこの短編を読み進めていく意欲がどうしても湧きません。しかし、決して難解であったり、読みづらいお話ではないですので、興味のある方はどうぞ。
2008年3月28日に日本でレビュー済み
「九百人のお祖母さん」に収録されている短編は、意図的かもしれないが、
後半に行くほど、どんどんタガが外れていく気がした。
収録順については、浅倉久志氏が読後感を損なわないよう配慮されているので、
それは間違いないかなと思う。印象的なのは、やはり表題作。
そして、中でもとりわけナンセンスなのに好感度が高かったのはラストの「千客万来」。
「日の当たるジニー」は奇想小説の最高峰っていう感じ。
関西弁の「ブタっ腹のかあちゃん」、なぜに関西弁!? すごい面白いですわ。
ゼッキョー、ゼッキョー!の「町かどの穴」はシュールでドタバタ!
そしてひとつ気がついた。ラファティの書く物語の、ちょっと常識とのバランスがずれている
この感覚は、ムーンライダーズの詞に近いものがある。
個人的にはそう思った。同意が得られるかどうかは自信がないが、そんな気がした。
うーん、なんかめちゃくちゃ個人的な書評になっちゃったなぁ。まぁいいか。
(追記:2008年夏に復刊されました! よかったです)
後半に行くほど、どんどんタガが外れていく気がした。
収録順については、浅倉久志氏が読後感を損なわないよう配慮されているので、
それは間違いないかなと思う。印象的なのは、やはり表題作。
そして、中でもとりわけナンセンスなのに好感度が高かったのはラストの「千客万来」。
「日の当たるジニー」は奇想小説の最高峰っていう感じ。
関西弁の「ブタっ腹のかあちゃん」、なぜに関西弁!? すごい面白いですわ。
ゼッキョー、ゼッキョー!の「町かどの穴」はシュールでドタバタ!
そしてひとつ気がついた。ラファティの書く物語の、ちょっと常識とのバランスがずれている
この感覚は、ムーンライダーズの詞に近いものがある。
個人的にはそう思った。同意が得られるかどうかは自信がないが、そんな気がした。
うーん、なんかめちゃくちゃ個人的な書評になっちゃったなぁ。まぁいいか。
(追記:2008年夏に復刊されました! よかったです)
2005年2月26日に日本でレビュー済み
短編作家R・A・ラファティの日本オリジナル短編集。
何十冊とSFの短編集を読んだが、その第一位に推すのはこの本である。
ラファティは奇妙で愉快で独創的だ。ぶっとんでいるのに論理的で、しかも心地よいほどに短い。
「町かどの穴」がいちばんの傑作だと思う。
他にも、「七日間の恐怖」「その町の名は?」のようなすっきりしたオチは面白いし、
「時の六本指」「カミロイ人の初等教育」のような奇妙な世界観で突っ走る論理も大好きだ。
ともかく、読んでみることをおすすめする。
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ラファティは奇妙で愉快で独創的だ。ぶっとんでいるのに論理的で、しかも心地よいほどに短い。
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他にも、「七日間の恐怖」「その町の名は?」のようなすっきりしたオチは面白いし、
「時の六本指」「カミロイ人の初等教育」のような奇妙な世界観で突っ走る論理も大好きだ。
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