アーサー・C・クラークの処女長編作品。
発表は1,951年だが、47年には既に完成されていたそうだ。
巻末の『解説』の寄稿者は、谷甲州氏。
いささか不謹慎かも知れないが、
先日他界されたA.C.クラーク氏を偲ぼうと、
長年積みっぱなしにしていた本書を繙いてみた。
本書の『解説』を御一読頂ければ、私ごときの駄文は
蛇足に過ぎないのだが、一つだけ書かせて頂きたい。
現実の『アポロ計画』の意義について、である。
"We choose to go to the moon!"
故J.F.ケネディ大統領のあの有名な演説の一節から
始まった『計画』の意義を、乱暴を承知で総括するならば、
『万難を排し、ソ連に先んじて、アメリカ人を月面に送り込む』
の一言に尽きる。 改めて想う。 '60年代の宇宙開発競争とはつまり、
西側と東側(懐かしい響きだ)が、月面をゴールに見立てて繰り広げた、
壮大なレースだったのだ。
そのレースは1,969年7月20日、アポロ11号の有人月着陸成功で
実質的なゴールを迎え、以降は尻すぼみとなり、今日に到る。
レースは終わったのだから、当然の帰結であろう。
以後、約40年が経過するも、有人月探査飛行の次のステップたる、
恒常的な月基地の設営や地球〜月間の定期航路の開設、
そして有人火星探査飛行は為される事無く、
月は依然として『閉ざされた世界』のまま放置され続けている。
世界初の人工衛星である、ソ連のスプートニク1号の打上げが
1,957年10月4日。 世界初の有人宇宙船ヴォストーク1号の
打上げが1,961年4月12日。 その僅か8年後の1,969年、
人類は月面を踏みしめた。 その功績は認めるが、
果たしてそれで、いや、それだけで良かったのだろうか。
宇宙開発の歴史を俯瞰して見るとき、現実の『アポロ計画』は
プラスだったのか、あるいは『アポロ』以後のステップを
阻害したマイナス因子とは言えないだろうか?
著者御自身の言葉を借りると、
“宇宙旅行のアイデアを普及するための、
宣伝手段としてかかれたフィクション” である本書は、
いわば『物語形式で綴られた科学啓蒙書』であり、
その成り立ち故に小説としては弱いが、本書を肴に
宇宙開発史に想いを馳せるのも悪くは無い。
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宇宙への序曲 (ハヤカワ文庫 SF ク 1-18) 文庫 – 1992/3/1
- 本の長さ275ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1992/3/1
- ISBN-104150109656
- ISBN-13978-4150109653
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1992/3/1)
- 発売日 : 1992/3/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 275ページ
- ISBN-10 : 4150109656
- ISBN-13 : 978-4150109653
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,154,639位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2013年11月26日に日本でレビュー済み
展開は地味、大きな事件なし
1940年台に1960年台にようやく実現された月到達までの物語を書く、このことの凄さはなかなか伝わり難いでしょうね。枝葉末節はともかく、それに至る手段や方法論を現実とは違いながら今でも「読める」形で小説にしていた、クラークの凄いところはここでしょうね。
月到達までの顛末、この小説の内容は本当にそれだけです。事件らしいものはほとんど起こらず、最後は夢のある終わり方で〆られています。広報担当、技術者、科学者、パイロットたち――。それらの裏事情と傍で見ている主人公の述懐、それだけの内容はしかし読者をまったく飽きさせません。お勧めです。
1940年台に1960年台にようやく実現された月到達までの物語を書く、このことの凄さはなかなか伝わり難いでしょうね。枝葉末節はともかく、それに至る手段や方法論を現実とは違いながら今でも「読める」形で小説にしていた、クラークの凄いところはここでしょうね。
月到達までの顛末、この小説の内容は本当にそれだけです。事件らしいものはほとんど起こらず、最後は夢のある終わり方で〆られています。広報担当、技術者、科学者、パイロットたち――。それらの裏事情と傍で見ている主人公の述懐、それだけの内容はしかし読者をまったく飽きさせません。お勧めです。