きょうから寝るまえの読書は、ジョン・ヴァーリイの短篇集『ブルー・シャンペン』だ。これは初読。収録作品6作中に、1作、『バービーはなぜ殺される』に収められた「ブラックホールとロリポップ」が重複して収められている。原著でも重複して収められていたらしい。
1作目は、「プッシャー」これを読んで、この短篇集も過去に読んでいたことがわかった。相対論効果で、メランコリーに浸っている男が主人公だった。また、ぼくがコレクションしている「きみの名前は?」(ジョン・ヴァーリイ『プッシャー』朝倉久志訳、15ページ・11行目)という言葉があった。
2作目は、「ブルー・シャンペン」この作品は、アンナ=ルイーズ・バッハが出てくるさいしょの作品。主人公はバッハといっしょに暮らしていた男。身体は生身だと不具だが機械によってふつうの生活ができる、ムービー世界のスターになっている女性がいて、主人公は惚れる。苦い別れがある。
3作目は、「タンゴ・チャーリーとフォックストロット・ロミオ」バッハもの。致死率100%のウィルスに罹って生き残っていた36歳の少女がいた。10歳くらいで齢を取らない若返りの体質をしていたのだが、墜落直前の人工衛星に載っていて、助けてもらったが、月の研究所で死んでしまった。
4作目は、「選択の自由」妻がとつぜん男性になった。夫婦関係はちょっと不自由になったが、男性になった妻を男は愛していた。男性になった妻はふたたび女性になった。以前の妻ではなく新しい女性として。性転換がたやすくできる技術を持った社会がどうなるのか実験的に思索した物語だった。
5作目は、ついこのあいだ読んだ「ブラックホールとロリポップ」だ。知性を持ち、口をきくブラックホールというアイデアがすばらしかったけれど、それがブラックホールを利用しようとしてた人間のほうを利用したという物語だった。すばらしい。
さいごの6作目は、「PRESS ENTER ■」老人が主人公。老人の隣に住んでいた男が自殺した。他殺の可能性もあった。事件性を見た刑事は捜査した。アジア人の女性が隣の男のコンピューターを調べた。隣に住んでいた男はコンピューターを使って無尽蔵に金を得ていた。主人公に多額の遺産を残していた。
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ブルー・シャンペン (ハヤカワ文庫 SF ウ 9-3) 文庫 – 1994/9/1
- 本の長さ527ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1994/9/1
- ISBN-104150110719
- ISBN-13978-4150110710
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1994/9/1)
- 発売日 : 1994/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 527ページ
- ISBN-10 : 4150110719
- ISBN-13 : 978-4150110710
- Amazon 売れ筋ランキング: - 640,409位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2018年9月28日に日本でレビュー済み
今では新編集版「逆光の夏」でさえリアル書店ではあまり見かけなくなったけれど、今回読んだのは積読していたオリジナル版。
1986年にアメリカで出版されたヴァーリイの第三短編集の翻訳だけれど、SFではなく、かつ日本の読者にはなじみがないということで2篇がカットされた全6編の中短編集。それでも500ページを超えているので原書はどれだけ厚いのか?しかし、なぜか創元の「バービーはなぜ殺される」に収録されている「ブラックホールとロリポップ」が重複している。翻訳は両方とも大野万紀氏なので完全に重複ですが、原書でも重複しているらしい。
1994年の翻訳出版。6編中3編が100ページを越える長めの中篇なので読みごたえがあります。
各篇の発表時期は、「ブラックホールと」が1977年だけど、それ以外の5編は1979年から1985年。アメリカで出版された時点では最新の中短編を集めた作品集ということだったのだろうけれども、どれだけ「ブラックホールと」が気に入っていたのだろうか。それともテーマ的に重要な作品なのかな?
目次をみるとおしゃれで軽い雰囲気のタイトルが並んでいるのですが、内容は結構重たいです。
冒頭の「プッシャー」こそ、短くて、しかも内容も思わずF・ヤングかと突っ込むような幼女話で、それほど重くはないのですが、それでもヤング的に中年の悲哀的な雰囲気が現れてきます。
2篇目の「ブルー・シャンペン」は、身体障害を克服してスーパースターになった美人モデルと元オリンピック選手の恋愛話ですが、愛と人生の痛みのようなものが終盤を彩っています。
3篇目「タンゴ・チャーリーとフォックストロット・ロミオ」は、バイオハザードで隔離されたステーション内で育った幼女チャーリーと、彼女を救助しようとする見習い警察官バッハ巡査長の話。タイトルからは全く想像しなかったハードな物語でした。
4編目の「選択の自由」は、フリードマンの経済理論とはまったく関係がない、ある夫婦間のお話。性転換手術が簡単にできるようになった時、3人の子供を育てながら仕事を続けるストレスでいっぱいいっぱいの主人公クレオが取った行動は?そして、その夫のジュールズはどう対応するのか?現代人でも身に染みて感じざるを得ない身近でかつ根深い問題を、SFならではの方法であぶりだした短編。いつの日にか実現するのだろうか?それとも、まったく違った方法でこの問題を解決するのだろうか?
5編目「ブラックホールとロリポップ」は、先日「バービーはなぜ殺される」で読んだばかりだけれど再読。おかげで解説に書かれている謎が理解できた。MBHが語ったことが事実なのかどうか確認の方法がない。ということは、彼が逃げるために頭と舌を働かせたと考えることもできるわけで・・・。さらに疑ってかかると、すべては主人公の妄想・・・? しかし、クローン技術の安易な普及は倫理観を崩壊させるのか?無法の太陽系辺境空域。
悲しくもおぞましいこのエゴイズム、どこかで読んだような気がすると思ったら「彼方のアストラ」でした。
最後の「PRESS ENNTER ■」は、サイコ・ホラーですね。元ネタはゼラズニイのハングマンの発展形のようだけど、クライマックスはギブスンの「カウント・ゼロ」かな?ネットワークの闇は深い。
全体を通じて、人間を描く部分が増えたように思う。華麗なアイデアを操っていたSF青年が人間を描く作家になったと言えば堕落したように受け取られるかもしれないけれど、文学的には正しいことなのかもしれない。読みごたえを感じるのも確かだけれど、読み終わって楽しめたかというとちょっと複雑。方向性は間違っていなかったと思うのだけれども。
1986年にアメリカで出版されたヴァーリイの第三短編集の翻訳だけれど、SFではなく、かつ日本の読者にはなじみがないということで2篇がカットされた全6編の中短編集。それでも500ページを超えているので原書はどれだけ厚いのか?しかし、なぜか創元の「バービーはなぜ殺される」に収録されている「ブラックホールとロリポップ」が重複している。翻訳は両方とも大野万紀氏なので完全に重複ですが、原書でも重複しているらしい。
1994年の翻訳出版。6編中3編が100ページを越える長めの中篇なので読みごたえがあります。
各篇の発表時期は、「ブラックホールと」が1977年だけど、それ以外の5編は1979年から1985年。アメリカで出版された時点では最新の中短編を集めた作品集ということだったのだろうけれども、どれだけ「ブラックホールと」が気に入っていたのだろうか。それともテーマ的に重要な作品なのかな?
目次をみるとおしゃれで軽い雰囲気のタイトルが並んでいるのですが、内容は結構重たいです。
冒頭の「プッシャー」こそ、短くて、しかも内容も思わずF・ヤングかと突っ込むような幼女話で、それほど重くはないのですが、それでもヤング的に中年の悲哀的な雰囲気が現れてきます。
2篇目の「ブルー・シャンペン」は、身体障害を克服してスーパースターになった美人モデルと元オリンピック選手の恋愛話ですが、愛と人生の痛みのようなものが終盤を彩っています。
3篇目「タンゴ・チャーリーとフォックストロット・ロミオ」は、バイオハザードで隔離されたステーション内で育った幼女チャーリーと、彼女を救助しようとする見習い警察官バッハ巡査長の話。タイトルからは全く想像しなかったハードな物語でした。
4編目の「選択の自由」は、フリードマンの経済理論とはまったく関係がない、ある夫婦間のお話。性転換手術が簡単にできるようになった時、3人の子供を育てながら仕事を続けるストレスでいっぱいいっぱいの主人公クレオが取った行動は?そして、その夫のジュールズはどう対応するのか?現代人でも身に染みて感じざるを得ない身近でかつ根深い問題を、SFならではの方法であぶりだした短編。いつの日にか実現するのだろうか?それとも、まったく違った方法でこの問題を解決するのだろうか?
5編目「ブラックホールとロリポップ」は、先日「バービーはなぜ殺される」で読んだばかりだけれど再読。おかげで解説に書かれている謎が理解できた。MBHが語ったことが事実なのかどうか確認の方法がない。ということは、彼が逃げるために頭と舌を働かせたと考えることもできるわけで・・・。さらに疑ってかかると、すべては主人公の妄想・・・? しかし、クローン技術の安易な普及は倫理観を崩壊させるのか?無法の太陽系辺境空域。
悲しくもおぞましいこのエゴイズム、どこかで読んだような気がすると思ったら「彼方のアストラ」でした。
最後の「PRESS ENNTER ■」は、サイコ・ホラーですね。元ネタはゼラズニイのハングマンの発展形のようだけど、クライマックスはギブスンの「カウント・ゼロ」かな?ネットワークの闇は深い。
全体を通じて、人間を描く部分が増えたように思う。華麗なアイデアを操っていたSF青年が人間を描く作家になったと言えば堕落したように受け取られるかもしれないけれど、文学的には正しいことなのかもしれない。読みごたえを感じるのも確かだけれど、読み終わって楽しめたかというとちょっと複雑。方向性は間違っていなかったと思うのだけれども。
2007年9月12日に日本でレビュー済み
70年代最大のSF作家といわれたジョン・ヴァーリイの三冊目の短編集である。
「プッシャー」 宇宙飛行士がウラシマ効果をのりこえて恋人を探す話。やや地味。
「ブルーシャンペン」 心を追体験できるテープの俳優の話。舞台が宇宙に浮かぶ水球体プールというのもとてもいい。面白い。
「タンゴ・チャーリーとフォクストロット・ロミオ」 宇宙基地が病原菌に襲われる話。面白い。
「選択の自由」 性転換を扱ったヴァーリイの真髄のような短編。エロいし、面白い。
「ブラックホールとロリポップ」 ブラックホール狩りを描いた短編。やや地味。
「PRESS ENTER■」 なぜか全裸で暮らし始める男女が脅威に襲われる。面白い。
以上、六編、ひとつとして外れのない読みやすい短編集である。
「プッシャー」 宇宙飛行士がウラシマ効果をのりこえて恋人を探す話。やや地味。
「ブルーシャンペン」 心を追体験できるテープの俳優の話。舞台が宇宙に浮かぶ水球体プールというのもとてもいい。面白い。
「タンゴ・チャーリーとフォクストロット・ロミオ」 宇宙基地が病原菌に襲われる話。面白い。
「選択の自由」 性転換を扱ったヴァーリイの真髄のような短編。エロいし、面白い。
「ブラックホールとロリポップ」 ブラックホール狩りを描いた短編。やや地味。
「PRESS ENTER■」 なぜか全裸で暮らし始める男女が脅威に襲われる。面白い。
以上、六編、ひとつとして外れのない読みやすい短編集である。
2009年4月9日に日本でレビュー済み
ヒッピー文学の末裔的なジョン・ヴァーリイの作品を、今振り返ってみると、主流社会という檻から漂流してしまった孤独な人間の行き所のなさを書いていたのだと思います。
彼の描く宇宙空間はまさにそういう漂流の空間。性転換しようが、乱交しようが、近親相姦をしようが、すべて一時的なものであり、大前提としての喪失感は埋まらない。さてさていったいどうしたらいいのでしょう。多分、昔の人はこれを神の沈黙と言ったのでしょうね。
彼の描く宇宙空間はまさにそういう漂流の空間。性転換しようが、乱交しようが、近親相姦をしようが、すべて一時的なものであり、大前提としての喪失感は埋まらない。さてさていったいどうしたらいいのでしょう。多分、昔の人はこれを神の沈黙と言ったのでしょうね。
2003年9月6日に日本でレビュー済み
ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などを獲得した短編集。「選択の自由」は、ジェンダーをテーマにした鮮やかな作品。もしも、気軽に安全に肉体を改造できたら、性別さえ毎週のように取り替えられたら、性的倫理観というのは相当な変革を余儀なくされる。思考実験としてはかなり過激である。また「ブルー・シャンペン」では、身体障害がセレブレティーへの道を開いている。価値観を根底からひっくり返す作品群が、しかもしっかりとエンターテイメントとして成立している。
特に「タンゴ・チャーリーとフォックストロット・スミス」は素晴らしい。致死率100%の伝染病と、隔離システムの落とし穴と、宇宙の孤児という三つのアイデアが融合し、悲しい叙事詩に結晶している。そういえばヴァーリィの作品は、いつも孤独がつきまとっている。
特に「タンゴ・チャーリーとフォックストロット・スミス」は素晴らしい。致死率100%の伝染病と、隔離システムの落とし穴と、宇宙の孤児という三つのアイデアが融合し、悲しい叙事詩に結晶している。そういえばヴァーリィの作品は、いつも孤独がつきまとっている。