「ファウンデーション」と「ロボット」という相互に別個の未来シリーズを結合する、アシモフ65歳時の、彼にとっての人生の結語となる作品。
これ以後アシモフは72歳で死去するまでに「序曲」「誕生」という二作を書くが、時代的には2万年後を描くこの作品が、アシモフ本人が書いた作品の中ではもっとも「未来」を舞台にした作品になる。
放射能まみれになり、生存が不可能になった地球は、アシモフの悲観的な一面を示すものだろう。また、末尾の最終ページ、楽観とも悲観ともとれる最後の文章は、アシモフがクラークとは違い、より錯綜した葛藤を抱えていた人間であることを暗示する。
この作品は、SFの歴史の中ではそれほど重大な作品ではないだろう。
これは、老人になった意識で、かつての未来をアシモフがたどり直し、それの結末を自らで決め、ピリオドを打つための作品に思える。もし彼が1992年に死去せず、あと10年生きたとしても(ハインラインは80歳で、クラークは90歳で死去したのだから、いくつかの偶然がなければ、アシモフもあと10年は生きられたのではないかと思う)この最も未来の時代に展開した茫漠とした、また明るいだけではない結末を越えたあとの時代を描くことが出来たかどうか、とこの本を読んでから30年が経過したあとで思うのである。
なお、この作品で、アシモフはある重大な文明史的な仮説を展開している。それは
孤立した文明は外部に対して攻撃的になる
というもので、それが事実なのか、それとも妄想なのかは今後2万年の人類の歴史がどう展開するかをみなければなるまい所である。しかし、江戸時代の日本や、21世紀の今もいわゆる現代文明から隔絶して、南米の密林の中で完全に隔絶して生きている部族(現代文明サイドが所持している体内病原菌が彼らに感染し、下手をすると接触するだけで絶滅させる危機があるためにコンタクトもできない)のようなケースから、それを比較することが出来るのかもしれない。
そういった事をも考えさせる深みを後期のアシモフは持っていたことは、着目されても良いと思う。
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ファウンデーションと地球〈上〉―銀河帝国興亡史〈5〉 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 1997/8/1
- 本の長さ358ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日1997/8/1
- ISBN-104150112010
- ISBN-13978-4150112011
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (1997/8/1)
- 発売日 : 1997/8/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 358ページ
- ISBN-10 : 4150112010
- ISBN-13 : 978-4150112011
- Amazon 売れ筋ランキング: - 116,296位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ファウンデーションシリーズ全て読破できました。全巻揃いましたよ・・・・・・・・・
2008年5月17日に日本でレビュー済み
今は亡き、名SF作家であり科学者でもあったアイザック・アシモフの最高傑作シリーズの正にラストを飾る作品です。
二つのファウンデーション、そして第三の道、その選択の岐路に立たされた主人公(4巻に引き続きトレヴァイズ)は、何故か、その結論の道標が人類発祥の星、地球にあるような気がしていた。そして、彼は旅に出る。
その足跡の旅は、あのオーロラやソラリア等を巡る旅だった...。この5巻は今までの集大成となる内容です。ロボットと帝国が全ての前作のエピソードを盛り込み、大団円を迎えたように、本作もこれまでの作品のパーツが全てあるべきところに収まり、見事な収束を迎えます。前作を読んでいないと、やや冗長なように感じますが、読んでいますと評価が一変します。奥深いシリーズです。
ラストは2万年の時間が読者に迫り、正に感動!の一語。このシリーズの幕を下ろすのは、意外な登場者なのです。
SFファンもそうでない方も必読。歴史的名作、(前作を読破の上で)是非、お読み下さい。
二つのファウンデーション、そして第三の道、その選択の岐路に立たされた主人公(4巻に引き続きトレヴァイズ)は、何故か、その結論の道標が人類発祥の星、地球にあるような気がしていた。そして、彼は旅に出る。
その足跡の旅は、あのオーロラやソラリア等を巡る旅だった...。この5巻は今までの集大成となる内容です。ロボットと帝国が全ての前作のエピソードを盛り込み、大団円を迎えたように、本作もこれまでの作品のパーツが全てあるべきところに収まり、見事な収束を迎えます。前作を読んでいないと、やや冗長なように感じますが、読んでいますと評価が一変します。奥深いシリーズです。
ラストは2万年の時間が読者に迫り、正に感動!の一語。このシリーズの幕を下ろすのは、意外な登場者なのです。
SFファンもそうでない方も必読。歴史的名作、(前作を読破の上で)是非、お読み下さい。
2005年9月11日に日本でレビュー済み
何者かによって巧みに隠されたかのように痕跡がなくなった地球を探し求める壮大な旅。探索の果てに見つけたもの、そして出会った”人”の意外さに驚き、ファウンデーションシリーズより2万年前を舞台にしたロボットシリーズと見事に融合しています。出来る事なら新しい世界が確立するまで見届けたかったのですが、これから先が語られる事がないのが残念でなりません。