邪悪な精神が支配する戦慄のネガティヴ平行宇宙に迷い込みもう一人の自分との戦いを強いられるテラナーの活躍を描く大長編ＳＦスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第301巻。本巻の執筆者は、シリーズの屋台骨を支え続ける両雄フォルツとダールトンです。正反物質をコントロールしようとする実験アンティニューグ計画は完全な失敗に終わり、その余波でローダン一行を乗せた旗艦《マルコ・ポーロ》は悪意に満ちた戦慄のネガティヴ平行宇宙に移送されてしまう。いきなり善玉ローダンが別世界に生きる邪悪なドッペルベンガーの悪玉ローダン２に次元を超えて対峙するという驚くべき超絶技巧の物語が始まります。
『死へのテレポート』ウィリアム・フォルツ著：ローダンは《マルコ・ポーロ》を奪還し異質の地球を脱出して宇宙へと逃れるが、脱出の混乱で両宇宙のラス・ツバイが入れ替わってしまう。本編では外見は全く同じで見分けのつかないラス２が暗殺者として潜入するという巧みな設定と強烈なスリルに誰もが魅了されるでしょう。『ラス・ツバイ救出作戦』クラーク・ダールトン著：ローダンは異質の地球に残された仲間のラス１を救出すべく地球に潜入し、彼が敵手を逃れた事実を掴み手掛りを追って故郷アフリカを捜索する。本編では善玉グッキーと悪玉グッキー２の対決シーンもあり、自分の能力を一番知っているだけに警戒しながらの戦いが面白い読み所です。本来の世界の悪人がこちらの世界では逆に善人だという皮肉な設定もとても愉快に感じられます。
本巻の翻訳者、渡辺広佐氏のあとがきは四月の上旬に歩き友達の工藤さんと町田市をハイキングされた折のお話で、詩人八木重吉の生家を訪れたのを皮切りに風流な詩想を感じながら歩いた道中の様子を紹介されています。理論的には同じ能力を持ち邪悪で情け容赦がない手強い分身との対決というシナリオは非常に魅力的で今後の展開に大いに期待が持てそうです。
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