ＰＡＤ病禍により銀河系にもたらされた災厄に立ち向かい懸命に苦闘するテラナーの活躍を描く大長編ＳＦスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第307巻。本巻の執筆者は、大ベテラン健在マールとフォルツです。アトラン大提督はＰＡＤ病の対抗技術が開発されたとの月面脳ネーサンの報告を受けて自身が開発した新アルコン人の惑星トゥラス＝ネオに真偽を確かめに向かう。本書でもまるで地獄のような状況は更に悪化しエスカレートして行きます。
『ネーサン暴走』クルト・マール著：人類史上最大の科学者ワリンジャーはネーサンの報告に疑問を覚え、ルナを調査し始め驚くべき事態を知る。本編では前半で巨大計算脳ネーサンの危機に対してワリンジャーが活躍し、後半ではアトランが惑星の首席政府顧問の恐るべき陰謀に驚愕しながらも懸命に立ち向かいます。難しい局面に苦渋の決断を下すアトランの第二の故郷・地球への愛が深い感動を呼びます。『マークス惑星応答なし』ウィリアム・フォルツ著：マークスの外交惑星マーコラにいるテラの外交団５０人との連絡が途絶えてしまった。太陽系元帥ティフラーは生物学者ゴシュモ＝カンとミュータント達を連れて調査に赴く。本編では太陽系の影の実力者ティフラーにスポットライトを当て困難な任務に采配を揮い冷静に最善の道を選択する雄姿を描いています。また宇宙の幕間劇では「それ」が「反それ」の攻勢に弱気になり人類の敗北を危惧する心情が描かれ強烈な不安感が醸成されます。
本巻の翻訳者、天沼春樹氏のあとがきはインドネシアの猫の木彫り人形ベンジャミン君をお供にして東京都内の猫寺と呼ばれるふたつのお寺を訪ねて満足された旅の思い出を語られています。本書を筆頭に２００５年度からシリーズは前年より年間刊行点数が２冊増えて毎月刊行の１２冊となりました。これに満足せず将来更に読める点数が増えますようにと期待したいと思います。
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