仇敵セレブ・カーナを倒し、ムーングラムとともに新王国で冒険を続けていたエルリックは、キャラバンから逸れてしまったと言うカーラークの長官の娘ザロジニアを請われるままに送り届けるのだが、例によって旅の道すがら二人は昵懇の間柄に。
カーラークに着いたエルリックは若いザロジニアを娶り、征西の乗り出した<炎の運び手>テラーン・ガシュテクとその50万の軍隊を打ち破ると、その戦いを最後に平穏な生活を送ると心に決めてストームブリンガーを投げ捨てるのだが、魔剣はカーラークの武器庫に自らの意思で戻ってしまう。
魔剣は主人の宿命を予見していたのか平和は長くは続かず、謎の襲撃者によって愛妻を拉致された彼は、再びストームブリンガーを手に取らざるを得ない状況に。
従兄弟である<竜の洞>の長ダイヴァム・スロームとともにザロジニアを拉致した者を探すうち、エルリックはニレインの<十者>の一人であるセピリズからストームブリンガーとその兄弟の剣モーン・プレイドの由来と己の宿命を知らされる。
セピリズは、混沌の勢力を駆逐して世界に新たな時代をもたらすには、より強大な混沌の力を持ってするしかないと言うのだが・・・
一気に世界を手中に収めようとする混沌の神々は、永きに渡って寵臣であったメルニボネ人を見限ってパン・タンの神政官ジャグリーン・ラーンを全面的に援助し、エルリック自身は図らずもこれに対抗する新王国連合軍の盟主の立場に。
エルリックの来たし方を思えば皮肉なことではあるが、彼を受け入れた新王国の人々にも「混沌を制するには混沌をもって」という割り切りがあったのかも知れない。
シャルルマーニュ伝説の豪傑ロランから角笛オリファンを奪うため、伝承の英雄と小説の主人公であるエルリックが一騎打ちに及ぶのが愉しいが、ロランがエルリックと同様に永遠の戦士の一人であるとしたのと同様に、オリファンも北欧神話でラグナロクを告げるギャラルホルンと同一視しているようだ。
クライマックスでその<運命の角笛>を吹き鳴らし、新たな時代の幕開けを告げたエルリックを待ち受ける運命はシニカルながらも神話的な余韻を残す。
-さらば、友よ。われはなんじの千倍も邪悪であった!-
混沌と法の神々の間の争いに翻弄され続けたエルリックは、新たな全き中立の世界の幕を開けたかに見えたが、一点の黒い染みが残された。
後味が悪いようではあるが、禍根が残るからこそ「永遠の戦士」が永遠である所以なのだろう。
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ストームブリンガー (ハヤカワ文庫 SF ム 1-25 永遠の戦士エルリック 4) 文庫 – 2006/9/1
- 本の長さ527ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2006/9/1
- ISBN-104150115796
- ISBN-13978-4150115791
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2006/9/1)
- 発売日 : 2006/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 527ページ
- ISBN-10 : 4150115796
- ISBN-13 : 978-4150115791
- Amazon 売れ筋ランキング: - 591,268位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2016年11月3日に日本でレビュー済み
2006年9月29日に日本でレビュー済み
新装版エルリック第四巻。収録作は……
「魂の盗人」(1962)
「闇の三王」(1962)
「忘れられた夢の隊商」(1962)
『ストームブリンガー』
第一の書「死せる神の帰還」(1963)
第二の書「黒の剣の兄弟(はらから)」(1963)
第三の書「悲しき巨人の楯」(1964)
第四の書「悲運の王の死」(1964)
初出の年代を見ても分るように、シリーズ最初期の作品たちです(シリーズスタートは1961年)。とはいえ全く心配無用! 今回の版は物語の時系列順となっているので、ひとまずの最終巻として怒涛のクライマックスに突入していきます。物語は圧巻の一言。混沌そのものと手を結び、世界を歪めつつ突き進むパン・タンの神政官ジャグリーン・ラーン。エルリック、ムーングラムらの宿命の行き着く先は……!?
多様性や変化といった「可能性」そのものである<混沌>と、規律や正義であり、「停滞」そのものともなる<法>。二つの勢力の戦いの反映としての世界。世界は一言で切り取れるものではなく、ここで示されているように「葛藤」そのものなのでしょう。また、ひかわ玲子氏の解説で示されているように、現在の現実世界は再びこの「葛藤」が激しさを増しているように見えて、だからこそ自身も混沌に属しながら法の力を借りて混沌と戦わねばならない葛藤そのものの存在であるエルリックやストームブリンガーの姿に心魅かれるのかもしれません。まさに現代の叙事詩といえるでしょう。
さて次巻からは、21世紀になってから書かれた、新世紀のエルリック・サーガとなります。40年前に書かれた本巻ですでに示されていた現代の叙事詩が、21世紀になってどのようなビジョンとして提示されなおすのか。楽しみに待ちたいと思います。
「魂の盗人」(1962)
「闇の三王」(1962)
「忘れられた夢の隊商」(1962)
『ストームブリンガー』
第一の書「死せる神の帰還」(1963)
第二の書「黒の剣の兄弟(はらから)」(1963)
第三の書「悲しき巨人の楯」(1964)
第四の書「悲運の王の死」(1964)
初出の年代を見ても分るように、シリーズ最初期の作品たちです(シリーズスタートは1961年)。とはいえ全く心配無用! 今回の版は物語の時系列順となっているので、ひとまずの最終巻として怒涛のクライマックスに突入していきます。物語は圧巻の一言。混沌そのものと手を結び、世界を歪めつつ突き進むパン・タンの神政官ジャグリーン・ラーン。エルリック、ムーングラムらの宿命の行き着く先は……!?
多様性や変化といった「可能性」そのものである<混沌>と、規律や正義であり、「停滞」そのものともなる<法>。二つの勢力の戦いの反映としての世界。世界は一言で切り取れるものではなく、ここで示されているように「葛藤」そのものなのでしょう。また、ひかわ玲子氏の解説で示されているように、現在の現実世界は再びこの「葛藤」が激しさを増しているように見えて、だからこそ自身も混沌に属しながら法の力を借りて混沌と戦わねばならない葛藤そのものの存在であるエルリックやストームブリンガーの姿に心魅かれるのかもしれません。まさに現代の叙事詩といえるでしょう。
さて次巻からは、21世紀になってから書かれた、新世紀のエルリック・サーガとなります。40年前に書かれた本巻ですでに示されていた現代の叙事詩が、21世紀になってどのようなビジョンとして提示されなおすのか。楽しみに待ちたいと思います。
2006年10月26日に日本でレビュー済み
例えば、日本では永井豪の「デビルマン」だとか、小池一夫&小島剛夕の「子連れ狼」だとか、「ザンボット3」だとかがその衝撃的な幕切れでひとつの世代に決定的な影響を与え、今に至るまで語り続けられてきた訳だけど。
イギリスの'60年代SF/FT界では、これがそれに当たります。これほど見事なカタストロフの幕切れは他になかなかないでしょう。
絶対のお薦めですが、ともかく1巻から全部読んだ上でなければこのラストにも意味がなく、また、このラストを読み飛ばしては今まで読んできた既刊にも意味がないとは言っておきます(その意味で、今回の新編集は、後から付け足されたエピソードを時系列順に組み込んでしまっているため、少し違和感がある出来ではあるのですが)。
イギリスの'60年代SF/FT界では、これがそれに当たります。これほど見事なカタストロフの幕切れは他になかなかないでしょう。
絶対のお薦めですが、ともかく1巻から全部読んだ上でなければこのラストにも意味がなく、また、このラストを読み飛ばしては今まで読んできた既刊にも意味がないとは言っておきます(その意味で、今回の新編集は、後から付け足されたエピソードを時系列順に組み込んでしまっているため、少し違和感がある出来ではあるのですが)。
2006年9月26日に日本でレビュー済み
多くの苦悩・悲劇・冒険に満ちたエルリックの旅もここで決着がつくことになる。いわゆる旧訳版の最終巻にあたるのがこの巻で、これまで張られた多くの伏線が一つに収束し、怒涛のクライマックスへと向かう様は圧巻だ。愛すべき人との出会い、旧友との再会、相変らずのムーングラム、ついにはじまる神々との争い、広がる戦火、そして運命を担うエルリックの行き着く先は・・・。ムアコックの作り出した神話の、一つの集大成を見ることができる。
さて、ここでエルリックの旅は終わるのであるが、全7巻であることをお忘れのはずはあるまい。改めて「真珠の砦」を読み返すべきだろうか?
さて、ここでエルリックの旅は終わるのであるが、全7巻であることをお忘れのはずはあるまい。改めて「真珠の砦」を読み返すべきだろうか?