クラークの作品で最も優れている作品で無いことはわかっている。
でも、夏、炎天下を歩いた後、クーラーの効いた喫茶店とかに入り、一服した時に、
何故か突然読みたくなる作品が、僕にとってはこれだ。
欲求は予兆もなく、突然訪れるので、kindleで購入しておいて持ち運んでいると
いつでも読めて、ありがたい。
作品は、過去の出来事から精神的に傷を追った新人訓練生のウォルター・フランクリンが、
鯨監視員として、訓練を受け、海での生活に馴染むに連れて、心の傷を癒され、
一人の人間として成長していくさまを、20年ほどにわたって描いているだけのものである。
ただ、その海のなかを潜水艇で潜ったりするさまが、尋常じゃなく美しい描写で、
しかも、センス・オブ・ワンダーに満ちているのだ。
この作品の、第一部 練習生時代の描写に影響を受けたであろう作品として、
宮崎駿の「未来少年コナン」と「崖の上のポニョ」があるし、
第三部 官僚時代の部分に影響を受けた映画としては、ジェームズ・キャメロンの「アビス」
があり、「アビス」の元ネタは、この作品とクラークのもう一つの海洋SF作品「輝くもの」であろう。
またラストシーンは新海誠の「秒速5センチメートル」に影響を与えているのでは無いだろうか?
多分調べればもっとあるのじゃないかなと、思うのだが、多くの作家に影響を与えており、とにかく一度読むと、
癖になる、不思議な読後感のある作品だ。
作品の中には、今人気のダイオウイカも出てくるし、海洋SFって何よ と思う人は
ぜひ読んでください。
海の世界が、最後にはちゃんと宇宙の海につながるし、素敵な読後感を味わえる作品だと思います。
反捕鯨小説とかイデオロギーでレッテルを貼るのは止めて、作品の世界に没入して、
深海を旅してみましょう。
暑い夏、清々しい気持ちを味わいたい、あなたにお薦めです。
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海底牧場 (ハヤカワ文庫 SF ク 1-42) 文庫 – 2006/9/1
- 本の長さ366ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2006/9/1
- ISBN-10415011580X
- ISBN-13978-4150115807
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登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2006/9/1)
- 発売日 : 2006/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 366ページ
- ISBN-10 : 415011580X
- ISBN-13 : 978-4150115807
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,082,519位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2013年9月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年12月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
深海での物理的・心理的な描写に圧倒的なリアリティがある。フランクリンが訓練生から牧鯨局の局長になるまでの出世物語とも言えなくはないが、背景には宇宙での事故により火星にいる妻や子供と二度と会えなったこともあり、フランクリンは地球(特に海)での仕事に邁進する。ラストの深海でのアクションはハラハラドキドキの連続で、読んでいてこちらの呼吸が止まりそうだった。物語はあっさりしている感じもあるが、伝わるリアリティが読者を物語に引きずり込む。
2008年4月13日に日本でレビュー済み
先日お亡くなりになった、アーサー・C・クラーク氏の名作が復刊というか増刷されて出回っていたので早速購入して読んでみました。この本、イギリス人の著者によるかれこれ数十年前の作品なんですが、現状の日本と国際社会の海洋資源と鯨の利用についてのIWC等の現状を考えるとき、非常に皮肉な一冊となっており感慨深いものがあります。
というのも、主人公のフランクリンが転勤で勤めることになった世界政府の食料庁では海洋資源の徹底管理を行い、鯨の養殖と捕鯨で世界の全食料の10数パーセントを賄っているからです。その未来社会、国際紛争もなくなり世界政府が統治して火星にも入植が始まっているような未来世界では、地上の農耕だけでは全人類の食を賄うことができず、海に大きな食料資源を求めるようになり、海での農場ともいえるプランクトンや小さなエビなどを養殖する部門と、鯨をまるで牛や羊のように放牧して育て養殖する部門とに別れており、フランクリンはそちらに所属することになります。
この物語はその彼と鯨との関わりを、彼が鯨の監視員として研修をうける研修期、白鯨に出てくるような巨大なダイオウイカ(実際にこの種のイカは数十メートルになります)を捉える冒険期、そして最期に鯨を捕獲しなくてもある方法で食料自給が出来るようになるのではという誠次決断を迫られる最終期と大きく三つに分けて描かれています。そういう構造は、一種のビルディング小説として読めますが、根っこのところでは海洋冒険ものですので、理屈で考えるのでなく、鯨の監視員としての主人公と一緒に彼の活躍や成長を楽しむのがよいでしょう。
最期の最期のほうで、仏教世界の導師から主人公は捕鯨をやめて欲しいと思う理由として一つの意見を提示しますが、それが現実世界で今迄きいてきた捕鯨反対の色々な意見の中でも一番印象的であるというのは皮肉であるし愉快であるとも言えます。そのあたりについては、是非読んでみて下さい。
というのも、主人公のフランクリンが転勤で勤めることになった世界政府の食料庁では海洋資源の徹底管理を行い、鯨の養殖と捕鯨で世界の全食料の10数パーセントを賄っているからです。その未来社会、国際紛争もなくなり世界政府が統治して火星にも入植が始まっているような未来世界では、地上の農耕だけでは全人類の食を賄うことができず、海に大きな食料資源を求めるようになり、海での農場ともいえるプランクトンや小さなエビなどを養殖する部門と、鯨をまるで牛や羊のように放牧して育て養殖する部門とに別れており、フランクリンはそちらに所属することになります。
この物語はその彼と鯨との関わりを、彼が鯨の監視員として研修をうける研修期、白鯨に出てくるような巨大なダイオウイカ(実際にこの種のイカは数十メートルになります)を捉える冒険期、そして最期に鯨を捕獲しなくてもある方法で食料自給が出来るようになるのではという誠次決断を迫られる最終期と大きく三つに分けて描かれています。そういう構造は、一種のビルディング小説として読めますが、根っこのところでは海洋冒険ものですので、理屈で考えるのでなく、鯨の監視員としての主人公と一緒に彼の活躍や成長を楽しむのがよいでしょう。
最期の最期のほうで、仏教世界の導師から主人公は捕鯨をやめて欲しいと思う理由として一つの意見を提示しますが、それが現実世界で今迄きいてきた捕鯨反対の色々な意見の中でも一番印象的であるというのは皮肉であるし愉快であるとも言えます。そのあたりについては、是非読んでみて下さい。
2015年8月9日に日本でレビュー済み
主人公は元宇宙飛行士ですが、宇宙ものではなく海洋ものです。
海での様々な出来事の描写などは、あまり SF っぽくなく、クラークの他の作品とは趣が異なります。
舞台は、昨今の欧米の世論からはありえない状況だと思いますが、資源用の鯨牧場が大々的に運営されている近未来です。
ダイビング好きのクラークの趣味が良く出た作品だと思います。
海での様々な出来事の描写などは、あまり SF っぽくなく、クラークの他の作品とは趣が異なります。
舞台は、昨今の欧米の世論からはありえない状況だと思いますが、資源用の鯨牧場が大々的に運営されている近未来です。
ダイビング好きのクラークの趣味が良く出た作品だと思います。
2004年3月13日に日本でレビュー済み
この作品に五つ星つけたら「えっ?」という人もいるだろう。クラークと言えば・・・と、指折り数えていく中で、多くのSFファンがこの作品を何番目に数え挙げるというのか。ひょっとして、忘れられているかも知れない。それほど、クラークの作品地位としては、地味なスタンスだ。
しかしちょっと待ってほしい。この地味なテーマ、渋すぎるアイデアで、他の何人の作家がここまでドラマチックな物語を構成し得るだろう。しかもこれは、SFというジャンル以外では全く完成することのない、繊細なドラマだ。生半可な成長テーマなど消し飛ぶ、思いつきの未来社会テーマなど比較にならぬ、リアルなサイエンス・フィクションの傑作。
ちなみにジュブナイル版もありますが、第一部で終わっちゃってます。友情テーマにしたかったんでしょうか。
しかしちょっと待ってほしい。この地味なテーマ、渋すぎるアイデアで、他の何人の作家がここまでドラマチックな物語を構成し得るだろう。しかもこれは、SFというジャンル以外では全く完成することのない、繊細なドラマだ。生半可な成長テーマなど消し飛ぶ、思いつきの未来社会テーマなど比較にならぬ、リアルなサイエンス・フィクションの傑作。
ちなみにジュブナイル版もありますが、第一部で終わっちゃってます。友情テーマにしたかったんでしょうか。
2018年6月27日に日本でレビュー済み
クジラを放牧する海底牧場を舞台としたSF。魚資源の枯渇が心配される中、海の中での放牧というのは、現実の世界でも考えるべき内容のように思える。
小説としては、クラークらしく淡々と進む。SFとしては、物足りない部分もあるが、海底牧場という設定だけで読ませてくれる。
小説としては、クラークらしく淡々と進む。SFとしては、物足りない部分もあるが、海底牧場という設定だけで読ませてくれる。
2017年6月22日に日本でレビュー済み
SFという分野が,リベラルかぶれの演説の場になっていた頃の作品群の一つ.
典型的なSFの特徴の一つ,
「アメリカが舞台,登場人物が喋るのは英語」
を,本書も装備.
▼
本書の初めから,舞台背景を説明するためでしかない描写が延々と続き,殆ど事件らしい事件が起こらないのは,ある意味,これまでの娯楽小説のセオリーを破る,斬新な手法といえるかもしれない.
せいぜい魚雷(適訳するなら水中バイクだろうな)に乗ってやんちゃしたり,即席カップ麺みたいなラブ・ロマンスがある程度.
もちろん,斬新=面白い,などではない.
▼
p.83まで来て,ようやくハプニング.
しかしそれも心理的問題という程度.
斜め読みしている(だって精読するには退屈だし)なら,燃料でも爆発したのかと錯覚させるような描写なので,よく読んでみて拍子抜け.
しかもその後,失踪とは.
「ナイーブなハートが傷つく女子高生か,お前は!」
と,これが神坂一の小説なら,そんなツッコミ必至.
さらに,「偶然」助かる主人公.
偶然に頼る展開というのは,ストーリー・テリングとしては些かどうなのかと.
▼
第2部は,第1部に比べれば,ほんの少しは劇的.
とはいえ,「牧場から牛が逃げた」の海底版.
未知の生物の探知(p.143)で,ようやく少しは物語らしくなってくる,かに思えるが,それはほんのつかの間.
正体は簡単に推測されるわ,その正体はジューヌ・ベルヌの時代の小説のものと大差ないわ,主人公は未知の生物そっちのけで,ロマンスのことを考えているわで,ワクワク感のかけらも無し.
▼
第3部も似たり寄ったり.
「工場」「牧鯨犬」のアイディアはちょっとだけSF的.
「原理主義者の登場」は,ありがちパターン.
それにしても,本作品に登場する宗教が,いかにも欧米人の見るそれのステレオタイプな感じで,軽い吐き気さえ.
「真に民主的な政府」(p.259)だの,戦争はたった1行「姿を消した」(p.257)で済まされるなど,もうSFというより別の何か.
オチは……オチてないな.
▼
かつては当方もSFを人並みに読んだものだが,クラークはこんな作家だったかな……?
【関心率0%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】
典型的なSFの特徴の一つ,
「アメリカが舞台,登場人物が喋るのは英語」
を,本書も装備.
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本書の初めから,舞台背景を説明するためでしかない描写が延々と続き,殆ど事件らしい事件が起こらないのは,ある意味,これまでの娯楽小説のセオリーを破る,斬新な手法といえるかもしれない.
せいぜい魚雷(適訳するなら水中バイクだろうな)に乗ってやんちゃしたり,即席カップ麺みたいなラブ・ロマンスがある程度.
もちろん,斬新=面白い,などではない.
▼
p.83まで来て,ようやくハプニング.
しかしそれも心理的問題という程度.
斜め読みしている(だって精読するには退屈だし)なら,燃料でも爆発したのかと錯覚させるような描写なので,よく読んでみて拍子抜け.
しかもその後,失踪とは.
「ナイーブなハートが傷つく女子高生か,お前は!」
と,これが神坂一の小説なら,そんなツッコミ必至.
さらに,「偶然」助かる主人公.
偶然に頼る展開というのは,ストーリー・テリングとしては些かどうなのかと.
▼
第2部は,第1部に比べれば,ほんの少しは劇的.
とはいえ,「牧場から牛が逃げた」の海底版.
未知の生物の探知(p.143)で,ようやく少しは物語らしくなってくる,かに思えるが,それはほんのつかの間.
正体は簡単に推測されるわ,その正体はジューヌ・ベルヌの時代の小説のものと大差ないわ,主人公は未知の生物そっちのけで,ロマンスのことを考えているわで,ワクワク感のかけらも無し.
▼
第3部も似たり寄ったり.
「工場」「牧鯨犬」のアイディアはちょっとだけSF的.
「原理主義者の登場」は,ありがちパターン.
それにしても,本作品に登場する宗教が,いかにも欧米人の見るそれのステレオタイプな感じで,軽い吐き気さえ.
「真に民主的な政府」(p.259)だの,戦争はたった1行「姿を消した」(p.257)で済まされるなど,もうSFというより別の何か.
オチは……オチてないな.
▼
かつては当方もSFを人並みに読んだものだが,クラークはこんな作家だったかな……?
【関心率0%:全ページ中,手元に残したいページがどれだけあるかの割合.当方の価値観基準】
2013年9月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
書籍そのものの発行年数が古いので、『状態はまずまず』とあっても、それなりだろうと覚悟はしていた。が、本を開いてみると前の持ち主が引いたと思われる棒線が多数あり。。。しばし絶句した。あるならあると事前の説明書きが欲しい。購入の際、他との検討が空しくなってしまう。