1968年の映画、「2001年宇宙の旅」が最高のSF映画なんて評価を受けている(選者によるが、個人的に異論はない)が、
1956年発表であるこの小説がこんなに凄いものだとは知らなかった。
自分の浅学を告白することになって恥ずかしいが、
本当にそうなのだから仕方ない。本なんか全然読んでこなかったのだから。
何と言うか、「漫画かよ!」「ラノベかよ!」みたいな。(誉めてます。)
石ノ森章太郎の漫画「仮面ライダー」で、改造手術を受けた本郷猛の顔に手術跡が浮かび上がる描写や、「サイボーグ009」の加速装置のネタ元はこれだったんじゃなかろうか?(と思ったら、先人のレビューにありましたね。)
「燃える男」が現れては消えるシーンでは漫画「AKIRA」で、アキラの起こした爆発の異空間に飲まれた金田が幻のように現れるシーンが思い出されてしまう。
サイバーパンク小説流行の折に小耳にはさんで、うっとりとなった「神経鋼化(ハードワイヤード)」などもさらりとやっている。
(人工素材の筋肉や神経、サイバネティクスのアイデアはもっと古かろうから、「ネーミング」こそが重要なのだとは思うけれど。)
近年のキャラクターデザインで常態化している常軌を逸したファッションや歪んだ人体改造のイメージ、ついでにアルビノの美少女なんてのも臆面もなく出てくる。
そんな描写を、後書きで作家が「パターンとリズムとテンポに憑かれており」と語るその文章で読んでいると、「テリー・ギリアム」監督映画の、ゴシック調にデザインされた独特なテンポの映像が脳裏に浮かんでしまう。
…つまり、それ自体が最先端とされるようなサブカルチャーメディアの要素で、
個人的に「新しい!」と思って心酔していたものは、とうに、すっかりこれに出ていたのだ。
この小説が小説の出来としてどうなのか、とかは正直私にはわかりません。
ただただ、読んでいて面白かったとしか。
ただ、サブカルメディア好きの方で、もし私のようにアニメとか漫画とかばかり見ているようなら、私のような爺になってから読んで恥じ入らないで済むように、「読んでおいた方が良い!」と強くお勧めしたいです。
蛇足ながらつけ加えると、近年の作品で、「人間に自由意志はあるのか」「時間や空間は我々が認識するような形で存在しているのか」などのテーマの作品を幾つか見ました。読んでいるときには最新科学論っぽいネタだなと、思っていたのですが、ぶっちゃけそれもこの作品に書いてある。
と言うか、それはこの作品に限ったことではなくて、ほかの古典作品(なんならギリシア悲劇にでも)にも見られることで、
結局、早いとか遅いとか、先だとか後だとかではなくて、いつの時代も同じことを繰り返しているのだなあ、と思った次第です。
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虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2) 文庫 – 2008/2/22
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“ジョウント”と呼ばれるテレポーテイションにより、世界は大きく変貌した。一瞬のうちに、人びとが自由にどこへでも行けるようになったとき、それは富と窃盗、収奪と劫略、怖るべき惑星間戦争をもたらしたのだ! この物情騒然たる25世紀を背景として、顔に異様な虎の刺青をされた野生の男ガリヴァー・フォイルの、無限の時空をまたにかけた絢爛たる〈ヴォーガ〉復讐の物語が、ここに始まる……鬼才が放つ不朽の名作!
- 本の長さ446ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2008/2/22
- ISBN-104150116342
- ISBN-13978-4150116347
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著者について
1913年ニューヨーク市マンハッタン生まれ。1939年、短篇“The Broken Axiom”がスリリング・ワンダー誌のSFコンテスト第一席入選作となり、作家デビュー。その後3年間、SFの短篇を発表するが、やがて『スーパーマン』をはじめとするコミックスの原作者、ラジオ、テレビのドラマの脚本家として活躍。SF界に復帰したのは、ギャラクシイ誌に『破壊された男』を連載した1952年のこと。この作品はスタージョンの『人間以上』、クラークの『幼年期の終り』をおさえて第1回ヒューゴー賞を受賞した。1956年に発表された本書『虎よ、虎よ!』は、SFの長篇第2作にあたる。その後旅行雑誌ホリデイのライターに転身するが、十数年の空白をおいてSF界にふたたび復帰。『コンピュータ・コネクション』『ゴーレム100』などを発表するが、健康を害し、長い闘病生活ののち1987年、心臓病でこの世を去った。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2008/2/22)
- 発売日 : 2008/2/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 446ページ
- ISBN-10 : 4150116342
- ISBN-13 : 978-4150116347
- Amazon 売れ筋ランキング: - 22,566位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2019年1月2日に日本でレビュー済み
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虎よ、虎よ!
このタイトルは上手い。単に顔の刺青が虎であると言う事とは別に、本作の主人公ガリー・フォイルの本質は正に虎、獣のような男だ。
他者に対する優しさ、愛情など道徳的な感情は一切持たず、触れるもの全てを傷つける男。目的のためには平気で他者を踏みにじり、殴り、殺す。ただの犯罪者だが、快楽の為にそうしているわけではない。彼の底にあるのは、野良犬のような攻撃性。自らを見捨てたものに対する、純粋な殺意。
徹底的なアウトロー、冷酷なアウトサイダー。この主人公にほれ込んで一気に読んでしまったが、この主人公をダークヒーローと考え、感情移入してしまったのは本作を読む上で致命的な過ちであったようである。
ここからちょっとネタバレするから注意。
要するに最後、改心してしまうのだ。主人公は愚鈍な凡人だったが、怒りにより虎となり、終盤で信仰者となってしまう。
まあ、人によっては感動する話かもしれない。それは重々わかるし、面白かったと言えば面白かったが、一方で虎である主人公に感情移入していた私としてはがっかりしてしまった。
無論、主人公が愛を知らない虎のままでは結末は主人公の破滅しかなかったと思うのだが、正にそれを望んでいたものとしてはがっかりだった。とは言え、それは全体の面白さを損なうものではなく、寧ろある種のカタルシスを与えてくれたので、それにより評価を減らす事はしていない。ただ前半を読んで主人公を気に入ってしまう人は注意が必要だ。
それと、女性キャラ達が主人公にあまりに都合よく動き過ぎである。
自分をレイプしたり見殺しにしたりする相手をあっさり許したり、何だかんだ尽くしたり、あろうことか愛したりもする。この辺はなろうと変わらんのでは。雄々しい男が主人公の話において主人公を好きになる都合の好いヒロインはいない方が良いと思う。
このタイトルは上手い。単に顔の刺青が虎であると言う事とは別に、本作の主人公ガリー・フォイルの本質は正に虎、獣のような男だ。
他者に対する優しさ、愛情など道徳的な感情は一切持たず、触れるもの全てを傷つける男。目的のためには平気で他者を踏みにじり、殴り、殺す。ただの犯罪者だが、快楽の為にそうしているわけではない。彼の底にあるのは、野良犬のような攻撃性。自らを見捨てたものに対する、純粋な殺意。
徹底的なアウトロー、冷酷なアウトサイダー。この主人公にほれ込んで一気に読んでしまったが、この主人公をダークヒーローと考え、感情移入してしまったのは本作を読む上で致命的な過ちであったようである。
ここからちょっとネタバレするから注意。
要するに最後、改心してしまうのだ。主人公は愚鈍な凡人だったが、怒りにより虎となり、終盤で信仰者となってしまう。
まあ、人によっては感動する話かもしれない。それは重々わかるし、面白かったと言えば面白かったが、一方で虎である主人公に感情移入していた私としてはがっかりしてしまった。
無論、主人公が愛を知らない虎のままでは結末は主人公の破滅しかなかったと思うのだが、正にそれを望んでいたものとしてはがっかりだった。とは言え、それは全体の面白さを損なうものではなく、寧ろある種のカタルシスを与えてくれたので、それにより評価を減らす事はしていない。ただ前半を読んで主人公を気に入ってしまう人は注意が必要だ。
それと、女性キャラ達が主人公にあまりに都合よく動き過ぎである。
自分をレイプしたり見殺しにしたりする相手をあっさり許したり、何だかんだ尽くしたり、あろうことか愛したりもする。この辺はなろうと変わらんのでは。雄々しい男が主人公の話において主人公を好きになる都合の好いヒロインはいない方が良いと思う。
2021年9月30日に日本でレビュー済み
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虎よ!虎よ!ぬばたまの
夜の森に燦爛と燃え
そもいかなる不死の手 はたは眼の
作りしや、汝がゆゆしき均整を
学生時代覚えたものです。
懐かしく購入して読みました。
テンポがよく読みやすい。
テレポートの仕組みなどが科学的に説明されており、今でも納得です。
SFの金字塔ともいえる作品です。
平凡な宇宙船ノリの主人公の中に凶暴な本能『虎』が目覚める。
復讐を!
その後紆余曲折はあるものの。SF作品の金字塔です。
是非映画化してほしいものです。
面白い!
夜の森に燦爛と燃え
そもいかなる不死の手 はたは眼の
作りしや、汝がゆゆしき均整を
学生時代覚えたものです。
懐かしく購入して読みました。
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テレポートの仕組みなどが科学的に説明されており、今でも納得です。
SFの金字塔ともいえる作品です。
平凡な宇宙船ノリの主人公の中に凶暴な本能『虎』が目覚める。
復讐を!
その後紆余曲折はあるものの。SF作品の金字塔です。
是非映画化してほしいものです。
面白い!
2019年11月27日に日本でレビュー済み
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SF的なアイデアは文句なしですし、展開のテンポも良いのですがせっかく構築した未来世界の書き込みが不十分なので読者に伝わりにくくもったいないです。
舞台である25世紀の世界では交通手段が革新されています。「ジョウント」と呼ばれる精神感応移動(テレポーテイション)で誰もが瞬間移動出来るようになっています。そのおかげで犯罪の多発しています。さらに宇宙圏に進出している人類は内部惑星連合(金星、地球、火星の3つと月)と外部衛星同盟(木星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、土星のリア、タイタン、海王星のトリトンの7つ)で対立し、終わりの見えない戦争が続いています。この魅力的な設定だけでも十分楽しいSF小説が書けるはずなのですがベスターは一人の特殊能力人「ガリヴァー・フォイル」を復讐の鬼として登場させ、さらには世界を一瞬で破滅できる最終兵器「パイア」の争奪戦へと物語を加速させます。
主人公・ガリヴァー・フォイルは、貧民街育ちで、この世界では下流な階層の粗野な人物、最初は爆破されて遭難した宇宙輸送船「ノーマッド」を操縦する最後の生き残りとして登場します。彼は半年間一人で宇宙を漂流したあと、ついに「ヴォーガ」という同じ会社の宇宙船が通りかかったので狂喜します。ところが「ヴォーガ」は「ノーマッド」を認識しながら何故か無視し見捨てます。その深い絶望とヴォーガへの復讐心が、凡庸な三等航海士に過ぎなかったフォイルを、強固な意志を持つ男へと変え、この後世界を揺るがす厄介者とさせるのです。
ここまでが導入部ですが、「ヴォーガ」を恨むのも筋違いで、そもそも「ノーマッド」が遭難するに至る原因である、攻撃してきた敵の戦艦を恨むのが本筋じゃないかと思うのですが・・・・こんな風にストーリー中にちょいちょい不自然で無理やりな展開があるのですが、これには目を瞑って話を続けましょう。
このあとサーガッソ小惑星群に住む旧科学人により救助されるフォイル(なんだ結局助かるなじゃないか)ですが、旧科学人たちの奇怪な風習により、顔に虎のような模様を刺青されます。(これが結局題名「虎よ虎よ」の謂れになるのですが、この風貌と彼の活躍、ストーリー展開にはなんら影響を与えない不思議で不要なエピソードです)。
彼らの元を脱出したフォイルは、ヴォーガとそれを所有するクリスタイン財団への復讐のために動き始めるのですが、実はフォイルには彼自身もまだ気付いていない特殊な能力があって世界中から追われる存在となっていきます。フォイルの真の敵は誰でその復讐は果たされるのか?フォイルの謎の能力と最終兵器「パイア」の発動はどうなるのか・・・。といった興味がてんこ盛りのSFサスペンスとなっております。
さてラストでは彼の隠れた能力が卍解(ばんかい)しますがその表現に添付写真のような「タイポグラフィ」が使われます。筒井康隆先生が実験的に使った手法(七瀬シリーズ)のオリジナルかもしれません。文章では
遠方でカチャカチャという足音が縦になった北極光の柔らかいパターンになって眼に入ってきた。
というような表現になっています。フォイルが「共感覚」という特殊な知覚現象を体験している様子を描写しているのです。
小説中に出てくるジョウントや加速装置(サイボーグ009、島村ジョーの必殺技)などのアイディアは本当に素晴らしいだけに、この25世紀のベスター世界を詳しく著す長編にしたほうが面白いと思えました。アイディア200点、テンポ100点、翻訳100点ですが、プロット50点、文章力50点で残念です。アイデアだけは飛びぬけて素晴らしいのでもっと尺の長い小説として読んでみたいと残念です。
舞台である25世紀の世界では交通手段が革新されています。「ジョウント」と呼ばれる精神感応移動(テレポーテイション)で誰もが瞬間移動出来るようになっています。そのおかげで犯罪の多発しています。さらに宇宙圏に進出している人類は内部惑星連合(金星、地球、火星の3つと月)と外部衛星同盟(木星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、土星のリア、タイタン、海王星のトリトンの7つ)で対立し、終わりの見えない戦争が続いています。この魅力的な設定だけでも十分楽しいSF小説が書けるはずなのですがベスターは一人の特殊能力人「ガリヴァー・フォイル」を復讐の鬼として登場させ、さらには世界を一瞬で破滅できる最終兵器「パイア」の争奪戦へと物語を加速させます。
主人公・ガリヴァー・フォイルは、貧民街育ちで、この世界では下流な階層の粗野な人物、最初は爆破されて遭難した宇宙輸送船「ノーマッド」を操縦する最後の生き残りとして登場します。彼は半年間一人で宇宙を漂流したあと、ついに「ヴォーガ」という同じ会社の宇宙船が通りかかったので狂喜します。ところが「ヴォーガ」は「ノーマッド」を認識しながら何故か無視し見捨てます。その深い絶望とヴォーガへの復讐心が、凡庸な三等航海士に過ぎなかったフォイルを、強固な意志を持つ男へと変え、この後世界を揺るがす厄介者とさせるのです。
ここまでが導入部ですが、「ヴォーガ」を恨むのも筋違いで、そもそも「ノーマッド」が遭難するに至る原因である、攻撃してきた敵の戦艦を恨むのが本筋じゃないかと思うのですが・・・・こんな風にストーリー中にちょいちょい不自然で無理やりな展開があるのですが、これには目を瞑って話を続けましょう。
このあとサーガッソ小惑星群に住む旧科学人により救助されるフォイル(なんだ結局助かるなじゃないか)ですが、旧科学人たちの奇怪な風習により、顔に虎のような模様を刺青されます。(これが結局題名「虎よ虎よ」の謂れになるのですが、この風貌と彼の活躍、ストーリー展開にはなんら影響を与えない不思議で不要なエピソードです)。
彼らの元を脱出したフォイルは、ヴォーガとそれを所有するクリスタイン財団への復讐のために動き始めるのですが、実はフォイルには彼自身もまだ気付いていない特殊な能力があって世界中から追われる存在となっていきます。フォイルの真の敵は誰でその復讐は果たされるのか?フォイルの謎の能力と最終兵器「パイア」の発動はどうなるのか・・・。といった興味がてんこ盛りのSFサスペンスとなっております。
さてラストでは彼の隠れた能力が卍解(ばんかい)しますがその表現に添付写真のような「タイポグラフィ」が使われます。筒井康隆先生が実験的に使った手法(七瀬シリーズ)のオリジナルかもしれません。文章では
遠方でカチャカチャという足音が縦になった北極光の柔らかいパターンになって眼に入ってきた。
というような表現になっています。フォイルが「共感覚」という特殊な知覚現象を体験している様子を描写しているのです。
小説中に出てくるジョウントや加速装置(サイボーグ009、島村ジョーの必殺技)などのアイディアは本当に素晴らしいだけに、この25世紀のベスター世界を詳しく著す長編にしたほうが面白いと思えました。アイディア200点、テンポ100点、翻訳100点ですが、プロット50点、文章力50点で残念です。アイデアだけは飛びぬけて素晴らしいのでもっと尺の長い小説として読んでみたいと残念です。
2019年5月30日に日本でレビュー済み
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日本が敗戦を迎えて間もない1950年に発刊された本書は最近ネット上で、その文書表現が"まるでライトノベルみたい!"とあらためて紹介されていたのを見て逆に興味をもったのだけど。実際に読んでみるとモンテ・クリスト伯をベースに超能力や怪物といったSF的ギミックをこれでもかと詰め込んでいて、これは当時の大量生産大量消費アメリカの空気感なのか?と思わせられる内容だった。
ただ、そういった複雑で本来ならまとまらない内容を、ただひたすら単純に【動いて突っ込んでいく】主人公を中心に置く事で、テンポよく最後まで話が進み、最後にはなんとなくキレイにまとまって終わった印象を残すのは流石だな。と。
そして、この作品に登場する設定が仮面ライダーやサイボーグ009に活かされたのを知り、ちょっと"なるほど。。"と、ビックリしました。
オススメ。
ただ、そういった複雑で本来ならまとまらない内容を、ただひたすら単純に【動いて突っ込んでいく】主人公を中心に置く事で、テンポよく最後まで話が進み、最後にはなんとなくキレイにまとまって終わった印象を残すのは流石だな。と。
そして、この作品に登場する設定が仮面ライダーやサイボーグ009に活かされたのを知り、ちょっと"なるほど。。"と、ビックリしました。
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