未知宇宙に漂着した状況下で好機を待ち極寒惑星に侵攻する昆虫種族を倒すべく奮闘するテラナーの活躍を描く大長編ＳＦスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第343巻。本巻の執筆者は、有望な新人フランシスと貫禄の重鎮フォルツです。極寒惑星スティモンドに住むフェベエル人生物学者ライツォトは自身が開発した特殊車輌セムラーの部隊を率い謎に満ちた峡谷を目指して極地探検へと旅立つ。前巻でロワ・ダントンの組と別れ第四惑星の偵察任務についたミュータントのラス・ツバイとフェルマー・ロイドの胸のすく活躍が始まります。
『惑星スティモンドの危機』H.G.フランシス著：ライツォトはようやく峡谷に到達するが、そこで待ち受けていた未知の敵から猛攻撃を受け部隊員が全滅の危機に立たされる。本編では初めてプローンと名付けられた巨大アリの昆虫種族とミュータントの２人がテレパス（読心術）とテレポート（瞬間移動）を駆使して戦う場面が圧巻の読み所です。他にも宇宙種族の善意を信じようとせず協調を拒む頑迷な政府の姿が描かれ、理不尽で悲劇的な人間ドラマに哀感を感じます。『鋼球帝国』ウィリアム・フォルツ著：恒星転送機ゲルックスヴィラの制御ステーション惑星でレムール人女性の起こした混乱の為に、テラナーの科学者四人がレムール艦と共に転送されてしまう。四人は遥かな過去にレムール艦隊２万２千隻が転送され漂着した残骸が転がる場所で実体化する。本編では慎重なリーダーのメルヴァン、怒り易く乱暴なアバルテス、精神的に弱いグレイムーンとアムンの四人が極限状況下で苦闘する緊迫の人間ドラマが秀逸です。
本巻の翻訳者、嶋田洋一氏のあとがきは２００７年に日本（横浜）で始めて開催された第６５回世界ＳＦ大会の楽しい思い出を紹介されています。最近はローダンの出番が少なく本書でも僅か６頁だけですが、脇役陣のみで十分に満足させてくれる筆力は流石と感服致しました。
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